るった

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11/13/2023, 10:21:45 AM

【 また会いましょう 】

初めて会ったのは、夢の中だったかな。
小さい頃だし、記憶も定かじゃないんだけど。
黒い服がよく似合う、今で言うイケメンな人。
子供心に初恋だったなぁなんて、そう思えるくらい。

あれから成長して、その人のことは忘れた頃、
また会えたの。
顔だって覚えてたわけじゃないのに、
確かにあの時の彼だって断言できる何かを感じたんだ。

それが何なのか、今ならはっきり分かる。
わたし、彼に連れて行かれるんだね…。

そういえば、約束してた気がする。
夢の中で彼が、『また来るよ』って。
守ってくれたんだ。

じゃあ、わたしも応えなきゃね。
来てくれて、ありがとう。

11/12/2023, 1:51:42 AM

【 飛べない翼 】

片羽で生まれた僕は、親に捨てられた。
生きるだけで精一杯の役立たずの居場所なんて、
ここにあるはずもなかった。

戻れないと分かりきっているのに外界へ修行に出され、
簡単には死なない体で、身を隠すべく森を彷徨う。
ふと、足元で動くものが見えた。

片羽が小さい…?

巣に戻れず、成長しても先は見えてる。
哀れに思う気持ちはあるけど、僕にできることはない。
でも、このまま消えるのならば、せめて…。

「僕と一緒に来るかい?」

空を制するはずの力を与えられたのに、活かせない僕ら。
似た者同士、きっと寄り添えるよね。

11/10/2023, 2:41:22 PM

【 ススキ 】

幽霊の 正体見たり 枯尾花。
要するに、ビビリを指す言葉だと、俺は本気で思ってた。
あの日、彼に会うまでは。

近所に背の高いススキの群生があって、
昼間は子どもたちがよくかくれんぼして遊んでる。
だが夜になると、背の高さが禍して不気味な気配を醸す。

だから夜に通りたくはないんだが、
先輩との飲み会の帰りはやむを得なかった。
ススキの群生前を足早に過ぎようとすると、突然白いものが視界に入り、あ、と思う間もなくぶつかった。
と、思ったが、想定した衝撃は訪れなかった。
代わりに、脳内で誰かの人生が高速で再生されていく。

決して結ばれてはいけない相手との、苦しい恋。
思いが昇華されぬ内に病に蝕まれ、相手にも見放され。
失意の淵に立ち、飛び降りた。

これはきっと、白いもの…幽霊の記憶だ。
我に返った時には、止めどなく涙が溢れていた。
もう俺の中に、彼はいなかった。

きっと、ここのススキの正体は本当に幽霊なんだと、
俺だけが知る枯尾花だ。

11/9/2023, 12:17:11 PM

【 脳裏 】

忘れたくても忘れられないもの。
僕は、自分の記憶力が恨めしい。

川の字で寝ていた幼い頃、トイレに行こうと親を起こそうとして、いわゆる『プロレス』を見るはめになった。

小学生の頃は、マグロの解体ショーを見に行った。
ブロックにされていく様は、すごさよりも恐怖しかない。

高校の時には、自転車の通学路で農道を利用していて、
カエルの轢死体をいくつ見たことやら。

極め付きは、空飛ぶ人間。
車に弾き飛ばされて宙を舞い、地面までキレイな放物線を描いて、鈍い音で締めるまでがスローモーション。

もう、外には出られなくなったよ。

11/8/2023, 3:53:54 AM

【 あなたとわたし 】

死を司るものとして、この世に生まれた者同士。
一人は天上の世界へ誘い、一人は責め苦の世界へ連れる。

互いを知ってはいるものの、会うのは稀だ。
顔を合わせたところで、仕事ぶりをちらりと見るだけ。
が、たまたま目が合った。

「意外と丁寧な仕事するんだね」
「少しでも楽にしてあげようと思って」

どちらの行き先なのかは決まっているが、
死者には分からない。
どちらであっても、案内人としては安堵を与えたいものだ。
お互い、示し合わせたわけではないが、似た思考なのだと初めて知った。

また会ってみたいな。

名前も知らない、他種族の相手。
それでもきっと、気が合うはずだ。
まるで、鏡合わせのような君だから。

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