七夕の短冊に書いた願いが叶わないように、
流れ星に願いをこめても叶わないように、
星がはただ自然現象の一つというだけだ。
それでもそこに意味を持たせてくれたことに、意義があるのだから。
羊飼いが見上げた星空に、百獣の王の姿を見出してくれたように。
願いを叶えるのは自分の力だ。
それでも少しだけ、ほんの少しだけ、手助けをすることがすることができるなら。
気高い姿を見出して、そこに意味を持たせてくれるなら、それに付随するどんなものも受け止めよう。
瞬く星に、流れる星に意味を持たせよう。
そのためにただ誇らしく星空にあろうと、しし座は瞬いている。
“流れ星に願いを”
「おはよう」には「おはよう」を。
「行ってきます」には「行ってらっしゃい」を。
「こんにちは」には「こんにちは」、「こんばんは」には「こんばんは」。
たとえふてくされていても「ただいま」には「お帰りなさい」を。
それはマナーでもルールでもなく当たり前であると思えるように、そういう家族になっていきたいと笑う貴方が愛しくて。
“ルール”
前髪がうまくいった、晴れ。
スカート丈がかわいい、晴れ。
赤信号ばかりひっかかる、曇り。
通りすがりに美味しそうなスイーツ店発見、晴れ。
走って汗をたくさんかいた、雨。
待ち合わせ場所にいない、曇り。
汗でお化粧が崩れてる、雨。
コンビニの袋を持った彼が現れる、雨。
わたしの分のジュース買ってきてくれてる、雨。
走ったから服が乱れてる、雨。
服もお化粧も髪もなおしたい、雨、雨、大雨。
なのにちょっと笑ってるのがかわいい、晴れ。
手を繋いでくれる、今日の心模様は大嵐になりそう。
“今日の心模様”
「……何してんの?」
「何でもない」
「いや、……止めるって」
「何でもないってば」
「いや、おかしいでしょ」
「あんたには分かんないのよ!」
「分かんないけど、自分では分かってるんだろ?」
「分かってるよ!けど、たえと間違いだったとしても……!」
「姉ちゃん、だから痩せないんだよ」
「だって我慢できないんだもん〜〜〜!!」
「じゃあ、もう夏までに?ダイエット?とか言うの止めなよ……、去年も言ってたのにそうやってポテチ食べてたじゃん」
「あんたはうるさいの〜〜〜!!」
“たとえ間違いだったとしても”
上からぼたぼたと大きめの音がして、身体にその振動が伝わる。
決められた音階をなぞるようであり、
耳障りな雑音のようであり、
すぐ隣にある肩に触れるたび跳ねる心臓のようである。
上を見上げれば傘に当たる雨の雫を確認できるが、見上げれば隣のその人にしか目がいかないだろう。
上から降るぼたぼたと大きな音が、どうか私の心臓の音をかき消してくれていますように。
“雫”