【お題:やるせない気持ち 20240824】
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(´-ι_-`) 時間取れないので後日up
【お題:海へ 20240823】
「で、次の日曜なんだけど両親が⋯⋯、和音さん、おーい和音さん、聞こえてる?」
「⋯⋯⋯⋯ちょっと待って、今降りてきた」
「りょーかい」
パソコンの前に座り、キーボードを高速で打ち出した彼女から視線を外し、僕はゆっくりとソファから立ち上がった。
こうなった彼女は、キリのいい所まで周りの事に無頓着になる。
さて、今回はどれくらいの時間帰ってこないだろうか。
僕の出張や和音さんの締切と重なって、ひと月ぶりに会えたんだけどな。
仕方がない、掃除に洗濯、それから夕食の準備でもしますか。
和音さんとの出会いは、普通じゃなかった。
その日僕は、高校からの親友の結婚式に出席した帰りで、車を2時間運転し家の近くまで戻ってきた所だった。
家に帰る前に、コンビニで酒とつまみでも買おうかと駐車して店に入った。
缶ビールにローストナッツとレンジで温める砂肝を買い車に戻ると、そこにはあまり見ることの無い景色が広がっていた。
「えっ?」
僕の車のボンネットを机代わりにして、何やらノートに書き込んでいる女性がいる。
通りすがりの人達がジロジロと無遠慮にその人物を見ては、足早に去っていく。
うん、その気持ちは僕にもわかる。
出来れば関わりになりたくない感じ。
少し肌寒くなってきたこの季節に、露出度の高い真っ赤なパーティードレスという出で立ち。
書き込んでいるノートもペンも恐らくは、そこのコンビニで買ったものだと思われる。
「あのぅ」
恐る恐る声を掛けてみるが、反応はなく只管にペンを動かしている。
その後も何度か声をかけたり肩を叩いたりしたのだけれど、一向にこちらに意識を向けることなく一心不乱にノートに書き込んでいる。
僕は諦めて車の中で待つことにした。
運転席に座って女性を正面から見る。
真剣な表情でノートに書き込む姿は鬼気迫るものがあった。
その様子をしばらく眺めて、はたと気がついた。
女性がノーブラであることに。
流石にこのまま見ている訳にはいかないと、視線をずらした所で女性の後ろに酔っ払いが二人ニヤニヤしながら立っていることに気付いた。
僕は慌てて車から降りて、上着を彼女にかけるのと同時に、酔っ払いに睨みをきかせた。
こんな時は194cmという、無駄に大きい体が役に立つ。
酔っ払いがそそくさと居なくなるのを見送って、女性の方を見ると変わらずにノートと向き合っている。
時間にして30分ほどだったろうか、僕は女性のボディガードのように彼女の後ろに立っていた。
「とりあえず、これでいいか⋯⋯」
後ろからそんな呟きが聞こえ、振り返るとそこにはボンネットに突っ伏している女性の姿が。
慌てて声を掛けてみても反応はなく、代わりに規則正しい寝息が聞こえてきた。
しかも⋯⋯。
「うわっ、酒臭っ」
さっきまで気が付かなかったが、なかなかに酔っているようで、その後肩を揺すってみたり、頬を軽く叩いてみたりしたけれど一向に起きる気配はない。
どうしようかと考えているとコンビニの店員が出てきて、長時間の駐車は迷惑なのでどいてくれとか言われ、とりあえず、女性を後部座席に押し込んでノートとペンと小さなバッグを助手席に積んで車を走らせた。
「さて、どうしようか⋯⋯」
自宅マンションの駐車場に車を止め、ルームミラー越しに女性を見る。
幸せそうな寝顔に若干の腹立たしさを感じるも、その整った顔立ちに目を奪われる。
「あ、そうだ」
バッグの中に何かないかと探ってみるが入っていたのは、スマホと家の鍵と化粧品だけで身分証明になるようなものは何もなかった。
最近では様々な場所で電子マネーが使えるため、財布を持ち歩かないとは聞くがこういう時不便だなと思う。
色々なデータがスマホに保存されているのだろうが、それも本人の了承がなければ見ることもできない。
このまま放っておく訳にはいかないし、かと言って警察に行くのも面倒で、とりあえずは部屋に連れて行くことにした。
客室のベッドに女性を寝かせて布団を掛け、一息ついて、シャワーを浴びて自分もベッドに入った。
その日は特に夢は見なかった。
「ほんっ当に、申し訳ありませんでした」
翌朝、リビングの床に正座した女性は土下座の勢いで、額を床にぶつけた。
彼女は作家で昨日は作家仲間とのパーティーの帰りだったらしい。
自覚はなかったが随分と酔っていたらしく、あまり記憶がないとの事。
ただ、ことの成り行きを僕が説明すると、彼女は再度額を床にこすり付け謝り続けた。
聞けばどうも彼女は、創作活動時は周りが見えなくなるタイプで、自分の世界に入り込んでしまうのだとか。
それも突然世界に入り込んでしまうことが多く、その所為で今までも色々と失敗しているのだと嘆いていた。
そんなこんなで、とりあえずその日は車で家まで送って、後日お礼をさせて欲しいとの事で、連絡先を交換した。
あれから2年と5ヶ月。
家も近かった事もあり、何だかんだと食事に行ったり飲みに行ったりするようになって、気が付くと二人でいる事が多くなっていた。
僕は初めの頃から彼女が気になっていて、それが愛に変わるのはあっという間だった。
勇気をだして、想いを伝えてダメだったらこの関係も終わりかな、とか考えていたのに彼女は『えっ?あれ?付き合ってたんじゃないの、私達』とか、言う始末。
一気に力が抜けて、情けなくもその場で泣いてしまった。
2ヶ月前にプロポーズをして、和音さんからOKの返事を貰った。
『姐さん女房かぁ』とか、呟いていたけど、僕はそんなの気にしてない。
それに年上と言っても5年分だけだから、平均寿命で考えたら丁度いいくらいだ。
「よし、掃除終わり。あとは夕食⋯⋯」
ビール以外入っていない、空っぽの冷蔵庫の扉を閉めて車のキーを手に取った。
和音さんの仕事部屋のドア枠をノックして中の様子を伺う。
相変わらず、すごい集中力とタイピングの速さだ。
「和音さん、買い物行ってくるね」
当然の如く返事はなく、聞こえるのはキーボードを打つ音だけ。
僕は伝言用のホワイトボードに『買い物に行ってきます』とメッセージを書いて部屋を出る。
今日も和音さんは想像の海へダイブしている。
この世界の柵を捨ててどこよりも自由な世界へと。
僕は戻ってきた彼女に、とびきり美味しい夕食をご馳走するため、ひとり車を走らせた。
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(´-ι_-`) 『海へ』で一番最初に浮かんだのは『みおくる夏』でした⋯⋯。
【お題:裏返し 20240822】
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(´-ι_-`) 間に合わん⋯。書いたらup
【お題:鳥のように 20240821】
「いち、にぃ、さん、しぃ⋯⋯」
眩しく太陽の光を跳ね返す波間を、白い軌跡を残しながら漁船が通り過ぎていく。
港の見える高台にお誂え向きに置かれている双子石に腰掛けて、香織はスマホの画面に映った四角い枠を数えていた。
足をブラブラと揺らしながら、真剣な目をして数えるそれは、拓也が島に帰ってくるまでの残りの日数だ。
今年の夏は台風の所為で、拓也は帰って来れなかった。
『ごめんね』と、画面の向こうで謝る拓也に、香織は『仕方が無いよ』と笑顔で答えた。
だって台風の所為なのだ、拓也が悪いわけじゃない。
悪いのは、最近テレビでよく言われている異常気象だ、うん、きっとそうだ。
「100日以上あるなぁ⋯⋯」
中学を卒業して、本土の高校へ通うため家を出たのは、もう、10年も前になる。
本土のおばさんの家から3年間高校へ通い、そして東京の大学にも通わせて貰った。
大学卒業後は、東京で就職の予定だった。
両親もそれで構わないと言ってくれていたから。
内定も決まって、3ヶ月後には入社、という時に母が倒れた。
内定はお断りして、母の介護と家の手伝いをすることにした。
「最後に会ったのは、正月だったから⋯⋯ほぼ1年かぁ」
拓也とは、大学で再開した。
3つ年上の近所のお兄ちゃんでしか無かった拓也が、素敵な男の人に見えた。
拓也は院まで進んだので大学の約3年間は、比較的会える状態だった。
どちらかの家でご飯を食べて、レポートを書いて、そんな日々を過ごした。
拓也が就職してからは、平日はなかなか会えなかったが、休みの日は一緒に過ごした。
香織が島へ戻る時、拓也は出来るだけ島へ帰るからと言い、香織の左手の薬指に指輪を嵌めた。
島へ渡る船の中で、香織は嬉しくて泣いた。
「会いたいな」
今は色々と便利で、スマホ1台あれば顔を見て会話することが出来る。
父親や母親の時代にはスマホなどなく、電話も通話料が高いため長くは話せなかったと聞いた。
専ら手紙のやり取りだったと、母親が父親と交わした手紙の束を見せてくれたことがあった。
それを見た時、少しだけ羨ましいと香織は思った。
スマホやLINE、メールなど便利ではあるが電子データで、形としては残らない。
写真もプリントアウトすることは可能だけど、画面でみられるから印刷することは稀だ。
「私も空飛べればなぁ」
渡り鳥の群れがはるか上空を飛んでいく。
大きな翼を広げて、最小限の羽ばたきで。
海も山も家もビルも全てを飛び越えて、自分達の目的の場所まで脇目も振らずに飛んでいく。
あんな風に、鳥のように自分も空を飛べれば、好きな時に拓也の元に行けるのに。
「⋯⋯⋯⋯そっか。そうだよ!」
拓也が帰ってくるのを待つと、あと3ヶ月以上会えない。
ならば、自分が会いに行けばいい。
母親の介護があるから、あまり長い間家を空けられない。
けれど、週末の拓也の休みに合わせた2日くらいならどうにかならないだろうか。
香織は立ち上がると、サッと踵を返し愛車に跨る。
ピンクと白の2色で彩られた、可愛いスクーターだ。
島に帰ってきて直ぐに購入したもので、『ピーチ号』と名前まで付けている。
エンジンを回して、軽い排気音を響かせながら緩やかな下り道を走る。
父親と母親に相談をして、OKが貰えたら拓也に連絡をしよう。
LINEやメールではなく、手紙にしよう。
あぁ、でも予定は早めに把握しておかないといけないから、拓也にそれとなく探りを入れようか。
それから、拓也と会えたら写真をいっぱい撮ろう。
そしてプリントアウトして、部屋にたくさん飾ろう。
もっともっと会いたくなるかも知れないけれど、その分会えた時の喜びも増すだろうから。
「よーし、目標ができた!頑張るぞー!」
真っ直ぐな黒髪をなびかせて、香織は島の道路をスクーターで走る。
目指すは父と母がいる自宅。
島の南の斜面で膨大な量のオリーブの木を育てている、自慢の実家だ。
オリーブの他にもレモンや柑橘類も育てているので、収穫時期は猫の手でも欲しい程だ。
でも再来週末は予定がなかったはずだから。
まだ何も決まっていないし、まだ先の話だけれど香織の胸は高鳴っている。
半年以上ぶりに、拓也と会えるかもしれないその時を思って。
あの渡り鳥の群れはもう既に島から遠く離れ、眼下に海しか見えない場所をひたすらに南下しているだろう。
その先に何があるのか、どんな島、いや陸地を目指しているのか分からないが、香織は彼らに心の中で礼を言う。
拓也に会いに行こうと思わせてくれたのは、他でもない彼らだったから。
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(´-ι_-`) プリントアウト、してこようかな。
【お題:さよならを言う前に 20240820】
「彼女は俺が守ってやらないと駄目なんだ」
恋愛映画のワンシーンのような台詞に笑いたくなった。
彼女は弱いから?守ってあげたくなる?
そんな女が好きだったの?
だったら初めから私と付き合わなければ良かったじゃない。
貴方が守りたいと言っている子と私は、全然違うもの。
私は、人に頼るのが苦手。
だって、自分のことは自分でやりなさい。
人に頼って楽しようと思わないこと、って育てられたから。
私は、人に甘えるのが苦手。
姉が甘えん坊で、両親は姉にベッタリだった。
祖父母も一緒で、私は甘える事を許されなかったから。
私は、人前で泣けない。
だってそれって、自分は弱いんだってアピールしているみたいだから。
弱さをアピールしてどうなるの?強くなれるの?
弱いって知られたらつけ込まれる。
そんなの絶対に嫌。
私は、嘘はつきたくない。
生きていく上では必要な嘘もあるって言うけれど、嘘をつく言い訳に聞こえる。
嘘をつけばそれだけ、心が痛くなる。
嘘をつけばそれだけ、自分を嫌いになる。
「私と別れる、そういう事?」
「⋯⋯君には悪いけど、そういうことになるかな。でも、俺は、君のことは心から愛していたんだ。ただ、君以上に愛する人と出会ってしまった、運命の人と出会ってしまった、ただそれだけなんだ」
「そう⋯⋯」
『わかった』
そう言ってしまえば、貴方と私の関係は終わる。
呆気ない幕切れ。
運命の人とか言っているけど、結局あなたは浮気した。
本当に運命だと思ったなら、付き合う前に私と別れるべきだった。
私、いつかあなたと別れることになった時、ありがとうって言えればいいなって思っていた。
こんな形じゃなくて、お互いのために別れることが望ましい、そういう形で別れたかった。
はぁ、だんだん自分が嫌な女になっていく気がする。
それでも、貴方のために教えておこうと思う。
「さよならを言う前に、私の知っていることを教えるわ」
言っても、貴方は信じないかも知れないけれど。
「彼女、貴方以外にも親しい男性がいるわよ。私が知っているのは三人だけれど、それ以上いるみたい。それから、誕生日プレゼント、鞄が欲しいって言われたでしょう?他の人にも同じものをお願いしているそうよ。一つだけ残して残りは売ってお金にする、それが一番だって。料理も、彼女殆ど出来ないわよ。お弁当は母親が作っているんだもの。あぁ、後は貴方が初めて、とでも言われたかしら?そんなはずないわよ。それなら、子供がいるはずないでしょう?」
「えっ?えっ?」
「こんなものかしら。あら、どうしたの?顔色が悪いわ」
「いや、その、どうしてそんなに彼女のことに詳しいんだ?」
「⋯⋯⋯⋯それは秘密。はぁ、でもおかげ様で何だかスッキリした。隠し事って、精神的に良くないのね。それじゃ、さよなら。あぁ、私のアドレス、消しておいてね」
慌てた彼を片手で静止して、テーブルに置かれた伝票を持って席を立つ。
誘った方が支払いをする、それが私たちの間で決めたルール。
だから、どんな状況であろうと今日の食事を誘ったのは私だから、支払いは私がする。
女の子らしく、なんて育てられていないし、なれそうもない。
だって、なりたくない女の子らしい人間の見本のような人物が、いちばん身近にいるから。
双子だけど二卵生の私の姉は、私とは全く似ていない。
それは外見もだけれど、中身も。
姉は自由奔放で、人を騙し嘘をつく事に罪悪感を抱くことがない。
だから、複数の男性と同時に交際もできるし、貰ったプレゼントを売り飛ばす事を何とも思っていない。
高校在学中に妊娠し、相手不明な状態にも関わらず産むと言って聞かず、卒業三ヶ月後に出産。
明るい髪色の薄い瞳を持った甥ができた時は、流石に私も両親も言葉を失った。
そんな甥も今年で五歳、人懐っこい笑顔で家に帰った私を出迎えてくれる姿は、仕事に疲れた私にとって唯一の癒しだ。
因みに姉は殆ど家に居ない。
家に帰ってくるのは週に一、二度で、帰ってきても、着替えたりして直ぐに出ていく。
恐らく男性や友達の家を転々としているのだと思う。
甥の面倒は母親と私、そして弟が見ている。
「さて、帰ろうかな」
ついさっき一年付き合った人と別れたばかりだけど、未練はこれっぽっちもない。
多分こういうドライな所も男の人から見れば、可愛くないのだろう。
でもそれが私だから、仕方が無い。
そんな私を愛してくれる人と巡り会い、私もその人を愛することが出来れば良いのにな、と思いつつ、可愛い甥っ子の待つ家路へと急ぐ自分自身が私は案外好きなのだ。
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(´-ι_-`) 男らしく、女らしく、人間らしく、『らしい』って人を縛るのに都合のいい言葉だなぁ