【 懐かしく思うこと 】
某漫画にあった近未来が、現実になった時代。
人は機械の体を持てるようになっていた。
生命の誕生すら、もはや装置で行われている。
文献では『海』という大量の水が眼前に広がる光景に、
機械の体がむず痒く感じた。
機械なのに、と言いたいところだが、
人であることの証明のため、感覚は残されている。
だからなのか?
ただ貯まって波打っているだけの海なのに、
なぜかむず痒く…いや、心がざわつくのは。
海とやらの知識も何も無いのに、
一体どこから湧き上がるのか。
きっと、『私』というヒトの遺伝子に組み込まれた、
人間の記憶なのだろう。
そう納得できたら、不思議とざわつきが収まった。
こうして、受け継がれるものなのかもしれないな。
【 もう一つの物語 】
今でこそ表に出て過ごせているが、
以前は独り、暗闇に漂っていた。
声は聞こえても話しかけることはできないし、
光など無く何も見ることができない。
ただ、記憶はあった。
家族という名の支配者に囲まれて、
躾という名の暴力を受ける。
それらは私の記憶だが、経験ではなかった。
あまりにも痛ましい体験は、もう一人のワタシのものだ。
表立って全てを受け止め、私を守ってくれた唯一の存在。
家族を失って初めて、私は外に出た。
ワタシは代わりに閉じこもった。
殺人者の汚名を被らぬよう、配慮してくれた結果だ。
ありがとう。
私はワタシの人生を続けるよ。
【 紅茶の香り 】
温かいお茶の香りは、思い出の鍵だ。
小学生の頃、一番仲良しのあの子の家にお呼ばれして、
初めて飲んだ。
苦いな、という印象だったが、砂糖を入れ忘れただけだ。
中学生になると、好きな子とペットボトルを買った。
ミルクティーは、とても甘かった。
高校では皆してレモンティーを。
大人気分を味わったものだ。
オシャレなフレーバーティーを楽しめる歳になって、
当時の仲間たちと語り合う。
思い出のお供に、一杯の紅茶はいかが?
【 愛言葉 】
人は皆、本音と建前、表と裏を持っている。
正直、面倒くさいものだ。
自分で自分を偽り、聞こえの良い事ばかり述べて。
上下や異性の関係では、よくある話だ。
そんな中で出会った君は、疑いたくなるほど素直な人だ。
どこを突いても虚飾など無く、良い人柄が伝わってくる。
だからこそ、幸せになるには欠かせない人なのだ。
これからは、娘を頼んだよ。
「結婚、おめでとう」
【 友達 】
今、隣りにいるのは誰だ?
周囲を心配する人? 保身が大事な人?
そもそも他人に関心を持たない人?
言葉を交わすから、思いは伝わる。
言葉を交わしても、すれ違う。
なら、言葉を交わさなければ…?
静かに心の声を受け止めて、黙って寄り添ってくれる。
そんな君こそが、一番の理解者だと思う。
物言わぬ、ぬいぐるみ。
どんな時も一緒。大好きだよ。