光合成

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『さぁ冒険だ』

またバイトをクビになった。これでついに10回目。
社会不適合者にも程がある。

俺には幼なじみのかわいい女の子がいた。
社不な俺とは大違いで真面目で優秀で、一生懸命頑張ることができる子だった。
高校卒業と共に彼女は難関国立大学、俺はFラン大学へと進路が分かれてからなかなか会うことも無くなった。

バイト先からの電話が切れ、公園でぼーっと空を仰いでいると、誰かが隣に座る気配がした。
見慣れた横顔がそこにあった。
あの頃よりも髪の伸びた彼女は久しぶりと微笑む。
その様子がどこか疲れてそうだった。
しばらくの沈黙の後、彼女は
「私ね、人を殺したの」
と突然言った。
「そうか」
俺はそれ以外の言葉が出てこなかった。
人を、殺した。
こういう時どう反応すれば良いのだろうか。俺が社不じゃなければ何かいい言葉が思いついたのだろうか。
「殺したのはね、兄を殺した犯人の1人。あともう1人いるんだけど見つけられなかった」
五年前の冬、彼女の兄は何者かによって殺された。
そうか、彼女はずっと犯人を追っていたのか。
「探すの?」
「うん、探す。絶対に見つけてこの手で復讐するの」
「そうか、分かった。それなら俺も手伝う」
「え?」
「俺も君の兄には恩があるんだ。だから一緒に犯人を探しに行くよ」
自分でもどうしてこんな発言をしたのか分からない。
それでも彼女を1人にする訳にはいかなかった。
「ありがとう」
今日初めて見る彼女の本当の笑顔だった。惚れた方の負けとはこのことである。
でもこれで覚悟は決まった。
さぁ、冒険だ。
世界から見捨てられた2人の冒険だ。


2025.02.25
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2/25/2025, 2:23:50 PM