北極星は、南の形を夢見た

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#95「足音」

あなたの足音はどんな音?
分からないまま大人になったぼくは
旅立った君へ想いを馳せるよ

君はだって、儚いから

足音が聞こえる
却下のハンコを叩きつけるような音が
ぼくを値踏みするためにやってくる

汚した手を洗わずに
人を値踏みした足だけを洗って
誤魔化すようなやつら

彼らに付いた足枷のおもしが
何年もかけて整地したコンクリートを
容赦なくゴリゴリと削って行く
追いかけてくる

ぼくはいつだって飛びたくて
泣いて力んだ背中から
ふわりと羽が生えることを望んだ

太陽で羽が溶け、落ちていった先が
今は無き、公園の砂場だったら良いのに

小さな罪も、努力も、笑い声も
全てがキレイに崩れて沈んでいくから
あの足音がやっと聞こえなくなる

まさに、ぼくの天国だ

あなたが水を求めて
ぼくを拐っていってくれたあの日
地球を見て初めて、胸の痛みを覚えたよ

けれど足枷のないあなたは
カラカラと笑って旅立ってしまった

まるで小さな王子さまのように

8/18/2025, 12:17:31 PM