ドイツから数年ぶりに幼馴染みが帰国する。出迎えに行ってあげなさい、と母に言われたので空港に来た。到着時間と出てくるゲートしか聞いてないので、事前にメールで私の服装と電話番号を教えておいた。というか、最後に話したのはいつなんだろう。彼が日本を発った時だから、もうかれこれ3年くらいは経っている。間もなく予定時間。私のほうがちゃんと彼に気づけるのか少し不安も感じていたから忙しなく辺りを見回していた。すると、
「なに挙動不審な動きしてんだよ」
それが私に向けての言葉なのだとすぐには分からなかった。だって目の前には、ものすごいイケメンが立っていたから。
「え、あの」
「久々の再会だというのに、何だそのマヌケ面は」
「……あの、もしかして、ケイゴくん?」
スーツケースをそばに置いて、腕を組んだ幼馴染みは私の問いかけにニッと笑った。聞いてない。私の幼馴染みがこんな、格好良く化けているだなんて。開いた口が塞がらない私を余所に彼はロビーのほうへ歩き出す。慌ててその後をついて行った。こんなにも、彼の身長は大きかったか。ついでに自分と違いすぎる足の長さにも驚きとショックさを覚える。
「ひ、久しぶりだね。元気だった?」
「あぁ」
「なんか、すごい格好良くなっちゃったから全然分かんなかったよ」
「そうかよ」
適当な相槌を返しながら彼は歩みを止めない。こんな感じだったっけ。当時の思い出をまるで思い出せないわけじゃないけれど、彼との距離感がよく分からなかった。戸惑いつつもしきりに話し掛ける。けれどそんな私を鬱陶しく思ったのか、突如彼は足を止めてこちらを振り返る。
「お前は何歳になったんだ?」
「え?えと、来週で18になるよ」
「そうか」
それだけ言って彼は再び歩き出す。歳なんて聞いてきて、何の意味があったのか全く分からない。私は彼の後ろではなく隣を歩くことにする。ただし、足の長さが違いすぎるからやや小走りで。
「あの、暫くはこっちにいるのかな?うちのお母さんが会いたいって言ってたから」
「そうだな。当分向こうには行かないし、お前の家にも顔を出そうと思ってた」
「ていうかなんで急に帰ってきたの?」
私の質問に彼はニヤリと笑った。その顔にドキリとしてしまう。
「知りたいか?」
「え、あ、うん。別に、言いたくないなら――」
「欲しい物が、手に入りそうだからな。正確には、来週以降だが」
「へー、そうなんだ?」
普通に返事をしただけなのに。彼は私の顔をじっと見つめてきた。ヤバい、やっぱり挙動不審になる。こんなに格好良くなってるなんて反則すぎる。
「……ま、俺がどんなに欲しくてもまずは自覚させるところからか」
独り言なんだかそうでないんだか、よく分からないことを呟くと彼はもう前を向いた。私はとりあえず置いてかれまいと必死に着いていくしかなかった。
そしてその言葉の真相は、私が誕生日を迎える日に解明されることになる。
その時の彼の企みとか、私の親の驚きようがとんでもなく凄まじいのは、また別の話。
7/22/2023, 9:59:19 AM