9/28/2023, 12:51:15 PM
別れ際に
「じゃあね、」
その声はなんの未練もなさそうに響いて、トドメを刺すようにヒールの足音が私を追い越した。
「あ…。」
「…なに?」
「いや…。」
何か言いたかった。言いたくて、声を発した。振り返りもしないで返事をした彼女の香りが遅れて漂って、サンダルウッドの香りが鼻をくすぐる。
何も言えなかった。彼女の足音は清々しそうに去っていった。
そうだ。いつだって、彼女の方が大人びていたんだった。
サンダルウッドの香水の印象だけが、なんだか苦く残った。
9/28/2023, 4:46:27 AM
通り雨
「うわ、雨!あ〜あ〜…朝は降りませんよみたいな空してたから外に干したのに…。」
怜が突然の雨音で慌ててバルコニーに出て、ぶつぶつ言いながら干したタオルや服を取り込む。
俺はまったりと立ち上がって、窓の側で怜から半乾きのそれらを受け取った。
雨で一際冷えた空気が窓から吹き込み、自然と深く息を吸い込む。
「…でもいい匂いだ。」
「そうだけど…乾いてから降ってくれたらなぁ。」
「俺が干し直すから、ほら深呼吸。」
「…、うん、確かにいい匂い。」
「ね!」
9/21/2023, 1:13:50 PM
嵐が秋を連れてくる
君は何故か嵐や夕立に好かれやすくて
強まる雨と一緒にばたばた足音を立てて帰ってくる
「はぁ〜ただいま!もう雨が冷たい!秋だな〜!」
髪は根元までずぶ濡れな癖に、雨の庭ではしゃいだ犬みたいに笑ってる
玄関でタオルを被せられて笑う君に、いつも新鮮に恋をしている気がする
9/5/2023, 2:46:23 AM
きらめき
夏の海のきらめき
冬の雪のきらめき
春の花々のきらめき
秋の紅葉のきらめき
どの景色を思い出しても、隣に君がいる
この先もそうであれば良いと、きらめく景色を見る度に思う
9/4/2023, 2:58:29 AM
些細なことでも
君が些細なことで笑う顔が好きだ
時々、俺が別に面白く言ったわけでもないことにも笑う
そうやって目尻をくしゃっと緩めて笑うのが好きだ