光合成

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2/27/2025, 10:58:59 AM

『cute!』


入学式で見かけた黒髪ロングの君。桜の舞う中スカートを翻して駆ける君の姿に一目惚れ。
なんともcute!


クラスのみんなで行った海でポニーテールの君。水着に照れながらもビーチバレーに全力で挑む姿に二度目の一目惚れ。
とってもcute!


紅葉が色づく頃に30cmほど髪を切った君。文化祭で好きだった人に失恋したと目を潤ませる君に3度目の一目惚れ。
べりべりcute!


行事のスキー合宿で髪に天然の雪飾りをつける君。転んでも楽しそうな満面の笑顔に4度目の一目惚れ。
死ぬほどcute!

そして今日
髪を下ろして静かに眠る君。真っ白な百合の花と君の好きだった向日葵に囲まれた君に5度目の一目惚れ。
どうしようもなくcute!

この一年間、死にたいくせに隠して明るく振る舞う君が好きだった。
どんな君でも愛してる。たとえ死体になったとしても愛してる。
可愛い可愛い僕の君。
この先も永遠に愛してる。
死んでる君もスペシャルcute!


2025.02.27
11

2/26/2025, 11:33:59 AM

『記録』

貴女の笑顔
貴女の好きなもの
貴女の踊る姿
貴女の歌う声
貴女からのラブメッセージ
貴女の生き様

全てを記録しましょう。
愛する貴女の全てを。

貴女の泣き顔
貴女の嫌いなもの
貴女の眠る姿
貴女の悲鳴
貴女からのダイイングメッセージ
貴女の死に様

全てを記録させてください。
愛する貴女の全てを。

知りたいのです。あなたの全てを。
身の心もその内側も全てが知りたいのです。


2025.02.26
10

2/25/2025, 2:23:50 PM

『さぁ冒険だ』

またバイトをクビになった。これでついに10回目。
社会不適合者にも程がある。

俺には幼なじみのかわいい女の子がいた。
社不な俺とは大違いで真面目で優秀で、一生懸命頑張ることができる子だった。
高校卒業と共に彼女は難関国立大学、俺はFラン大学へと進路が分かれてからなかなか会うことも無くなった。

バイト先からの電話が切れ、公園でぼーっと空を仰いでいると、誰かが隣に座る気配がした。
見慣れた横顔がそこにあった。
あの頃よりも髪の伸びた彼女は久しぶりと微笑む。
その様子がどこか疲れてそうだった。
しばらくの沈黙の後、彼女は
「私ね、人を殺したの」
と突然言った。
「そうか」
俺はそれ以外の言葉が出てこなかった。
人を、殺した。
こういう時どう反応すれば良いのだろうか。俺が社不じゃなければ何かいい言葉が思いついたのだろうか。
「殺したのはね、兄を殺した犯人の1人。あともう1人いるんだけど見つけられなかった」
五年前の冬、彼女の兄は何者かによって殺された。
そうか、彼女はずっと犯人を追っていたのか。
「探すの?」
「うん、探す。絶対に見つけてこの手で復讐するの」
「そうか、分かった。それなら俺も手伝う」
「え?」
「俺も君の兄には恩があるんだ。だから一緒に犯人を探しに行くよ」
自分でもどうしてこんな発言をしたのか分からない。
それでも彼女を1人にする訳にはいかなかった。
「ありがとう」
今日初めて見る彼女の本当の笑顔だった。惚れた方の負けとはこのことである。
でもこれで覚悟は決まった。
さぁ、冒険だ。
世界から見捨てられた2人の冒険だ。


2025.02.25
9

2/24/2025, 11:08:50 AM

『一輪の花』

ちょっとした事だった。
進路のことで親と喧嘩して苛立ってて、
返却された模試の結果が良くなくて、
顔色の悪い僕に大丈夫?って顔を覗き込む君をなんでもないって押し退けた。
情けない自分を君に知られたくなかった。
その時の、傷ついたような表情を隠すように笑う君の顔が頭から離れない。

21時、家の固定電話が鳴る。お母さんが対応するがどこか様子が変だ。
青ざめた顔で僕に電話を代わる。
「あのね、………」

冷や汗が止まらない。電話もきらずに教えてもらった場所に走り出す。
20分走り続けて着いたのは大学病院だった。
看護師さんの制止を振り切って彼女の苗字を探す。
ドアの前には彼女の母がいた。僕にドアを開けてはいるように促してくれる。
看護師さんの声はもう聞こえない。

真っ白なベッドに横たわるのは、死んだように肌の白い彼女だった。そう、死んだように。
血の気のない頬を撫でる。
「眠っているみたいでしょう?」
いつの間にか彼女の母が隣にいた。
「信号無視の車に轢かれたの。小さな子供を庇って」
返事ができなかった。このまま目が覚めないなんて信じられないくらい、彼女は綺麗な顔をしていた。

ふと、隣の机に置いてある花瓶に目が止まる。
「この花は?」
「花?あぁ、これね。あの子がずっと握ってたの。車に轢かれても絶対に離さなかったのよ。」
青い小さな花弁の華奢な花。
僕の好きな花。
昔、君に似合うって送った花。
僕らの大切な思い出の花。

あぁ、そうか。今日は僕の誕生日だった。

君の笑顔を思い出す。
キュッと細まる目に、両頬にできる小さなえくぼ。
眉を下げてふわりと花のように笑う君。
もう一度だけ、もう一度だけでいいから君の笑顔が見たかった。
一輪の花が風にふわりと揺れる。


2025.02.24
8

2/23/2025, 11:03:40 AM

『魔法』

朝が来るのが怖かった。
学校に行くのが嫌だった。
大切なものは捨てられ、教科書は破られ、机や椅子に落書きをされる。
辛かった。
消えたかった。
誰も助けてくれなかった。

明日からまた学校が始まる。
今度こそ死ぬんだ。今度こそ線路に飛び込むんだ。
そう決めていたの。

なのにさ、なんだよ今更。
どうして君が泣くの?
君は関係ないじゃん。
クラス替えで別になってそれきりじゃん。
私が虐められ始めたの、君が居なくなって一人ぼっちになってからなんだよ?
何も知らないくせに、今偶然ここで会っただけなのに、「大丈夫」なんて軽々しく言わないで。

君は私の頬の傷を撫で、大粒の水を溢れさせながら私を抱きしめた。
「大丈夫、もう大丈夫。私がそばにいるから。
もう二度と一人になんかさせないから」

そんな綺麗事は大嫌いなのに。うざったくてヒーローぶっててムカつくのに。
魔法みたいにそっと胸が熱くなって、少しだけ軽くなった。
だんだんと苦しさが溢れてきて、嗚咽が漏れる。
「私が貴方を守るよ」
確証もないのにそんなこと言って、でもなぜか君なら信じられる気がした。
明日も生きようと思えた。
君の言葉が私に魔法をかけたんだ。


2025.02.23
7

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