#78「春恋」
きっとあんたに恋なんかしたって
遠距離恋愛にしては遠すぎるよ
あんたは来年、再来年と
早くなるんだ、俺のもとから離れるの
そしてどんどん冷たくなる
ねぇ、ふらないでよ
いかないでよ
戻ってくるくせに
またやさしく笑うくせに
「あなただって、忘れられないのに?」
あんた
これだから春が嫌いだ
#77「風景」
夢から覚めた夢のように
これほどはっきり ぼやけたものはないだろう
僕の目の前の現実は
本当に現実なのだろうか まるでわからない
コンタクト越しに 輪郭をなぞっても
あなたの顔と 真意が見えない
上を見上げても
ドライアイは悲しみを語れない
子供の頃に見たコハクの月が
玩具みたいにチープに見える
ロマンと言う言葉の響きは
今や 責任と後悔に触れ
あの日から ぼんやりと
そして はっきりと
記憶はあっても
思い出がない
これは夢だ
悪い夢だ
あぁ、流れ星が見えないや
#76「君と僕」
ヒトはヒトとわかりあえない
唯一の共感は小指への痛み
それと目の中のまつげ
ニンゲンは知識欲が発達した動物だ
・読むこと
・書くこと
・話すこと
それらは感情というものを理解する、
ヒトが用意した通信手段
けれど 動物は動物だ
争いが起きるのは結局 ヒトは等しく
同じではないということ
わかりあえないということだろう
平等なんて所詮 ただの夢
それが 現実だ
でも 知りたいと思った
君のことを
感情を 痛みを
欠陥のない君のすべてを
そして僕への感情を
#75 「またね!」
また、といえるほど
あの場所に思い出があっただろうか
それでも桜は咲いているし
私はあの場所を今でも覚えていた
またね!
また、いつか会えたら
私は笑えているだろうか
#74「透明」
それは清々しいほどに訪れた
花は透いていた
わたしが溶け込んだ風景
離れなければ 行けないから
散った桜の下で わたしは空気になれる?
いいや むしろ
宙に浮いてしまいそうだ
訪れて初めて
あそこが私の居場所だったと
気づいてしまって
あっ、
怖いくらいに美しいや
それは清々しいほどに訪れた
花は透いていた