めしごん

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2/27/2024, 10:56:41 AM

現実逃避


(創作ではなく雑感です)

まさに今の状態ですね。
ちょっとメンタル壊してることもあって、年齢や、健康や、職場復帰や収入の事や両親・自分の老後の事。
現実が辛くて苦しくて常にうっすら生きてたくないな〜って思いが付きまとってるけど、想像の世界ではいくらでも羽ばたいて何処までも行けるから、頭の中の世界が無限に広がってる限り、私はまだ生きて行けそうな気がする。それに周りの人も想像してたよりずっと優しい。有り難い。
頑張らずにゆっくりと行けたらな〜と思います。
オチなし。

2/27/2024, 9:14:59 AM


シーカシーナは、村から少し離れた所に住む牛飼の娘である。そばかすが散る鼻ぺちゃと雨が降るとくしゃくしゃに絡まる赤毛のくせっ毛には毎朝鏡の前で手こずっているが、平凡ながらも光が入ると琥珀のように輝く茶色の目は、自分でも結構気に入っている。
今、自分のその茶色を琥珀へと変えたのは橙の髪の精霊だ、雪解けの精霊、キャストペリン。
見上げるシーカシーナの頭上、何もない所をぽん、ぽん、と綿菓子が弾けるように跳んで、キャストペリンはまるで体重を感じさせない様子でシーカシーナの目の前に着地する。
自分の身長より長い樫の杖をくるりと回し、山高帽を脱ぎ、貴族の若君のように気取った仕草で一礼した。橙色に輝く髪が、さらりと音を立てて肩を滑る。

「ぼくのそばかすさん、一年ぶりだね。元気だった?」
「元気よ。会いたかった!」

笑う友人に勢いよく飛びつけば、りぃんりぃんと高くなる鈴の音と共に二人は空へ舞い上がる。
浮遊感と耳元で風を切る音に、わくわくと琥珀の両目を煌めかせて、シーカシーナは自分を抱くキャストペリンを見上げた。

「さあ、一年ぶりの旅の話を聞いてくれるかい?ぼくのそばかすさん」
「待ってたわ、春告さん。あなたの話をどうぞ聞かせて」

見る見るうちにシーカシーナの素朴な家が遠くなる。彼女が住む村、隣村、幾多の住処が広がる広い草原にその向こうを流れる大河、水の流れを裳裾のように翻す巨大な山脈。広大な景色を一望出来る空の中、雪解けの精霊、今はシーカシーナの友人のキャストペリンは、とてもとても嬉しそうに笑った。



君は今(僕の/私の腕の中!)

2/25/2024, 1:18:55 PM

物憂げな空


生憎ながらその日は、朝からどんよりとした灰色の雲が空を厚く覆っていた。
本格的に雨が降り出す前にと牧場牛の乳を搾っていた娘は、ふと何かに気がついたように被り布に手を当てて、彼女の持つ奔放な巻き毛そっくりの仕草でぴょこんと顔を上げた。
何かを探すように細めた両目が、空から降り注ぐきらきらした橙の色彩を見つけてみるみる大きくなる。キャストペリンは虹よりもダイヤよりも尊いこの瞳の輝きを何よりも美しく思い、愛していた。娘は大きく両手を空に上げ、振り回す。

「おーい!春告さーん!」

つられて牛たちも空を見上げる。飼い主そっくりの動きに、キャストペリンも思わず笑った。

「今年もよろしくね、キャシー!」

曇天すら振り払う眩い笑顔のシーカシーナ、唯一無二の人間の友人に、キャストペリンも空から飛び降りながら、飛びっきりの笑顔を返す。


「会いたかったよ、ぼくのそばかすさん!」

2/25/2024, 9:22:58 AM

雨が上がった夜明けの草原には、人間には見えない命が満ち溢れている。
キャストペリンは尖った革靴の爪先で、葉先に揺れる丸っこい朝露を跳ね上げた。
りん、りん、と透き通った鈴の音を鳴らして、空中に散った透明な雫達から、くるん、ぽんと小さな小さな妖精達が生まれる。
りん、りん、
りん、
と、いくつもいくつも。
夜明けの眩い光線を浴びて、彼ら彼女たちは背中の虹色の羽根をぶるりと震わせ、涼やかな空気に鈴の音の笑い声を響かせて輪を描くように飛び立っていく。
キャストペリン、雪解けの精霊はにこりと笑って手を振る彼らの旅立ちを見送った。



小さな命