君を迎えに行く、そう約束したのに、一向に姿を確認出来ない。
どうにも彼女の言葉が引っかかる。
私を探さないでと、
僕は本当ならこんな場所にふさわしくないのかもしれない。そして君にも、
でもどうしても諦めることが出来なくて、つい姿を追ってしまう。
見つけた!
姿は遠いが間違いなく君だ。
そして、どうやら彼女も僕に気づいたようだ。
僕は、駆け出す。
しかし君は踊るようにその場から抜け出し、僕の方を見ようとはしない。
鐘が鳴る、ついに彼女は見えなくなった。
時を告げる鐘がなる。
何処かのお姫様にでもなった気がした。
さようなら、そう言い駆け出す。
これ以上は、もう会えない。
きっと貴方を困らせてしまうから、
ごめんね、
そう言い溢れ出す涙を飲みこみ姿を消した。
言葉はいらない、、、。
ただ、、さ、君に笑っていて欲しいだけなんだよ。
ボロボロになってあなたの方が辛いはずなのに、
まるで何も無かったかのように振舞って。
不器用な笑顔で私を心配させまいとして
大丈夫だった?貴方は私にそう聞いた。
「無事よ、馬鹿、、本当に、、、良かった、、」
溢れだしてくる涙で貴方のことが見えなくなってしまって袖で涙を拭ってもまた見えなくなって。
それがまた悔しくて、、、。
「貴方って、、大事なこと私に言ってくれないよねでも、でもね、わかるの言葉がなくても会えなくても、貴方はきっと私の事思ってくれてるって。」
僕が僕であるために必要なことって何なのだろう。
鏡に映った自分を見てふと考える。
全く同じ容姿、だけど中身が違ったら。
それは本当に僕と言えるのだろうか、
自分の非力を感じる度に、無力だと思う度に、
僕は僕に問いかける。
僕が僕である理由ってなんだろう。
ダメな娘だ、なぜそんなこともできないんだ、当たり前だ。父からそんな事ばかり言われた。
褒められるなど無縁に育った。完璧を求められ続けた。第三者には、成功したら誇りだと言われ、失敗すると愚女と蔑まれる。
私って一体何なのだろう。そう考えずにはいられなかった。
誇りってなんなのかな、貴方と会っている時思いがけず口からこぼれた。
慌てて取り消そうとしたけど、貴方の方が先に口を開いた。
「誇りか、、、。考えたこと無かったけど、僕にとっては両親と君かな」
贅沢な暮らしはできないけど両親は僕をここまで育ててくれた。愛情を持って接してくれた。そして君は、僕が辛い時、悲しい時傍にいてくれた。時には僕のために怒ってくれたり、泣いたりしてくれた。僕はそんな人達を誇りに思うよ。
そしていつも感謝してる。
傍にいてくれてありがとう。
目頭が熱くなった。
怒られてばかり、蔑まれてばかりいた。だからいっそ私なんていなければって思った。
けれど貴方はこんな私を誇りなんて言ってくれるのね。
「私も貴方が誇りよ。何よりも。そして貴方の誇りであり続けるために頑張るわ」
今までの不安を隠すように、貴方への感謝が伝わるように私は精一杯の笑顔を向けた。