佐藤翼

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10/2/2024, 12:24:55 PM

奇跡が一度も無い人間だっているんだぜ。
彼女は奇跡が大好きだ。
当たった占い、なくし物の再会。
見かけた有名人、発言のバズ。
ささいなことで喜べて幸せですね。
彼女はよく請う。
神様、奇跡をもう一度。
彼女はこうも言う。
あなたと会えたことが奇跡だよ。
手に触れて、抱きしめて、愛をささやく。
腕の力を強める。
俺も奇跡だと思ってたよ。
でもやっぱ、俺には無いんだよ。
君にとって何度もあった奇跡の一人。
つまり、普通の人なんだ。
どうでもいい人なんだ。

題:奇跡をもう一度

10/1/2024, 12:00:53 PM

この先どんな人生でも。
あなたがいたなら、とだけは言わない。
山の奥に夕日が落ちていく。
黒い山の影と赤い雲の輝き。
光に透かした手には浅い皺。
この空ほど私はまぶしいだろうか。
もう人生の斜陽なのか。
それともまだ、斜陽なのか。
叶えたことは少ない。
叶わなかったことならいくつでも。
それでも日は落ちていく。
一番美しい光を放って落ちていく。
太陽は一人で輝ける。
あなたがいなくても、私は幸せになる。
だから、生きていける。

題:たそがれ

9/30/2024, 12:11:34 PM

毎日が失恋です。
あの人のことを話さないで。
知りたくないこと笑って尋ねてる。
どこが好きかなんて知るかよ。
ちょっとそっちに寄せても反応無し。
思いっきり寄せる勇気も無し。
お互い叶わない恋ってことにしよう。
君の恋もいつか毎日の失恋になる。
無意味なことを望んでる。
きっと明日も失恋です。

題:きっと明日も

9/29/2024, 12:47:51 PM

言葉を交わさなくなったのはいつからだったか。
同じ家に住んでいる。
テレビはイヤホンで聴いている。
台所は交互に入る。
物音は知られたくない。
同じ時間に生きたくない。
夜、帰宅し、電気も付けず自室に入る。
リビングは君の支配下だ。
ベットに倒れ込む。
何も音がない。
布団を握りしめ、頬を埋める。
君の声はどんなだったか。
思い出そうとして、幸せだった頃の記憶が蘇る。
記憶の中の君は声を上げて笑っている。
それが余計に辛かった。

題:静寂に包まれた部屋

9/28/2024, 12:41:35 PM

君の薬指に別の指輪がはまっていた。
思わず自分の空の薬指を隠す。
久々に会った君は自然に談笑している。
あの頃と変わらない。
かつて、別れの日。
長い別れを知っていた日。
好きだと言えなかった。
代わりに君は言った。
お互い、いい人を見つけようね。
打ちのめされた、決別の言葉だと思った。
今生の別れだと家でめそめそ泣いた。
長い時を経て、わずかだが顔を合わせる日がある。
心の中だけで問いかける。
君のいい人はまだ、いませんか。
自分では、だめですか。

題:別れ際に

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