光合成

Open App

『魔法』

朝が来るのが怖かった。
学校に行くのが嫌だった。
大切なものは捨てられ、教科書は破られ、机や椅子に落書きをされる。
辛かった。
消えたかった。
誰も助けてくれなかった。

明日からまた学校が始まる。
今度こそ死ぬんだ。今度こそ線路に飛び込むんだ。
そう決めていたの。

なのにさ、なんだよ今更。
どうして君が泣くの?
君は関係ないじゃん。
クラス替えで別になってそれきりじゃん。
私が虐められ始めたの、君が居なくなって一人ぼっちになってからなんだよ?
何も知らないくせに、今偶然ここで会っただけなのに、「大丈夫」なんて軽々しく言わないで。

君は私の頬の傷を撫で、大粒の水を溢れさせながら私を抱きしめた。
「大丈夫、もう大丈夫。私がそばにいるから。
もう二度と一人になんかさせないから」

そんな綺麗事は大嫌いなのに。うざったくてヒーローぶっててムカつくのに。
魔法みたいにそっと胸が熱くなって、少しだけ軽くなった。
だんだんと苦しさが溢れてきて、嗚咽が漏れる。
「私が貴方を守るよ」
確証もないのにそんなこと言って、でもなぜか君なら信じられる気がした。
明日も生きようと思えた。
君の言葉が私に魔法をかけたんだ。


2025.02.23
7

2/23/2025, 11:03:40 AM