#64「星のかけら」
海辺で拾ったシーガラス
鈍い輝きを放つそれは ただのガラス瓶
けれど 大人になっても惹かれる
幼いときに信じてた
あれは星のなれの果て
彗星が 花火のように散り
海に浮かぶ月が 旅へと導き
わたしを見つけてくれたのだと
きみは、どこからきたんだい?
#63「変わらないものはない」
日本の冬は相変わらず容赦がない
商店街のショーケースに写るわたしは
ひどく縮こまっていて、みすぼらしく見える
どうして
たった三年前まで、町中の子供のように
わたしはクリスマスを待ちわびていたのに
何かが変わった、というわけではないのだろう
「優しい嘘」という魔法が溶けた
あぁ、たったそれだけの話
#62「どうすればいいの?」
埋葬に 笑い声
腐敗した墓の 腐敗した屍
しあわせな わたしの寝床
どうすればいいの?
明日の私は 私を裏切って
のうのうと生きているらしい
過去に囚われるのは
幸せに生きている未来が 消し去った
自分自身への 無意味な哀れみ?
ならばわたしの この涙は
殺されてしまうの!?
わたしは わたしが憎い
しかし 今日のわたしは
明日を消す権利を 奪われてしまった!
幸せな未来のわたしに
だれか!だきしめて!ゆるして!
わたしのこと引き留めてよ 今日に
たのしいことを 見つけてない
言えてないよ ありがとうを
今日の私にさよならを まだ
犬も 猫も 鳥も 神サマも
嫌いなやつも 好きな子も
不祥事のタレントも 幸せな金持ちも
わたしも 過去に
みんな平等に死んでゆく
未来のじぶんに 許されることを望んで
そうして みんな産まれ変わる
ならば フランダースの犬
そんな夢にね 抱かれたいの
ある意味 それは本望ね
わたしは まちがっていないと
おやすみなさい
あなたも しあわせなエンドロールを
#61「たくさんの思い出」
思い出すたび
ぱんっと溢れ出す ひかり
思い出すたび
心にすこし シミをみつける
思い出すたび
1枚の花弁を 落としてゆく花
思い出すたび
わたしは わたしの替えを探している
かき集めても 閉じ込めても
1カラットの宝石にしかならない程
儚い わたしの思い出
それを、思い出す旅
#60「哀愁を誘う」
ぶらりぶらり
わたしの命運が 風にさらされて
昼寝の猫が飛ばされるような
そんな危うさと 哀愁