空から星がこぼれ落ちたような、
そんな流星雨に佇む君は、
流れる星に何を願うのだろう。
星空の下で君と二人、
この日のことを僕はきっと一生忘れられないだろう。
「星よ願いを聞いてくれ。
彼女とずっと一緒にいられますように……」
「え!? 誰!? キモっ!」
人間違いをした、
この日のことを僕はきっと一生忘れられないだろう。
// 雨に佇む
日記帳があると思っていただきたい。
人様の日記帳だ。
それが無造作にあるわけだ。
人気のない教室で私の机の上での邂逅だ。
なぜ私の机の上に。という疑問があるが人様の物だ。
触れない方が良いのではないか。
という事は、まぁ分かる。
しかし私の机の上にあるのだ、触るなという方が無理があるのではないだろうか。
それとも夕日に照らされ魔が差した。とでも言えば恰好が付くのだろうか。
なんにしろ。
つい、悪戯心に手が出てしまう。
手にして思ったことは、意外と重いという事だ。
300ページはあるだろうか。
いや切の良いところで365ページ。
つまり1年分だろうか。
全てのページが埋まっているのなら、
恐らくはクラスメイトの1年分の思いを綴った記録が、いま、この手の中に、あるわけだ。
そう考えると俄然内容が気になってしまう。
誰の日記なのか。
自分の事は書かれているのか。
書かれているとして、悪くは書かれていないだろうか。
いや逆に好意的に書かれているかもしれない。
流石に中を覗くのは憚れる。
しかし1ページ程、ちらりと見る程度なら構わないのではないだろうか。
いや、しかし、もし見咎められるようなことがあれば責められるのではないだろうか。
だが教室に忘れていく程度の物ならば、笑って許してもらえるのかもしれない。
そもそもとして私の机の上にあったのだ。むしろ読んでほしかったのかもしれない。
いずれにしろ既に手にしてしまっているのだ。
見たと疑われる事は必定であろう。
しかし――
そんな葛藤を十分ほど繰り返していたであろうか。
意を決し、日記帳の中ほどをガバリっと開き内容を検める。
そこには鮮やかな――白紙が広がっていた。
次のページも。
その次のページもだ。
何のことはない、まっさらな日記帳を手に私は葛藤を繰り返していたわけだ。
何とも滑稽な話である。
ぺらぺらとページをめくり最初のページを最後に開くと、そこには見慣れた名前が書かれていた。
「あ、これ私の日記帳だ……」
そういえばちょうど一年前に、日記を書こうと思ったような。
思わなかったような。
自慢げに学校に持ってきたような。
持ってこなかったような。
何のことはない、私は私の日記帳を手に読んでいいのかダメなのか。葛藤を繰り返していたわけだ。
何とも、滑稽な話である。
// 私の日記帳
「夜中に鏡を向かい合わせ――
つまり合わせ鏡をすると悪魔が現れるって話。
聞いたことあるだろ?」
「都市伝説というか怪談であるよね。
聖書で尻尾を挟んだり、瓶に閉じ込めたり、色々パターンがあるみたいだけど」
「というわけで鏡を2枚用意してみました」
「……え、やるの? 作り話だぜ?」
「悪魔に渡す供物してリンゴも用意してみました」
「……やるのね。
でも夜中まで待つの面倒くさすぎるんだけど」
「酒とツマミと、暇つぶし用に新作ゲームも用意してみました」
「はいはい、用意の良いようで……」
……
「ところで何で悪魔への供物がリンゴなの?」
「L知ってるか――」
「それは死神じゃねーか」
……
「さて23時50分だね」
「そうだな。ながかった。もぅ眠い。
ていうか寝よう」
「いやいや待て待て。
せっかくここまで頑張ったんだから、あと10分ほど頑張ろうよ」
「いいけどさー。どうせ何も起こらないぜ?」
「いや、色々起こるね。
こぅ……びゃー?って感じで」
「ふーん。まぁ何でも良いけど」
……
「あと残り3分弱。ここらでネタバラシをしようか」
「?」
「深夜0時に合わせ鏡をすると悪魔が現れるという話。実はあれは――ウソなんだっ!」
「うん。知ってた」
「実は夜中に合わせ鏡をすると現れるのはーー
『異界への道』なんだ!」
「……わー、そうなんだー。すごーい」
「その異界への道から異界人が時々迷い込んできたり、逆に異界へ迷い込む人もいるわけだ」
「それは何というか、運がない間抜けな人達だな」
「そう、そんな運がない間抜けな君のために帰り道を用意してみた」
「は?」
「鏡、見てみ」
「いや異界人? え? って、ちょ、ちょっ、鏡がっ、なんか、こぉ、びゃー?ってなってる!?」
「さぁ森へお帰り」
「それはΩっ!」
……
「帰れったって、そもそも俺は異界人じゃないぞ! あとなんだ、このびゃーってのは!」
「普通の人類にはツノも羽も尻尾も生えてないんだよなぁ」
「いや、これは人類として当然の……お前は生えてないな?」
「そうだね。あと、僕たち友達でも何でもないって、覚えてる?」
「え、いや……そういえば、お前は誰だ? あとなんかここに来るまでの記憶がない! ツノなし人間に誘拐された!?」
「落ち着け。落ち着いて思い出せ。異界への道を通った者は、時として記憶の一部を失う時があるんだ」
「そ、そうなのか?」
「そして失われた記憶は、その時傍にいた人間の記憶やら常識を元に疑似的に再構築されたりもする。君がツノなしの僕と違和感なく接していたみたいにね」
「ほー」
「しかし安心してくれ。
失った記憶は異界への道を通って元の世界に戻れば元通りに蘇るから」
「なんか詳しいな。オカルト専門家なん?」
「記憶を失う前の君に聞いた。
嘘か本当かは君次第だよ」
「マジか。俺がオカルト専門家だったのか」
「それは知らんけど。
まぁ無事に送り返すことができそうでよかったよ」
「あー。ありがとう?」
「どういたしまして」
「ん~と…………また遊びに来て良い?」
「……リンゴの用意はしておくよ」
// 向かい合わせ
「進路希望かぁ……
なぁ『将来の夢』的なやつ、考えたことある?」
「ん〜、そうだな。海へ行きたいんだ。静かな海へ」
「ふ〜ん? 海? 将来の夢なのそれ?
それじゃ他の奴も誘って、今週の土曜に行こうぜ」
友人はそうじゃないんだと苦笑したが、
週末はみんなで海を満喫した。
あれから十数年。
友人は今度の宇宙飛行士の試験へ挑戦するそうだ。
『将来の夢』を叶えるため月を目指すそうな。
今度の海も満喫できると良いな。
// 海へ
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波風立てずに生きる人々に魔の手が迫る。
その名も恐るべき『正論魔神』
奴らは聞いたこともない法令や、
誰がなんの目的で作ったのかも忘れられた規則で
人々の心を縛り、生活を蝕む。
そんな人々を救うため、1人の男が立ち上がる。
法令の間隙を抜い、規則の裏を抜けてやってくる。
裏返しのロングティーシャツをズボンのように履きこなし、裏返しのズボンはジャケットの如く袖を通し。
頭に被った赤白帽子は、どちらが表で裏なのか。
人々の笑顔を取り戻す、彼の名は!
『屁理屈超人・ウラガエシマン!!』
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「って企画を考えました」
「没だな」
「え〜、そんなぁ。テーマソングも考えたのに」
「よし、歌ってみろ」
「それはちょっと……ハズカシイ」
「没だな」
// 裏返し