「またね」
なんて言わないで。明日を期待してしまうから。
ー 突然の別れ ー
「お姫様になりたかった。」
君は突然そう呟く。
別にキラキラしたドレスが来たいとか、美味しい料理がたくさん食べたいとか、そういうんじゃないんだけどね、と後に付け足されたその言葉を理解するのにほんの少し時間を要した。
なんで?そう一言僕は問いかける。君の言葉に肯定も、否定も相応しくないと感じたから。
「ハッピーエンドを約束して欲しいの。」
たとえ意地悪な人達が周りにいても、たとえ誰かに恨まれて、心無いことを言われても。
たとえ、王子様の相手が、自分じゃなくても。
最終的には主人公とそのパートナーが笑って幕を閉じる。そんな"お決まり"がどうしようもなく羨ましいんだ、と。
「なら、僕が約束する。」
綺麗なドレスは着させてあげられないけど、フルコースは出してあげられないけど。
君となら、どんなによれた部屋着だって、ご飯とお味噌汁だって。幸せの1ページになるんだから。
ほら、小指を出して。子供騙しの約束で、今日も綴っていこう。
これは君と僕のありふれた
ー 恋物語 ー
ふと目が覚めるともう既に辺りは真っ暗。
ポツポツと見える灯りはきっと必死で今日を生きてる人なんだって、前に君が言ってた言葉を思い出した。
あぁ、この暗闇に溶けて消えてしまう前に、君に会いたい。私を照らしてくれる君に。
ー 真夜中 ー
例え明日世界が終わるとして、僕は君のために何が出来るだろう。
ずっと行きたがっていた世界一周旅行には連れて行けないし、この前テレビに映っていた美味しそうなパンケーキ、あそこは予約が1ヶ月も埋まっているから無理でしょ?欲しいって言ってた君に似合いそうな綺麗なワンピース、生憎今は給料日前でお金が無いんだ。
僕が魔法使いか何かで、今すぐに滅亡までのカウントダウンを止められたら、君を連れてどこか遠い星へ行けたら、なんて事を考えるけど。君はきっとそんな僕だったら好きになってくれてないよな、なんて。
僕にできること。
おはようから始まって最後のおやすみまで、君のことを考えて、沢山笑わせて、これで最後だなんて、寂しいねって泣いて。喧嘩だってし足りないし、その分の大好きも聞いてない。
だから、また来世も一緒にいようね、なんて叶うかもわからない約束で心を繋ぎ止めて。今日を終えるとしたよ。
ー 愛があれば何でもできる? ー
あの日は何十年かに1番の猛暑で、私も君も暑さにやられてたんだと思う。
「好きなんだよね、君のこと。」
私の口からポロッと零れた言葉。拾われることのなかったそれは、蝉の声に掻き消されてしまった。
そこから1度も言葉を交わすことはなく、君は遠いどこかへ行ってしまった。
これは、あの夏に取り残されてしまった私の話。
ー 後悔 ー