ゆかぽんたす

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7/25/2023, 12:35:07 PM

そばにいてね。離れないでね。僕だけを見ていてね。

言い聞かせたのはたった3つだけなのに。
キミはいとも簡単に約束を破った。
それって、どういうことか分かってる?
僕を否定したも同然なんだよ。
こんなに毎日愛を囁いているのに、僕以上にキミを愛せる人間なんて居やしないのに。
どうしてキミはそんな態度をとるの。
何が気に入らないの。
僕にどうしてほしいの。
キミには僕が必要ないとでも思ってるの?
そんなの馬鹿げてる。
僕から離れてキミが幸せになれるだなんてあり得ないんだ。
それでも僕から離れたいというのなら、試してみたっていいよ。
本当にキミには僕が必要ないのか実証してみせてよ。
ただし、1秒でも僕のことを考えたらキミの負けだよ。

その時は。
もう二度と出られないように飛べなくしてやる。

7/24/2023, 1:16:36 PM

「やってしまった……」
どんなに嘆こうが悔やもうが、もう時間は巻き戻せない。
仕事上がり、職場の同僚数人で飲みに行こうかという話になった。今日は金曜日、それも給料日だった。行くしかないでしょと、満場一致で夜の街に繰り出した。時間も代金も気にせず騒ぎに騒いで飲んで食べて笑い転げてたまに寝落ちしそうになって。ふと、時計を見たら日を跨いでることに気付いた。タイミング良く、そろそろ帰るかー、なんて先輩が言い出して、会計済ませて(勢いに任せて一番年上上司が全額払ってくれた。ご馳走様です)、ものの数分でみんな撤収してしまった。良く考えたら私だけが皆と使う路線が違う。でもって終電も皆より早い。慌てて駅まで走ってみたけど全くもって意味なかった。最後の電車は、もう30分も前に行ってしまった。
「あーあ」
タクシーでも拾おうか。そう思ったけどこんな時に限って1台も駅にはいない。みんな考えることは同じ。仕方なく近くのビジネスホテルでも探そうとスマホを取り出すと。ちょうどメールを受信したところだった。
『明日は何時にする。つっても今日か』
道向かいに住む幼馴染からのものだった。明日、ではなく日付的に今日は、夕方にずっと公開を楽しみにしていた映画を一緒に観に行く約束をしていた。私はすぐさま彼に電話をかけた。
「それどころじゃないんだってば!」
『……なんだよ急に』
いきなりかかってきた私からの電話に少し不機嫌な様子だった。けどそんなこと知るか。
「助けて、終電逃した。迎えに来てくれないでしょうか」
『ハァ?なんで俺が』
「あんたしか頼れる人がいないの、お願いします」
お願いしてる側なのに態度がでかいな、って自分でも思ったけど、もうそんなこと気にしてられない。それに、私が頼み倒すと彼は絶対に断れないのを知っている。だから気にせず勢いよくお願いできる。性格悪いな、とちょっとだけ思ったりする。
『ったく。どこにいんだよ』
「やった!ありがとう!今日の映画代は私が出すからさ」
『当然だろうが』
「いやぁ助かった。やっぱり持つべきものは幼馴染様だね。友情ばんざい」
ひと呼吸分の沈黙があった後、彼は今から出る、とだけ言って電話を切った。なんだか、最後だけ元気がなかった気がする。
やっぱり迷惑だよね。常識的に考えて、この時間に迎えに来てくれなんて。キレてもいい話だ。それでも彼は来てくれる。私との、友情のために。
お酒が抜けてないせいからか、いつもより饒舌になっていた自覚があった。けど、彼が電話の向こうでどんな顔をしてるまでかは分からなかった。でも、笑ってなかったと思う。声が沈んでたから。
彼がここに来てくれるまで30分弱ある。とりあえず、コンビニ行ってお茶でも買おうか。アイツの好きな炭酸のジュースも買って待ってよう。これで機嫌、直してくれるかな?

7/24/2023, 2:47:42 AM

今年もヒマワリが咲きました
貴方の大好きだった黄色い太陽みたいな花
あの頃は庭のちょこっとしたスペースだけで育ててたけど
貴方が居なくなってからは
貴方のことを忘れないために
裏庭にもヒマワリ畑を作ってるよ
だからこの季節だけ家の周りは賑やかです
貴方が空から見えるように
ヒマワリも一生懸命空に伸びてくれます
届くといいな

7/23/2023, 4:36:44 AM

私の質問を聞いた途端、彼は馬鹿にしたように笑い出した。
「ちょっと!本気で聞いてんのになんで笑うの」
「だって、そんな、ドラえもんみたいなこと言うから」
タイムマシンがあったらどうする?朝ご飯を2人で食べながらなんとはなしに聞いただけなのに。彼は私の顔を覗き込んできて、そして、声を出して笑った。まだ寝ぼけてんのか、とまで言われて。ばっちり変な奴扱いをされている。でもそんなことでめげたりしない。
「それで、どーなの?行きたいとことか時代とか、ないの?」
「まだそんなこと言ってる」
彼は私の相手を真面目にせず、食べ終わった皿をキッチンへ運び始めた。こんな“もしも”な話を嫌うことくらい分かってる。でも、たまには良いじゃないか。最近毎日のように帰りが遅いから、たまにはこーゆう、息抜きになるような話もいいかなって思っただけなのに。
「過去にも未来にも興味ないかな」
冷めた声で彼が言った。水を出し、2人分の皿を洗い出す。
「過去のキミを見に行っても、俺の知らないキミがいるだけだし。未来を先回りして見たら、これからの俺たちの楽しみが半減しちゃうだろ」
だから今がいいんだよ。今この瞬間が。
私は何も言えなかった。そして、最後にごちそうさまを付け加えて彼は着替えに寝室へ向かおうとする。その後ろ姿に急いで追いつき飛びつく。
「ぐえ、苦しい」
離れろ、って言われたけれど聞こえないフリをしてやった。さっき馬鹿にした仕返しなんだから。

過去を見てもその頃には戻れない。創れるのは未来だけ。でもその未来を、先回りして見に行くくらいなら、何も知らないまま貴方とじっくり創っていきたいよね。
だから、もしもタイムマシンがあったとしても。私たちは使わない。



7/22/2023, 9:59:19 AM

ドイツから数年ぶりに幼馴染みが帰国する。出迎えに行ってあげなさい、と母に言われたので空港に来た。到着時間と出てくるゲートしか聞いてないので、事前にメールで私の服装と電話番号を教えておいた。というか、最後に話したのはいつなんだろう。彼が日本を発った時だから、もうかれこれ3年くらいは経っている。間もなく予定時間。私のほうがちゃんと彼に気づけるのか少し不安も感じていたから忙しなく辺りを見回していた。すると、
「なに挙動不審な動きしてんだよ」
それが私に向けての言葉なのだとすぐには分からなかった。だって目の前には、ものすごいイケメンが立っていたから。
「え、あの」
「久々の再会だというのに、何だそのマヌケ面は」
「……あの、もしかして、ケイゴくん?」
スーツケースをそばに置いて、腕を組んだ幼馴染みは私の問いかけにニッと笑った。聞いてない。私の幼馴染みがこんな、格好良く化けているだなんて。開いた口が塞がらない私を余所に彼はロビーのほうへ歩き出す。慌ててその後をついて行った。こんなにも、彼の身長は大きかったか。ついでに自分と違いすぎる足の長さにも驚きとショックさを覚える。
「ひ、久しぶりだね。元気だった?」
「あぁ」
「なんか、すごい格好良くなっちゃったから全然分かんなかったよ」
「そうかよ」
適当な相槌を返しながら彼は歩みを止めない。こんな感じだったっけ。当時の思い出をまるで思い出せないわけじゃないけれど、彼との距離感がよく分からなかった。戸惑いつつもしきりに話し掛ける。けれどそんな私を鬱陶しく思ったのか、突如彼は足を止めてこちらを振り返る。
「お前は何歳になったんだ?」
「え?えと、来週で18になるよ」
「そうか」
それだけ言って彼は再び歩き出す。歳なんて聞いてきて、何の意味があったのか全く分からない。私は彼の後ろではなく隣を歩くことにする。ただし、足の長さが違いすぎるからやや小走りで。
「あの、暫くはこっちにいるのかな?うちのお母さんが会いたいって言ってたから」
「そうだな。当分向こうには行かないし、お前の家にも顔を出そうと思ってた」
「ていうかなんで急に帰ってきたの?」
私の質問に彼はニヤリと笑った。その顔にドキリとしてしまう。
「知りたいか?」
「え、あ、うん。別に、言いたくないなら――」
「欲しい物が、手に入りそうだからな。正確には、来週以降だが」
「へー、そうなんだ?」
普通に返事をしただけなのに。彼は私の顔をじっと見つめてきた。ヤバい、やっぱり挙動不審になる。こんなに格好良くなってるなんて反則すぎる。
「……ま、俺がどんなに欲しくてもまずは自覚させるところからか」
独り言なんだかそうでないんだか、よく分からないことを呟くと彼はもう前を向いた。私はとりあえず置いてかれまいと必死に着いていくしかなかった。

そしてその言葉の真相は、私が誕生日を迎える日に解明されることになる。
その時の彼の企みとか、私の親の驚きようがとんでもなく凄まじいのは、また別の話。

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