(雑感です)
あの頃の私へ
といえばもう、いつ、どの時期の私へでも、厳しい言葉しか出てこない
ヘラヘラフラフラずーっと適当に生きてたツケが今来てる、けど今もやれることやろうとせず事態は悪化するばっかり
メンタルの調子崩してるから?自己嫌悪しか出てこない
いいから動け、どうにかしようと足掻け、
でもきっと十年後も同じこと思うんだろうな
後悔ばっかりで痛い痛い
また明日
飽きたな、大窓を背に座したカーランド公国大公、オルフェ・カーランドは緩く息を吐き出しながら手元の書類をはさりと投げ出す。
国のスラムの救済策にこれから恐らく起きる流行病の薬の調達、税制改正、余剰金の使い道、南側の大水で壊れた橋の架け替え、北側の国との領土戦争を調節するのも飽きた。
「つまらんなぁ」
穏健派と急進派の調整に軍部との会合、戦争後の補償をどこから捻り出すか、指先ひとつでどうにでもなる。だからこそオルフェは女の身で、奇矯な姿をしていても、志尊の地位を脅かされずこうして在るのだ。そして彼女の今の興味はただ一つ。
中央を流れる河川の氾濫による洪水の被災者を収容する救貧院を設立するために、公都郊外の教会を訪れた、そこにいた貧乏教会の貧乏牧師。驚くほど純朴で頑固でお人好しで愚かなリンカーン。
彼の人を想う時、少しだけ呼吸が楽になる。すっと淡い風が通り、胸が開く音がする。
「会いたいなぁ」
この感情は愛などではない。興味と執着と好奇心と独占欲と、あと幾ばくかのどろどろと沈んだもの。
怖がらせたくはないからあまり表には出さないようにのらくらと見せかけてはいるが、彼が自分以外の他を見るのは面白くないし許したくない。彼が自分以外から与えられる幸福を享受するのは許せない、
(なぁ、だとしたら)
これがどんな感情から派生したものだとしても、
「これは恋だろ」
決めつけてオルフェは机から離れた。部屋から出て広い廊下の角を音もなく曲がる。
幸いにも外は好天、日は暖かく風は弱く、民たちはさんざめき城内はうっすらと眠気漂う、素晴らしき脱走日和だった。
突然の別れ
それは稲妻がもたらした出会いで、別れだった。
リンカーンは孤児である。町外れの教会に育ててもらい同じような境遇の子供たちと、猫の仔のようにくっついたり離れたり賑やかな幼少期をすごした。
長じてから洗礼を受け教会を継ぎ、当時の牧師家族を見送ってからは一人、この施設を維持するために孤軍奮闘していた。
そんな時だった。
突然の土砂降りと雷鳴の中、一人の貴族の青年がふらりと教会に迷い込んできたのだ。
(何事だ!?)
「雨宿りの方ですか?これは酷く降られましたね」
「ああ、……すまないが少し滞在させて欲しい」
「勿論です。今なにか拭くものをお持ちしましょう」
(貴族の坊ちゃんが一人でどうした、迷子かぁ?)
びしょ濡れの彼に仰天したリンカーンはあれこれとつきっきりで世話を焼き、居住区から取ってきた清潔で乾いた布で頭を拭いてやる。向かい合ったら彼の方が僅かに背が高かったのでリンカーンは少しムッとする。
(さすがお貴族様はいいもん食ってやがる)
ケッと胸中で吐き捨てた。自分だって育ち盛りの時分に栄養のあるもんを食っていれば、今頃は!彼は平均より少し低い身長にコンプレックスを持っていた。
軒先を貸し、乾いた布を手渡すだけで充分だったと言うのに、まるで過保護な母のようにあれこれと世話を焼く彼に、何故か脱力し、されるがままだった青年がうっそりと顔をもたげる。
これでうちを気に入ってちっとでも寄進してくれたらいーなー、程度の気持ちでいたリンカーンは、息を飲んだ。
凄まじい美貌だった。
濡れた黒髪の隙間、長い睫毛が震え金色の双眸がとろりとリンカーンを見詰める。まるで毒蛇の眼差しのようだった。
思わず髪を拭いてやる手を止めたリンカーンだったが、その手に彼の長い指が重なる。ひやりとした、温度のない肌だった。
「決めた、」
「何がです」
「君を私のものにする」
「はぁっ!?」
突然に一方的で無礼な宣言をかました美青年は、唇の端だけで微笑んでぎゅっと彼の手ごと指を握りこんだ。
「今日はこれで帰るけど、いや、いい拾い物だった」
(ちょっと待て!まさか変態貴族の稚児になれとかそういう話か!?)
ガラピシャーン!と、頭上で雷鳴が鳴る。突然差し迫った尻への危機に恐怖していると、青年貴族はふと笑った。
「多分今君が想像している事も思い当たるけど、とりあえず私は女だよ」
「はぁッ!?」
「あと無理矢理手篭めにはしない。嫌われたら悲しいからね」
「はアッ!?」
「また来るね。今度はちゃんと口説きに」
声をひっくり返すリンカーンの強ばった指先に、あろうことか、ちゅ、と口づけて、唐突に彼、いや彼女は雷鳴と共に教会を去った。
後に残ったのは濡れてしわくちゃになった布と呆然とするリンカーンだけ。
「何だったんだ……今の……」
たったこれだけの邂逅であったのに、何故か大事なものを散らされた心持ちのリンカーンだった。
(雑感です)
恋物語。
すっかり興味なくなっちゃったわね、とおばさんのような呟きをひとつ。いやおばさんのような、ではなくはっきりとおばさんそのものなんですが。わはは。
恋や愛はともかく、この歳まで一人でいると、仲の良さそうなご夫婦の絆が羨ましくなります。
全くの他人が出会って、恋して、が出発点なんですよね。
あっ、お見合いなどもあるだろうしそうとは限らないか。まあとにかく。
惚れた腫れたの恋物語は全く羨ましくはないのですが、老いも若きも、それぞれ色々なことを乗り越えて、長年支え合って歩んでこられたんだろうな〜という仲の良さ、絆の濃さ、そういう夫婦仲に当てられてたまに泣きそうになる訳です。こういう時孤独って染みるぜ。
(雑感です)
モンシロチョウと聞くと、以前の職場にいた兼業農家のパートのおばさんのことを思い出します。
その方、モンシロチョウに限らずちょうちょが畑にいるのを見かけると、網持って追っかけると仰る。別にちょうちょ大好きな訳ではなくせっかく作った畑の野菜に卵産むから、にくったらしくて!ということでした。
確かに手間暇掛けて育てたものを青虫にムッシャムッシャ喰われるの、相当腹立つよな、と納得するやらおかしいやら、仕事の合間の雑談でした。