「雲は白、空は青、風は、、何色だろう」
素晴らしい!次回作も期待してますよ。
笑っているけど腹の底では何を考えているのか分からない。そんな大人が嫌いだ。
どーせお前らは、私の絵じゃなくて金が好きなんだろ。そう言ってやりたくなる。
「あー!!!つまんない!!」
なんで雲は白いのか、空は青いのか。
そんなの当たり前だろって、きっと大人は言う。
きっと大人は変化を嫌うんだ。
見たまんまを描きたがる。
それをいかに上手く描くか。そればかり。
私はね、空を黒く書きたいの、雲はオレンジに書きたいの。それが私の見えている景色なの。
理解されたいと思ってた。
でも、それで私らしさを失ってしまうなら、
そんなものいらない!!
私はキャンパスを破り捨てた。
苦しく感じていた胸のつっかえもいつの間にかなくなっていた。
「よし!描こう!!私の描きたいものを」
そう言って筆を取った。
夏になると何かの気配を感じる。
誰かに見られている。そんな感覚が、、、。
視界の端に何かが写った気がして振り向く。
「、、、隠れてないで出ておいで」
頭隠して尻隠さずとはまさにこのことを言うのだろう。
ネズミのような犬のような白い何かは、声をかけると鳴き声をあげて小さく跳ね。
短い手足を必死にバタつかせ、ベッドに潜り込んだ。
(驚かせてしまったみたいだな。特に危害を加えないのならいてくれても構わないけど、、、)
そのなにかを見つめていると、手前の机に置いてある。羊羹が目に入る。
「そう言えば期限近かったな、、、」
羊羹のラベルを見ながらそうつぶやく。
珍しい羊羹を手に入れたからと祖母が僕にくれたものだ。無駄する訳にはいかない。
「、、、頂くか」
包装を慎重に外すと、光沢のある羊羹が姿を現す。
あまりに美味しそうで思わず唾をごくりと飲むと。
僕はゆっくりと羊羹日手を伸ばした。
「グギュルルル」
未だかつて無いほど大きなお腹の音が鳴り響く。
音のなる方に目を向けると、何かが羊羹を眺めながらヨダレを垂らしていた。
その何かは、僕の視線に気づき咄嗟に逃げようとするが、目の前にあるご馳走には叶わなずしり込みをしている。
その時たまたま、つけっぱなしにしていたテレビに
ポーズをとる犬とその犬にご褒美として、お菓子をあげる飼い主の様子が映った。
賢い犬がいたものだと感心して見ていたら。
直後その何かもテレビに映る犬と同じようにポーズをとり始めた。
「ふふっ、そっか、真似をすれば羊羹が貰えると思ってやってくれたのか。それじゃお礼をしないとね」
そう言ってその何かの前に羊羹を差し出すと。
ちっちゃい手いっぱいに羊羹を持って必死に頬張った。
「、、、え?くれるの?」
ちょっとだけよといいたげに、その何かは僕にひとけらの羊羹を差し出してきた。
さっきはあんなに僕を警戒していたくせに、羊羹ひとつでこんなに距離が縮むとは現金なヤツだ。
僕が差し出された羊羹をありがとうと言い受け取ると、それは嬉しそうにニコニコと笑った。
「私を忘れるのよ、フィン」
そう残してお嬢様はこの世を去った。
生まれ変わるなら何になりたい?
お嬢様はよくその質問を俺に投げかけた。
「俺、、、ですかね」
そう言うとお嬢様は決まって顔をくちゃっとして可愛らしい笑みを浮かべた。
たかが雇われの騎士が王女に恋してしまうなどあってはならない。
だから身分違いの思いは胸にしまうと決めた。
ただお嬢様の幸せだけを願った。
「王女の結婚が決まった。」
その知らせはあまりにも唐突だった。
他国との戦争を終わらせるためお嬢様は利用されたのだ。
お嬢様は皆の前で、それが私の務めだからと強がり笑ったが。
裏で一人泣いている姿を俺は知っている。
せめて俺も他国へ、お嬢様の剣と盾になりたいと願ったが。
戦争に荒れた母国のため、この国に尽くせと王から命を受けた。
俺の結婚を反対する声はかき消され、ついにその日は訪れた。
「私を忘れてね、フィン。、、、愛していたわ」
最後に告げられたのは。最も残酷で優しい言葉だった。
他国に行ったお嬢様は、戦争で家族を失った下民にあっさりと殺されてしまった。
それを知らされたのは、十月が経つ頃だった。
「ねぇ、フィン、生まれ変わるとしたら貴方は何になりたい?」
「俺は、、、、お嬢様のそばでお嬢様の幸せを願い続けたいです。お嬢様は?」
「私はね、、、私の幸せを願ってくれる大切な人のお嫁さんかな」
「誰ですか??」
「ふふっ、今は分からなくていいわよ」
懐かしい、あの頃の記憶。
「忘れろだなんて、、、無理でしたね。寂しくないですか?辛くないですか?、、、幸せでしたか?」
「フィンさん!!!」
「俺も今行きますよ、、、」
お嬢様が居なくなってから、1年後フィンは他国の戦争に駆り出され、その屈強な肉体と精神で敵国を圧倒し
英雄となった。
しかし、英雄を慕う民からの声があまりにも大きく、王政に不満を持つものが現れた。王はその言葉を止めるべく、あろうことか、母国のため戦った英雄の命を奪った。
勉強も運動も何もかも俺はできないわけじゃない。
むしろ全て秀でてると言っても過言ではないだろう。
なのに、いつもいつも褒められるのは兄貴ばかり。
俺が我武者羅に走る横を笑って抜き去って手の届かない所へ行きやがる。
俺は兄貴の背中を追うばかりで一向に抜かせない。
「いいよね、〇〇くんのお兄ちゃんは優秀で、私もそんなお兄ちゃんが欲しかった」
ある日、憧れの先輩からそんなことを言われた。
先輩は自分の理解者だと思っていたものだから。
裏切られたような気がした。
兄貴の話なんてして欲しくなかった。
、、、惨めになるから。
「兄ができることをどうして〇〇はできないの?
努力しなさい」
繰り返し言われるその言葉。
なぜ俺が努力をしていないと言い切るのか、どうして兄貴を引き合いに出すのか、俺は兄貴とは違う人間なのに。
別に褒めて欲しいわけじゃない。
でも優秀な兄の影に隠れる俺でありたくないだけだ。
なのにみんな、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴の事ばかり。
まるで俺が俺で無くなるような感覚に陥る。
俺が兄貴のようになったら皆はきっと満足するんだろう。
兄に向けてる薄ら寒い笑みを俺に向けてくれるんだろう。
両親も優秀な息子の親と言う肩書きを手に入れてさぞ喜ぶことだろう。
「あー!くだらねー!!」
「随分やさぐれてるのね。〇〇くん。」
「、、、」
「またお兄さんのことで悩んでいるの?
それとも私の姉が言ったことを気にしているのかしら」
「、、、聞いてたのか」
ええ、たまたま。
そう言って彼女は笑う。
「まぁ、気持ちは分からなくもないわ。私も優秀な姉を持っているもの。
、、、でも、私は皆に認められたいわけじゃない。
私を大切にしてくれる人の尊敬できる人でありたいと願うだけ。」
そう言うとあいつは前を向いた
「、、、大切にしてくれる人の尊敬できる人でありたい。か、そっか、ははっ!」
俺のことを見ようとしない両親なんて、俺を認めようとしない周りの奴らだって、それを気にする俺ですらもはやどうでもいい。
俺は兄貴になる必要なんてない。兄貴を追う必要だって。
俺は俺を見てくれて、俺のことを思ってくれる奴らに恥じぬ。そんな生き方ができればそれでいい。
「吹っ切れたみたいね。」
「、、、ありがとよ」
「どういたしまして」
あいつは俺の心を見透かすように目を細めると。
くるりと背を向けた。
「、、、それを気づかせてくれたのは貴方だけどね」
「ん?なんか言ったか?」
「いいえ、何も」
夕日が俺たちを照らす。
この時はほかの誰でもなく、確かに俺たちが主人公だった。
新生活を迎えるために、この街を出ることになった。
「早いとこ荷物をまとめなきゃ、これは捨てて、これは持ってって、、、、なにあれ?宝物ボックス?」
余程大事にしてあったのだろう。
それは普段目につかない場所にあった。
「懐かしいなー、」
ボックスを手に取りそっと蓋を開ける。
中には幼少期の頃大事にしていたおもちゃと1枚の便箋が入っていた。
手紙を開くと、拙いひらがなで“ぼくとけっこんしてください”と言う1文。
子供らしいなと思いながら。クスッと笑った。
どうやらこのことだったらしい。
「おーい、準備できたか?」
下から、荷運びを手伝ってくれている幼なじみの声が聞こえた。
私は懐かしい便箋を握りしめ幼なじみの元へ駆けていく。
「プロポーズは2回目だってこのことだったのね」
私がそう言うと、驚いた顔をしながら
「、、、やっと思い出したか」
と彼は笑った。