冬になったら
ストーブをつけて
こたつに二人並んで
あったかいお茶でも飲んで
一緒に過ごそう。
きっと今頃お外は雪が積もってる
明日は二人で雪かきをしようね。
真っ赤になった君の鼻をつまんで
「寒いね」って笑うから
君もつられて笑って欲しいな。
今日はぬくぬくおこたでだらけようか。
《冬になったら》
固く繋いだ手のひらの熱を覚えてる
離し難いと思っていたその温もりを
自ら手放したのはもうずっと遠い昔の話___
時々世界でたどひとり取り残されたような孤独に苛まれることがある。
でもきっと、あなたと私はどこかで必ず繋がっているのだと、そう信じて。
番の鳥が羽ばたいた。真白い羽を一枚残して紺青の空を舞う。
離ればなれにならないように互いに身を寄せ合い、真っ直ぐ北を目指す。
嗚呼、あの鳥たちのように飛んでゆけたなら
もしも叶うのならば、今生の空の下であなたに逢いたい。
《はなればなれ》
子猫のように甘やかされたい。
猫撫で声で媚びを売って渡せるものは全部明け渡した。
この心も体も、もうとっくの昔にアイツに盗られてる。
それなのに最近はめっきり構ってくれない、意地悪ばかりだ。
でも時々飴玉を煮詰めたような愛情を魅せてくれる、それが堪らなく意地らしくて、可愛くて、愛おしい。
だから離れられないの、手放し難いの。
知らぬ女の耳元で愛を囁く口を縫い付けて
自分だけに向けられない目を塞いでしまいたい。
バレンタインのチョコを包むような
赤い箱の中で二人っきりで過ごしたいわ。
でもそんな事口が裂けても言えない
私だけのものにならないなんてずっと前から知っている。
でもねダーリン、ワガママで可愛げがないこんな私だけれど、貴方にとびきり優しくされたいの。
スパイシーな恋も素敵だけれど、私は砂糖のように甘い愛が欲しいんです。
子猫のように甘やかして。
《子猫》
この間までの酷暑はすっかりなりを潜め、夜にはシンと冷え込んだ空気が張り詰める。
カラリと部屋の障子を開けて縁側へ出てみれば秋の風が吹き込み体に沁みる、薄い夜着では心許ない。
体を縮こまらせて立っていれば、湯汲みからの帰りであろう同級生と出くわした。
「や、今日はやけに冷え込むねぇ」
「そうだね、夜着一枚じゃあ今夜は寝むれなさそうだ、丹前を出してくるよ」
そう言って彼は自室に戻っていく、それを横目で見送り、自分は床に腰掛ける。
今宵の空にはくり抜かれたような月が昇っている。
明日は実習がある、この様子だと雨の心配はなく秋晴れとなるだろう。
「…冬が来るな」
もうすぐ霜の声がし始めるだろう、そろそろ湯たんぽも準備した方がいいかな?とこれから厳しくなる寒さへ思い馳せる。
長い冬が明け、春が訪れれば私たちはこの学園を離れる。
それまでのほんの短い間、何が起こるのだろう、何を為せるだろうと慮る。
これから先、この戦乱の世を生きていく私たちはこの学園での出来事を忘れることはないだろう、それ程濃く鮮やかに彩られた沢山の記憶(思い出)がある。
その一つ一つを胸に抱いて、生きていくのだ。
だいぶ冷えきってしまった指先を擦りながら重い腰を上げて自室へ向かう。
既に敷かれている布団を見やれば別室の彼が用意してくれたであろう丹前があった。
普段何かとこの職業には向いていないなどと言われている彼だが、こうして気配も足音もなく置いて行った(私が思い耽っていたというのもあるが)彼は既にその作法が身に染みついてしまっているらしい。
有難く用意されていたものを羽織り、布団へ潜り込む。
カタカタと風に揺れる障子を子守唄に目を閉じた。
《秋風》と冬の訪れ
また、会いましょう。
積もる雪が解ける頃に会いましょう。
草花の命が芽吹く頃に会いましょう。
青梅雨が晴れ風薫る頃に会いましょう。
まんまるお月様が顔をのぞかせる頃に会いましょう。
白銀の塵が世界を覆う頃に会いましょう。
季節は繰り返し巡る。
「やぁ、また会いましたね」