なびく黒髪も、白い肌も、大きな瞳も
悔しいくらいに眩しくて、嫌いだ。
「ただいまー、、、帰ってたんだね」
居間に入ると、出迎えてくれたのは両親ではなく、
大学に通うため家を出た兄貴の姿があった。
「おう!久しぶりだな、外暑かっただろ?お茶でも飲むか?あー、急に俺がいてびっくりしたよな、夏休み前だけど、単位の都合で休みが続いててな。
久しぶりにお前たちの顔を見たいなって思って」
兄貴は捲し立てるように一通り話すと僕に席を勧め、お茶を用意してくれる。
相変わらずうるさいヤツだと思ったが、気の良い兄貴をなんやかんや邪険にできなくて。いつも押し負けてしまう。
「そうなんだ、俺はもう夏休み入るよ。
、、とは言っても勉強三昧で遊ぶ暇などほとんど無いけどね」
高校三年生になった今、人生の分岐点にいる。
どこの大学へ入るかによって自分の人生が変わると言っても過言ではない。
勉学を疎かにしていたつもりは無いが、この長期休みをどれだけ効率良く使えるかが重要になると思う。
「、、、行きたいところは決まってるのか?」
兄貴が遠慮がちに聞いてくる。
一足先に受験を終えた兄もきっとこの苦労を知っているからだろう。
「一応いくつか目星はつけてるけど、、」
兄は続く言葉を待っているようだった。
でも、続きを口にするつもりはなかった。
いや、できないと言った方がいいのか、
兄貴と同じ大学に通いたいだなんて。
身の丈に合わないなんてそんなの自分だって分かっている。
先生方からも再三忠告された。
でもやはり諦められない。
家庭教師を引き受けて、最後まで教え続けてくれたあの人、、、。
兄貴の彼女の為にも。
8/1/2025, 10:19:08 AM