【 行かないで 】
こんなにも愛しく、慈しんでいるのに、
出て行ってしまうなんて薄情じゃないか。
やはり、アナタに私の気持ちは伝わらないのだ。
大事に大事に、人目に触れないように守って。
でも、たまには陽の光を浴びたいだろうと、
外に出してあげて。
アナタを信じているからこその行為だったのに。
そのまま、振り返ることもなく、手を放れた。
追いかけようにも、追いつけるものでもなくて。
突然すぎるサヨナラは、一瞬だった。
今までありがとう、さようなら。
そして、新しい諭吉さん、いらっしゃいませ。
【 どこまでも続く青い空 】
雲一つなく、澄みきった空。
誰の上にも等しく存在して、誰の影響も受けない。
地上で何が起きたところで、きっと何も変わらない。
自然が汚染されても、争いが激化しても。
空は何も変わらず、包みこんでくれるだけ。
だから、見上げてごらん?
誰が見ても、何も違わないよ。
明るくても暗くても、何も。
きっと、自分の小ささに気づくだけ。
【 衣替え 】
着替えるのって、ステキじゃない?
気分も見た目も変わって、別人になったような感じで!
もちろん、季節感とかも大事なこと。
でも、自分が纏いたいものを選ぶのは一番重要よ?
誰に何を言われようとも、自分らしくいられるもので、
自身を飾らなきゃね。
一生に一度、一回きりしか着れないと分かってるから、
なおさら憧れちゃうの。
ワタシ、今日は天ぷらになります。
明日はフライだったらいいな。
【 声が枯れるまで 】
もう、限界だよ。
いつからだったか覚えてないくらい、長い時間が経った。
ずっと、ずーっと、叫び続けてるのに。
誰一人、振り向いてはくれない。
聞こえないほど音量が小さいのか?
雑音にかき消されてるのか?
大事なことだ、心配になる、我慢しないで、なんて、
みんなが優しく教えてくれるのに。
届く気配が微塵も感じられない。
透明な耳栓なんて、この世にあるとは思ってなかったよ。
『助けて』の言葉は、そこに溶け込むものなんだね。
【 始まりはいつも 】
いい加減、学習した方が良いのは分かってる。
自分の悪いクセだと自覚してるのだから。
一目惚れして、一筋に向き合って、でも終わりを迎え。
なのに飽きもせず繰り返す。
神様のイタズラという運命を、避けて通れるわけがない。
美しく洗練されたその姿に、心惹かれるのは当然だ。
磨くほどに輝きを増し、自身が花開かせていく感覚が興奮を呼び起こす。
あぁ、また見つけてしまったよ。
これでいくつめかな?
今日からよろしく。愛する食器さん。