地獄の沙汰も金次第とはよく言ったものだ。
どんな悪人でも赦してくれる魔法の呪文だ。
だけど金で赦される生ぬるい地獄があるのだろうか?
否、これは罠であったのだ。暗示だったのだ。
最初の頃は本当に天国であった。道歩けば周りの天国の住人が俺に対して悪口を叩き石を投げるが痛くも痒くもない。やりたいことはなんでもできるし気に入らないことはなんでも消せた。
けれど段々と満たされなくなって来た。
欲求が過剰なまでに増幅して萎んでいった。
最終的には頬はこけ、目に生気が失われていった。
段々と周りの目線も気になり出した。最早天国などどこにもなくそこは天獄だった。
改めて言おう。地獄の沙汰も金次第というなら地獄のサタンは大笑いだ。
夜の荒野を駆けていく。宵闇に紛れている彼の姿は全身が黒一色。誰にも悟られるこのなく任務をこなす影の使者。毎夜血に塗れてなおこうして心を保っていられるのか。
それはありふれた日常を享受するということだった。
ある日、彼はいつもの如く雇い主の命じたとおりに指定された相手を殺そうとしていた。そこで見たありふれた日常が彼に心を取り戻させた。
いつか自分のお役目が終わる日が来る。その時こそあの光輝く日常を享受できるとそう勘違いしていた。
その出来事から数十年が経ち彼に引退の時期が訪れた。まだ彼は夢を忘れてなく遂に終わると意気揚々と最後の任務へと繰り出した。
いつもの通り指定された土地へ行くとただの空き地だった。不思議に思って地図をかくにんしていると不意に風切り音が聞こえて来た。
咄嗟に自分のクナイで弾いた。そこでようやく飛んできたものが分かった。それは自分が幼少の頃から見慣れて来た里のクナイだった。彼は理解した。
なぜ里に老いた忍びがいなかったのか。
それはこうして里のものたちで処分しているからだったのだ。
だが理解したところで手遅れだった。
彼の老いた体では2回目の攻撃はかわせなかった。
クナイが心臓に突き刺さる。
大量に口から血を流し彼は血の海に沈む。
結局は自分の業からは逃れられなかったのだ。
彼は最後に霞む視界で夜空を仰ぎ見て一つのことを願った。彼を今まで照らし続けていた月は月蝕によって影もなかった。
お題月に願いを込めて
ここまで読んでいただきありがとうございます。
更新が遅れてすみません。
春の風が優しく吹いている頃、私は揺籠の中で揺れていた。特にやる事もなくそれが暇という事を知らない私は不快と感じる事なく来る日も来る日も寝て起きて食べてまた寝るというサイクルを繰り返していた。
ずっとこのままでいいなと思い始めた頃、私は己の身長くらいもある大きい腕に抱き抱えられた。
このままだと連れ去られてしまうかもしれない。
そう思った私は堪らず大声をあげて泣いた。
すると大きい腕の男はワタワタと忙しなく顔を変え奇声を発してあやそうとして来た。
それがより一層不気味に思えてまた泣き出して、するとあやすことを諦めた男は急いで目的地らしい場所へ向かって駆けていった。
しばらくすると私の視界はいつも見た色の乏しい空間ではなく様々な色に富んだ空間を映していた。
それだけでなく知らぬ音、少し湿っている空気、見たことのない動物。
その全てが私を感動へと導いた。
声も出さず涙を流す私を胸に男は
「お前にこれが見せたかったんだ」と言い聞かせて言った。
その美しき光景は私はその男が父と知り自分で歩み言葉を発して1人で生きていける年になってもまだ鮮烈に一つの大切なフィルムの様に脳裏に焼き付いていた。
故郷を離れ、仕事に行っていた私は再び故郷に帰って今度は自分の足で歩いてその光景を見て息を吸った。
お題忘れられない、いつまでも
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
更新がかなり遅れてしまって申し訳ありませんでした。これからもまだまだ半人前ですが私の作品に目を通していただけるとありがたいです。
砂漠の中で男が歩く。男は機械だった。
ある研究所によって開発された実験物なのだ。
これも実験の一貫である。それは心を作ること。
最初の街では男は不適合者として見られる馴染む事は出来なかった。
そして今に至る。バッテリーも切れかけている。意識がブラックアウト仕掛けている中、目の前に街を見つけた。
そのまますぐに街へ辿り着き、食べ物による充電を始め命を取り留めた。
街の人々は気さくな人だった。無感情な男を快く迎えてくれた。
すると段々と男に感情が芽生えた。
男の心は感情という虹色に染まった。
お題カラフル
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
遅れてすみませんでした。
幾多の者を阻みその命を絶ってきた試練をたった1人で、成し遂げた者がいた。
その男は今では顔も好きなものも生まれも名前すら知られていない。
だがその男は居たという存在証明を人々は表していう。「楽園の開祖」と。
神話の時代は終わり、時は流れ楽園暦3514年。
人々は何も苦労をせず人生を謳歌していた。
この世界では、食べるものに困らない。
食べるものは念じれば出てくるからだ。
娯楽にも困らない。外へ行けば無料の無人の遊び場がありそこで何でもすることが出来る。
そして寿命にも困らない。人々は一定の年齢を超えると好きな時に死ねる。つまり死にたく無かったら無限に生きていられる。
楽園が消滅することもない。いつもアカシックレコードが造られた当初の姿をリピートしているからだ。
最初は世界中、全員が歓喜に打ち震えて楽しんでいた。だが時が経つにつれそうでない者も現れた。
どうしてかと聞くと不自由ない人生なんてすぐに精神の方に限界が来てしまうぞと口早に捲し立てる。
誰も耳を傾けないのが癇に障ったのか、やがてデモは反社会運動と変わり、果てはテロリストとなった。
望み通りの世界を創り出すアカシックレコードを破壊するために。
誰も望んでない偽善の英雄。その名は「エデン・オブ・デストロイヤー」
これはマジョリティーとサイコパスの存続をかけた一進一退の攻防である。
お題楽園
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
なんか宣伝みたいになってすみません。
またどこかで気が向いたら書くと思いますので今後ともよろしくお願いします。
追伸更新遅れてすみませんでした。