揺れる木陰
私には難しい
木陰が揺れる余裕がある季節が早く来ますように
『揺れる木陰』
空が青い。向こう側には中学時代の友人が見える。
あ、手ぇ振ってる。
変わんねぇな、あいつも、俺も。
もうあれから十五年経ったっていうのに。
聞いてくれよ、上司がさ………
(ピピピピ…ピピピピ…ピピピピ…)
…懐かしい夢を見た、日曜、昼の十一時。
昨日何時に寝たんだっけ……こりゃ昨日は寝落ちだな。
また日曜の午前を無駄にした。明日も仕事だっていうのに。
でも、今日はそれでいい。
なんかいい夢を見た気がするから。
『真昼の夢』
公園で日が暮れるまでクローバーを探したのも
私ん家の庭で線香花火をしたのも
駅前のイルミ行ったのも
毎日一緒に下校したのも
二人だけの思い出
修学旅行の三日目はオールで迎えたのも
学校サボってイオン遊びに行ったのも
小テストしぬほどカンニングしまくったのも
あんたがサッカー部の先輩のことずっと好きだったのも
二人だけの秘密
私があんたのことずっと好きなのは
私だけの秘密
結婚おめでとう
あんたの親友兼、証人1より
『二人だけの。』
あぁ、また地元に帰ってきてしまった。
地元に帰ると思い出してしまう人がいる。
太陽みたいな人だった。明るく、あつく、燃えるような人だった。全てを照らす人だった。
私も、それに、照らされた。
中2、8月の始め、蒸し暑さのピーク。クラス数人で行った地元の花火大会。たまたま隣で花火を見たのが彼だった。
花火よりも彼を見ていたことを、覚えている。
中2、9月の終わり、そろそろ次の季節が顔を出す頃。担任から告げられる、突然の引っ越し。親の都合というオブラートで隠し通された理由は、誰も寄せ付けなかった。これも太陽みたいであった。
無論、私も何も聞くことが出来なかった。
けれども彼は最後まで笑顔だった。顔が曇ることなど無かった。
最後の日は晴れていて、クラスみんなでお別れ会をした、ような気がする。
この日を私は覚えていない。夏バテなのか、恋心に酔っていたのか、私には分からない。
彼のいなくなった次の日が雨で、教室の蛍光灯が切れたことは覚えている。
あぁ、あの花火大会でもう一度出会えたらいいのに。
『夏』