めしごん

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6/3/2024, 12:38:10 PM


キャストペリンは旅人である。
春告さん、と呼ぶ通り、雪解けの精霊は春を呼びに北上する、その為だけに産まれ、生き、旅をしている。
たった一日でもシーカシーナの元に留まる事が、彼女にとっては奇跡なのだ。

だからその度シーカシーナは願う。どうかこのまま自分の元に留まってくれないかと。この西の平原で、共に生きてはくれないかと。

だがキャストペリンは旅を止めれば。その場で消えて無くなってしまうだろう。雪解けの精霊はそういうものだ。春が来たら形を持ち、北上し、また空へと還り形を変えて地上に降りて旅をする。巡る命だ。留めては死んでしまう。

その事を知っていてなお、シーカシーナはキャストペリンに恋をした。キャストペリンもシーカシーナに恋をした。
この恋は一日だけの命、そう決めて彼と彼女は一日だけの逢瀬を自分達に許した。

だから毎回毎回別れ際に失恋して、そして再会する度に恋をするのだ。
例えそれが不毛であっても。
いつか彼と彼女が生きる役目を終え、その命を終えるまで。二人の恋は繰り返すのだった。


「失恋」





5/29/2024, 12:14:39 PM

「ごめんね」

ああなんて毒を孕んだ目だ。
寂しげに呟いて翻すその身を引き留めた。

「ふざけるな!」

ああ、頭のどこかで声がする。危険だ、この先は引き返せない。後戻り出来なくなる。だがこのままこの女を手放すことなど、とうの昔に出来なくなっていた。
なあ、この極まりない、ろくでもない話の際まで追い込んでおいて、こんな酷い結末はないだろう?

「おれは!お前のものになりたいのに!そうさせてくれないのはお前だろ!?」

散々誑かして、惑わせて、夢中にさせておいて、
最後の最後で冗談にまぎらわせて、結局辿り着かせてなどくれない。なんて酷い女だろう、なんて残酷な。

「いいんだね」
「何がっ」
「逃げ道を塞いだのは、君だよ」

なんて目で自分を見るのだ。まるで夜の底を這う蛇だ、焦げ付いた目で、獲物の首筋に喰らいつく直前のような目で、
ああ、なんて目で。
リンカーンはぐいと強気に笑った。どうか笑えていますようにと、今初めて自分の事を主に願った。

「望むところだ、馬鹿野郎」


5/28/2024, 10:29:41 AM

(雑感です)


今年はねぇ〜本当にねぇ〜半袖出した途端肌寒くなったり、かと言って長袖着るには絶妙に暑かったり、といった不安定な気候でおばちゃんは疲労困憊ですよ。ヨボヨボ。

こちら地方、最高気温が夏日になる日でも、まだ最低気温は10度台だったりします。だから昼間は半袖着てても夜は長袖だったりとか。GW終わってもこの有様、夏が来たらいったいどうなるんでしょうね?
暑さに慣れないまま、猛暑を迎えて体調ダダ崩しそうな予感がひしひしとします。加齢による弱体化を舐めたらいかんぜよ!

そんな感じで何も考えずつらつら愚痴をつづってみたり。そんな日もあるって事で、お目こぼし下さると幸いです。わはは。

小説も書けるように、しばらくネタをねりねりします〜
いつもハートありがとうございます❤︎皆様の優しさに今日も生かされております。



5/24/2024, 10:48:01 AM

(雑感です)


あの頃の私へ
といえばもう、いつ、どの時期の私へでも、厳しい言葉しか出てこない

ヘラヘラフラフラずーっと適当に生きてたツケが今来てる、けど今もやれることやろうとせず事態は悪化するばっかり
メンタルの調子崩してるから?自己嫌悪しか出てこない

いいから動け、どうにかしようと足掻け、
でもきっと十年後も同じこと思うんだろうな
後悔ばっかりで痛い痛い



5/22/2024, 12:07:03 PM


また明日



飽きたな、大窓を背に座したカーランド公国大公、オルフェ・カーランドは緩く息を吐き出しながら手元の書類をはさりと投げ出す。
国のスラムの救済策にこれから恐らく起きる流行病の薬の調達、税制改正、余剰金の使い道、南側の大水で壊れた橋の架け替え、北側の国との領土戦争を調節するのも飽きた。

「つまらんなぁ」

穏健派と急進派の調整に軍部との会合、戦争後の補償をどこから捻り出すか、指先ひとつでどうにでもなる。だからこそオルフェは女の身で、奇矯な姿をしていても、志尊の地位を脅かされずこうして在るのだ。そして彼女の今の興味はただ一つ。
中央を流れる河川の氾濫による洪水の被災者を収容する救貧院を設立するために、公都郊外の教会を訪れた、そこにいた貧乏教会の貧乏牧師。驚くほど純朴で頑固でお人好しで愚かなリンカーン。
彼の人を想う時、少しだけ呼吸が楽になる。すっと淡い風が通り、胸が開く音がする。

「会いたいなぁ」

この感情は愛などではない。興味と執着と好奇心と独占欲と、あと幾ばくかのどろどろと沈んだもの。
怖がらせたくはないからあまり表には出さないようにのらくらと見せかけてはいるが、彼が自分以外の他を見るのは面白くないし許したくない。彼が自分以外から与えられる幸福を享受するのは許せない、

(なぁ、だとしたら)

これがどんな感情から派生したものだとしても、

「これは恋だろ」

決めつけてオルフェは机から離れた。部屋から出て広い廊下の角を音もなく曲がる。
幸いにも外は好天、日は暖かく風は弱く、民たちはさんざめき城内はうっすらと眠気漂う、素晴らしき脱走日和だった。



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