#90「夢見る少女のように」
ステッキをひとふり
私は知らぬふり
いたずらな花火のように
ひとときの夢で眠ればいい
蝶のように舞い、蜂のように刺す
子供のように手を伸ばそうと
宝箱には入らない
憧れに加工された私
誰よりも美しい
本当の私よりずっと、ね
その命の儚い輝きを
「かわいい」と人は呼ぶのでしょう
手のひらで踊らされていると気づいたなら
最期までキレイに踊りきってあげる
バカだねって、目を細めて
#89「傘の中の秘密」
私は、知っているよ
私と相合傘をしたいがために
わざと傘を隠したこと
私は、知っているよ
君がわたしに好意を寄せていることも
なかなか言い出せないことも
私は、知っているよ
ほんとは男友達に誘われてたけど
用事があると嘘をついたこと
君は、知らないだろうな
雨の中、君だけが秘密をもっているなんて
そう思ったら間違いだよ
私だけが、知っている
私は剣士で、君は敵国の王女
三千年の時を駆けて
性別も時代もなにもかも変わっても
君に復讐するために来た私を
けれどまた、君に惚れてしまった私を
身を寄せあう傘の中
君は、知らないだろうな
#88「電話」
うす闇の夕焼けの中で
スマホが光るのを待っている
かなしいな
一人で過ごす時間は
無限の時がゴミ箱に収まっている
もったいないから、君の声が聞きたい
でもできないから、君の文を見つめる
こういう時むかしだったら
電話をする口実なんか、要らなかったのに
あいたいな
ほんの少しの気持ちが
ゴミ箱の中で震えて、輝いた
#87「君の名前を呼んだ日」
オー・ラリー
オー・ラリー
ワタシの口が踊っている
バレエの少女に憧れて
スケートの王子に夢を見る
魔法はなかなか覚めなくて
ワタシはただただ踊ってる
オー・ラリー
オー・ラリー
王子が消えても輝いて
氷のように鮮明に
こころの響きが透明に
お伽の世界はどこにある
魔法の呪文はここにある
オー・ラリー
オー・ラリー
ずっと君を探している
#86「歌」
さぁ!歌を歌おう!
この世は宇宙で最大のミュージカル劇場だ!
オレは平凡だ
メイクアップも適当だ
神は残酷だ
運命には逆らえない
アイツが飽きたら
俺はみじめに死んでいく
ふざけるな!
まさか俺を舐めているな?
さぁ!今に見ていろ!
飽きることのない最高のエンターテイメントを!
俺の輝かしい最後は拍手喝采!
アイツは感動に震えるだろう
さぁ!さぁ!さぁ!
歌を歌おう
俺は今、生きているのだから