北極星は、南の星を夢見た

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8/18/2025, 12:17:31 PM

#95「足音」

あなたの足音はどんな音?
分からないまま大人になったぼくは
旅立った君へ想いを馳せるよ

君はだって、儚いから

足音が聞こえる
却下のハンコを叩きつけるような音が
ぼくを値踏みするためにやってくる

汚した手を洗わずに
人を値踏みした足だけを洗って
誤魔化すようなやつら

彼らに付いた足枷のおもしが
何年もかけて整地したコンクリートを
容赦なくゴリゴリと削って行く
追いかけてくる

ぼくはいつだって飛びたくて
泣いて力んだ背中から
ふわりと羽が生えることを望んだ

太陽で羽が溶け、落ちていった先が
今は無き、公園の砂場だったら良いのに

小さな罪も、努力も、笑い声も
全てがキレイに崩れて沈んでいくから
あの足音がやっと聞こえなくなる

まさに、ぼくの天国だ

あなたが水を求めて
ぼくを拐っていってくれたあの日
地球を見て初めて、胸の痛みを覚えたよ

けれど足枷のないあなたは
カラカラと笑って旅立ってしまった

まるで小さな王子さまのように

8/5/2025, 11:38:27 AM

#94「泡になりたい」

ガラスに入った気泡を潰しては探して
堂々巡りの日々を送る

人波をうまく泳げなくて
うまく息継ぎができなくて
あげく海が怖いなんて

そんな人魚に居場所はない

錨のように落ちていくより
綺麗な泡となって天に昇れば

そこに居場所が見つかるのかな

なんて杞憂へと逃げたくなる前に
今日もきみに会いに行く

シュワシュワと心地よい音のメロンソーダ
例えるなら、きみ

うまく喋れない
うまく歩けない
うまく空気も読めない私に

きみはパチパチと、愉快に甘く笑いかけた

だれかは当たり前の存在だと言うけれど
私には贅沢すぎる大切な宝物なんだ

叫びたいようなそんな言葉も
うまく伝えられずに泡となって消える

小さかった泡が大きくなって
パチンと弾けるように

ある日、大切なきみに
耐えられなかったと言われたなら
私は泡になって消えたい

そうなってしまわぬように
言葉の泡をかき集めて
私はちゃんと

愛していると言えるかな

6/24/2025, 1:59:06 PM

#93「空はこんなにも」

青い屋根の下、同じ壁の部屋
そこに穴が空いてしまっただけの話
それだけで遠くに見えたコメディが、
とたんに悲劇に見えるなんて
感情移入もほどほどに

スキップ拒否はいつからだった?
真面目くんな僕らは目の前の課題に熱心です
暑いならもっと気楽にサーフィンしようよ
そういったらハエみたいに叩かれるかな

魔女裁判の歴史を鼻で笑った
それもきっと呪いで
私には関係ない、僕には関係ないなんて
都合の悪いときにしか、僕らは
心に嘘をつけなくなってしまった
皮肉に笑った誰かの顔が
涙を知らぬピエロに見えた

ねぇ、魔女が見た空は美しかった?

幸せにいきたい
幸せな世界で生きていたい
もう手遅れだから死にたい
でもきっとそれは、目の前の話だけだと

信じていたい
信じていたいよ
僕は、キミを信じているよ

祈りの数だけ星となれ

6/15/2025, 1:33:53 PM

#92「マグカップ」

わん、わんっ、わん!
跳ね起きる
どこかで犬の声が聞こえる
ちっとばかし暗いと思ったが
そうか夜だ

階段の手すりをつたう音だけが
私の頭をユラユラと動かしている

ポチョン、ポチョン
手探りでキッチンまで
すりガラスから月がぼやけて
足元を頼りなく照らす

ひんやりとしたマグカップ
犬の声でさえ聞こえなくなってしまえば
世界はとても静かだ…

「わんっ!!!」





ガチャン

っあー、これがサスペンスの始まり

6/14/2025, 12:58:04 PM

#91「もしも君が」

おねがい

もしも君が神様ならば
スケープゴートになってもいい

振り子のように吊られた僕
君に会うまでの、神聖な時を刻む

ちゃんとなぞって、今から君に捧げる
僕の頸動脈

ちゃんと聞いて、今から君に捧げる
血のドクドク流れる音

ちゃんと突き刺して、今から君に捧げる
奥深く堅い僕のハート

僕を暴いて
僕を知って
僕を屠って
美味しいところ、わかるよね?

君のお墓を彩るなら
鮮やかなワインレッド

そうだ、僕の血で染めてあげる
害虫が寄りつかないように

だから神聖な血に、僕に
愛を与えて

「ねえ、」

時が止まった

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