北極星は、南の形を夢見た

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6/24/2025, 1:59:06 PM

#93「空はこんなにも」

青い屋根の下、同じ壁の部屋
そこに穴が空いてしまっただけの話
それだけで遠くに見えたコメディが、
とたんに悲劇に見えるなんて
感情移入もほどほどに

スキップ拒否はいつからだった?
真面目くんな僕らは目の前の課題に熱心です
暑いならもっと気楽にサーフィンしようよ
そういったらハエみたいに叩かれるかな

魔女裁判の歴史を鼻で笑った
それもきっと呪いで
私には関係ない、僕には関係ないなんて
都合の悪いときにしか、僕らは
心に嘘をつけなくなってしまった
皮肉に笑った誰かの顔が
涙を知らぬピエロに見えた

ねぇ、魔女が見た空は美しかった?

幸せにいきたい
幸せな世界で生きていたい
もう手遅れだから死にたい
でもきっとそれは、目の前の話だけだと

信じていたい
信じていたいよ
僕は、キミを信じているよ

祈りの数だけ星となれ

6/15/2025, 1:33:53 PM

#92「マグカップ」

わん、わんっ、わん!
跳ね起きる
どこかで犬の声が聞こえる
ちっとばかし暗いと思ったが
そうか夜だ

階段の手すりをつたう音だけが
私の頭をユラユラと動かしている

ポチョン、ポチョン
手探りでキッチンまで
すりガラスから月がぼやけて
足元を頼りなく照らす

ひんやりとしたマグカップ
犬の声でさえ聞こえなくなってしまえば
世界はとても静かだ…

「わんっ!!!」





ガチャン

っあー、これがサスペンスの始まり

6/14/2025, 12:58:04 PM

#91「もしも君が」

おねがい

もしも君が神様ならば
スケープゴートになってもいい

振り子のように吊られた僕
君に会うまでの、神聖な時を刻む

ちゃんとなぞって、今から君に捧げる
僕の頸動脈

ちゃんと聞いて、今から君に捧げる
血のドクドク流れる音

ちゃんと突き刺して、今から君に捧げる
奥深く堅い僕のハート

僕を暴いて
僕を知って
僕を屠って
美味しいところ、わかるよね?

君のお墓を彩るなら
鮮やかなワインレッド

そうだ、僕の血で染めてあげる
害虫が寄りつかないように

だから神聖な血に、僕に
愛を与えて

「ねえ、」

時が止まった

6/7/2025, 10:41:58 AM

#90「夢見る少女のように」

ステッキをひとふり
私は知らぬふり

いたずらな花火のように
ひとときの夢で眠ればいい

蝶のように舞い、蜂のように刺す
子供のように手を伸ばそうと
宝箱には入らない

憧れに加工された私
誰よりも美しい

本当の私よりずっと、ね

その命の儚い輝きを
「かわいい」と人は呼ぶのでしょう

手のひらで踊らされていると気づいたなら
最期までキレイに踊りきってあげる

バカだねって、目を細めて

6/2/2025, 10:46:53 AM

#89「傘の中の秘密」

私は、知っているよ
私と相合傘をしたいがために
わざと傘を隠したこと

私は、知っているよ
君がわたしに好意を寄せていることも
なかなか言い出せないことも

私は、知っているよ
ほんとは男友達に誘われてたけど
用事があると嘘をついたこと

君は、知らないだろうな
雨の中、君だけが秘密をもっているなんて
そう思ったら間違いだよ

私だけが、知っている
私は剣士で、君は敵国の王女

三千年の時を駆けて
性別も時代もなにもかも変わっても

君に復讐するために来た私を
けれどまた、君に惚れてしまった私を

身を寄せあう傘の中

君は、知らないだろうな

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