ベットに寝転がり、ぼーっと空を見上げる。時刻は既に13時を過ぎているが、起き上がる気分にもなれずこの有様。
まさか留学が他人事じゃなくなるなんて、と何度も綴ったはずの言葉がふと溢れた。
気がつくといつの間にか手元にあった携帯電話に苦笑しつつも慣れた手付きで画面を進める。
前みたくいきなり掛けたら驚くかな?なんて。
だって、同じ空の下にしかいない君が悪いんだ。
「遠くの空へ」
今日もいつも通りの朝が来る
いつもの景色
いつものチャイム
いつもの先生
いつもの授業
そして、いつもの仲間で、いつもの時間を過ごす
口に出せば全てが崩れ去ってしまう気がしたから
きっと明日も、いつも通りだ
「言葉に出来ない」
段々と暖かさが増してきた4月上旬。
会社帰りのサラリーマンよろしく、されるがまま電車に揺られていた俺は、ふと窓の外を通る桜に目を留めた。
もうそんな季節か、そう考えると同時に自然とため息が溢れる。女々しい話だな、と自分でも苦笑してしまう。ただ高校時代の部活仲間の名前がそれを冠したものだったというだけなのに。
所詮過去は綺麗に映るものだろう、と適当に思考を遮断しホームに足を降ろし、改札を抜ける。
俺だって暇ではない。大学はそれ程までに忙しく、かつ充実している。今日も講義室の最前列を取らんと改めて足を踏み出した次の瞬間、胸ポケットにある携帯が高らかに鳴り響いた。
さっと取り出し、ちらりと番号を確認する。もちろん身に覚えはない。何事か、と警戒しつつも応答ボタンに手をかざす。
「お、本当に繋がった!久しぶりー!」
ふと顔を見上げると、校舎への道がいつにもまして彩られていた。
春爛漫、桜の季節はまだまだ続くらしい。
なぁ、と震えた声が風に乗って耳を揺らす。
こんな事をする意味はあるのか、と脳内で何度も反芻したであろう言葉は音にせずともこちらに伝わってくる。
しかし、否、だからこそ私は君に矛先を向ける。
誰よりも一緒にいた、君に。
ずっと一緒だったはずの、制服の違う君に。
だってこれは、終章ではなく序章なのだから。
「誰よりも、ずっと」