無人

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8/22/2021, 1:05:33 AM

鳥のようにと言ったなら、考えられるのは広い空で飛び回ることだろう。誰にも煩わされぬ自由の形として憧れられる象徴としてあげられる生物。だけれども、私は鳥のようにと聞いた時、鳥籠を連想する。品種改良された鮮やかな鳥になって、歌をうたって、差し出させれた手に甘えて生きる。可愛いだけだと飾り立てられてその真ん中で囀る鳥。その自由さの印象から、閉じ込めることに暗い独占欲を満たす鳥。
 単体で言うならば、私は猛禽が好きだ。捕食者、他を食らう野生で生きる鳥。その強い目に惹かれる。自らの力で生き抜ける鳥、強さというものへの賞賛がある。だが、美しさという点においては鳥籠に入った鳥に軍配が上がるのかもしれない。弱く、愛らしく、この手を離れたら死んでしまうだろうと容易に想像できる鳥。それなのに時たま、これこそが本来の姿だと言わんばかりに籠から飛び出し羽ばたく時がある。もし、このある種の自殺にも似た行為をしているときに窓を開け放したらどうなるのだろうと夢想する時がある。弱くて可哀想な鳥。この楽園を飛び出して、青空の下で自由になっても、きっと鷲や鷹のように誰かを食うなぞできぬだろうに、きっと飢えて死ぬだろうに。鳥籠に閉じ込めておかなければきっと死んでしまう鳥。弱い鳥。だが、その一瞬の足掻きと自由の象徴であるという名残があるからこそ、さらに鳥籠の中にいる鳥を美しく感じるのだろう。
まぁ、ならば私がこの鳥のように美しく生きればと問われたならば、死んでもごめんだと返すけれども。

8/20/2021, 11:55:12 PM

さよならを言う前に、私の心を渡そうか。醜く育ったこの心を、あなたに投げつけてから行ってしまいたい。愛している、信じている。そんな話をさせてくれ。伝えず去っていくには随分と大きすぎる。あなたはそれを受け取るだけ受け取ればいい、そして迷わず捨ててくれ。踏みつけて、再起不能になるまで砕いて、粉々になるまで壊しきって、そしてそれをどうにか私に見せてくれ。私はそれに、歪な笑みを一度浮かべよう。きっととてもたくさん渡しているから、持っているものが随分と少なくなって、私の大部分がそこで終わるだろう。色々と抜け去って、今までの私が戻ってこないようになって、過去の面影がないほどまでに変わったら、やっと私は手の届かなくなるあなたを諦められる。そうに違いないのだろう。

8/20/2021, 4:56:03 AM

今日の空模様は晴れ。青い空が綺麗だった。昨日はそれに薄紫の雲が緩くたなびいていて、白と青と青が混ざる薄紫が不思議な美しさを醸していた。絵画にでもすればとても映えるだろうにとも思ったが、最近の絵には白くない雲と青空の組み合わせはとんと見ない。あの妙な不思議さ、重ねた着物のようなあだっぽさが美しいというのに、最近の人は空に清廉さしか求めていないのだろうか。そういえば、一昨日は低く暗い雲と高い白い雲が浮かんだ空に飛行機が飛んでいた。飛んでいた飛行機が妙に物珍しくなってじっと見つめていたら、それは黒い雲に突っ込んで見えなくなってしまった。真っ暗で低い雲には物凄い風と雷、強い雨が吹いて飛行機を壊してしまうんじゃないかとハラハラして、目が離せなくなっていたが、数十秒をかけて飛行機は何事もなかったかのように出てきた。私はほっとしたが、どうせなら白い雲に突っ込んでいてくれれば、こんなハラハラした、誰かの命が尽きる瞬間を見てしまうかもしれないという焦燥感を覚えなくて済んだだろうにと理不尽な恨みを持った。
だが、今日は晴れだ。ただだだ清廉なだけの大衆の好みそうな晴れだから、私は空に心乱されなくて済むだろう。部屋からでず、曇り窓ごしでしかみていないから、今日は普通の譜面通りのみんなの理想の晴れの日であるに違いない。