物憂げな空
生憎ながらその日は、朝からどんよりとした灰色の雲が空を厚く覆っていた。
本格的に雨が降り出す前にと牧場牛の乳を搾っていた娘は、ふと何かに気がついたように被り布に手を当てて、彼女の持つ奔放な巻き毛そっくりの仕草でぴょこんと顔を上げた。
何かを探すように細めた両目が、空から降り注ぐきらきらした橙の色彩を見つけてみるみる大きくなる。キャストペリンは虹よりもダイヤよりも尊いこの瞳の輝きを何よりも美しく思い、愛していた。娘は大きく両手を空に上げ、振り回す。
「おーい!春告さーん!」
つられて牛たちも空を見上げる。飼い主そっくりの動きに、キャストペリンも思わず笑った。
「今年もよろしくね、キャシー!」
曇天すら振り払う眩い笑顔のシーカシーナ、唯一無二の人間の友人に、キャストペリンも空から飛び降りながら、飛びっきりの笑顔を返す。
「会いたかったよ、ぼくのそばかすさん!」
2/25/2024, 1:18:55 PM