北極星は、南の形を夢見た

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1/15/2024, 9:42:00 PM

#9 【この世界は】

きっとこの世界は、気付かず通りすぎるだろう

僕が 言ったジョークも

僕が 花を愛でたことも

僕が 電車の中で 屁をこいてしまったことも

たとえ僕が、それを一日考えても
きっとこの世界は、忘れてしまうのだろう

僕が でしゃばったことも

僕が 悲しいニュースに泣いたことも

僕が コーヒーを 白シャツにこぼしたことも

僕にとっては、悲しいことでも
きっとこの世界は、笑い飛ばすのだろう


この世界は、そういうものだ

1/14/2024, 10:12:52 PM

#8 【どうして】

「どうして?」
なんて、じぶんでも分からない。

でも、それはきっと必然的

「どうした?」

赤えんぴつが落ちて、折れた。とおもう

「どうして?」

音が、きこえたから。でも、ただそれだけ

「どうする?」

ただ、拾えばいい。こたえは、下にある

でも、おもった。どうしても。

下をみなければ、こたえがあるなんて

そんな"じじつ"は、「ない」かもしれない

「どうして?」

赤えんぴつは、浮いているかもしれない

赤えんぴつは、まん中から、折れたかもしれない

「どうした?」

だけれども、こたえの"じじつ"は、なくとも

赤えんぴつがある、という
"じじつ"は、かわらない

「どうする?」

拾うことに、するだろうね

「どうだった?」








なかった





「どうして?」
なんて、じぶんでも分からない。

でも、それはきっと必然的

1/13/2024, 11:27:45 AM

#7 【夢を見てたい】

ふわふわと
ゆめからさめた

ふわふわと
あなたにあいたい

ふわふわと
ゆめみごこち

ふわふわと
"あくむ"にひたる

ふわふわと
あなたのこえ、におい
なでる、かんしょくが、のこって…

『あいしてる』

あぁ

ずっとこのまま

夢を見てたい

ふわふわ、と
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#7.5 【酔生夢死】

ガチャ

心配のため息は、安堵にかわった

部屋中に、ふわっと漂うお酒とタバコ
「はぁ、酔っぱらいめ…」

「そういじけた顔すんなよ~」
ぷくっとふくれる火照ったあなたの顔

「ただいま」
暖かくて角張った手で、ふわふわ、と撫でられる
「…おかえりなさい」

きょうも、『あいしている』

その言葉は、わたしの命綱だ


この、タルタロスの奈落のような世界で


A.どうしてこの世は、生きづらくなったのか

Q.人類は今、これまでの
「夢の代償」を払わされているからだ


戦争による惨劇
AI擬似問題
不祥事

夢心地にひたる、ふしだらな人間に
怒ったハデスは裁きを下した、のだろうか

突然、深淵に投げ込まれた人類は
必死に、もがき、苦しみ

自分たちの楽園を探したが

とうとう、その窮屈で不安定な世の中に
耐えられなくなってしまった

誹謗中傷
自殺者数の増加
フェイクニュース

それらは、煙のように立ち込め
青い空を覆い尽くし

いつしか、人間は、抗うことを放棄した

そんな世の中だから、正義感に溢れた貴方が

徐々に、壊れてしまいそうで

恐ろしいのだ
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暗く、淡い月の光が刺す部屋には
心臓の鼓動だけが響いていて

逆光に照らされたあなたは

今にも消えてしまいそうなくらい
ぼんやりと儚く、私の目に映った

「どうしたの?」

見つめる瞳は、淡いグレー。
その目に、私が写っていることが
何より嬉しかった

わたしの心は今、嬉しさと不安のトルネードで
入り乱れている


「なんでもないよ」

途端、あなたは私を抱き締めた
その、37℃の体温に全てを覆い尽くされる

「…泣いてるのに?」

ゆっくりと、わたしの背中を愛撫する手

近づく鼻息、揺れる黒髪
ゴツゴツした優しい肌
甘く囁くあなたの声

鼻腔にトロリと残る、タバコの匂い

涙が溢れるほどに安心する
あなたのぬくもり

あぁ、おねがい

離さないで

離れてしまえば、
あなたがどこかに
いってしまいそうだから

宇宙のように、手を離したら
もう二度と、会えなくなってしまいそうだから

あなたがいるなら、価値あるものは
なにもいらない。

あなたがいるなら、
こんな世界を無視して、
気持ちのいい朝を迎えられる

あなたがいるから、わたしがいる

このまま、酔生夢死のごとく
深く、あなたに、酔うように生きて

夢心地の中、溺れるように、死にたい



『あいしてる』



たとえ、それを、世界が許してくれなくても








1/12/2024, 2:15:39 PM

#6 【ずっとこのまま】

【寒月】それは、
平安時代の二人の女性が正反対の詩句を出す程、
詠み手によってかわる不思議な存在である


「みゃー」
「こんばんわ」

すらりと、僕の手にすりつく黒猫。
「はいはい、ちょっとまってね」

最近、仲良くなった野良のお隣さんだ。
ササミ目当てにやって来るのだが、
代わりに僕の話を聞いてくれるので、
関係はWin-Winである。

美味しそうに、三日月のような目をさらに細める

愛おしい
そんな感情を抱くことは、あまり慣れないことだ。
なぜなら、

「…しんどかったよ。だってね、今日、
女の子に告白されたんだけど、普通に断ったんだ。
普通に断ったんだけど、その子泣き出しちゃって

『あなたは、「寒月のように冷たい人」ね』

だとさ、なんとも詩的な表現で嫌われちゃったよ」

ハハッ、と笑うけれど、ごまかせない
あの時の言葉は、たしかに冷え冷えとしていて
僕の心を締め付ける

(断ったのは、君のためなのに)

昔から、人が愛せなかった
それは、僕があまりにも冷たいせいで
だから、断ったんだ
僕はきっと、君のことを愛してあげられないよ

「…そんなつもり、無かったんだ」

そう言っても、誰も耳を貸さないことなど
分かりきっていた

「僕は、ずっとこのままでいいのかな?」

自問自答する
返答は単純明快、「変われ」
そう、誰からも言われる言葉。
…それが出来たら、ここまで苦しんでいないのに

「みゃー」

はっと顔を上げると
その返答に、答えるかのように君が鳴いた
それが、肯定か否定かは、分からないけれど
なんとも優しい声だった

そして、ゆっくり、身震いする
僕の腕のなかにスルッと入ってきた
柔らかくて、あったかい
「寒いの?」

クワーッと大あくびをして、僕を見る
さっきの雑念など、もはやどうでもよくなって
ふわふわと、頭を撫でた

月をみる
それはやさしい春月や、愛でられる秋の月とは違う

研ぎ澄まされたように、鋭く光る孤高の月

清少納言から嫌われ、紫式部から愛される
見る人にとっては、「変わる月」

そう、寒月

「…綺麗だ」
「みゃー!」

「わたしのこと!」とでも言うように、
愛しの人は目を細めた。

あぁ、ずっとこのまま
君といられたらな。





1/11/2024, 11:31:38 AM

#5 【寒さが身に染みて】

冷たい寒さが身に染みた

肌を刺した寒さが、僕の傷口を撫でるから

寒さは、寂しいのだ

暖かい寒さで、僕を撫でまわして

冷たい寒さで、僕を刺す

そのまた、君は撫でるのだ

冷たい寒さが身に染みた



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