木枯らし(こがらし)とは、晩秋 から初冬にかけて吹く、木の葉を吹き落とすほど冷たい北寄りの強風で、冬型の気圧配置を示す現象である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふぅん。そうなんだ。
私のおみくじをぶっ飛ばしたのは木枯らしってやつかよ。
そうかそうか、私の、実に9年ぶりの、大吉のおみくじを凧のごとく空へと舞い上がらせたのはこいつか。
くっそ、まだ何吉かどうか確認しただけじゃねぇかよ。
待人とか結婚とか見させてくれ〜〜(泣)
なんて言ってる間もなく、1時間後にここの最寄りを出る電車に乗って午後の業務に取り掛からなければならない。
テレビ局で馬車馬のように働く私にとって、年末年始なんてあってないようなもの、さっきのが今年の初詣でしたよ。あ、馬車馬って別に午年と掛けてるわけじゃないですよ!!なんて言う相手も9年前に1人で上京して以来いない。そう、友達も家族も地元に置いてきた挙句に彼氏もろくに出来ない哀れな女とは私のことです。
あ~あ、もうホームまで行くかぁ。仕事だるいな、出会いないくせに遠出多いし。
なんだかんだでホームに着いた途端、またびゅう、と強く風が吹いた。
なんだよ今日、風吹きすぎだろ。
と思ったのもつかの間、ヒラっと真横から何かが飛んできた。
ちらっと横を見ると、馬鹿みたいなイケメンが地面にプリントを散らばらせて大慌てしていた。
あ、これは午年と掛けてないです、天然のダジャレです。
なんて言ってる間にもこの人は慌てている。大丈夫なんか、ほんま。
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ!大丈夫です!!僕のミスでプリント散らばってるだけなんで!僕が1人でやります!プリント拾っていただいてありがとうございます!」
「ええ、いやいや手伝いますよ、ほら電車来るまでまだ時間ありますし、」
「いや、あのほんとに、、あぁ、じゃあ、その、手伝ってもらってもいいですかね、お言葉に甘えちゃうんですけど、、」
「いいですよ笑、困った時はお互い様ですからね」
「これで全部ですかね〜」
「はい!すみませんでした、お手を煩わせてしまって、」
「いえいえ!気にしないでください、お仕事がんばってくださいね!」
「はい、ありがとうございました!
…あの、一目惚れしたので連絡先聞いてもいいですか?」
………ふぅん、やるやん、木枯らし。
『木枯らし』
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーおかあさん、きょうのごはんなあに?
ー今日はハンバーグよ、あなたのだぁいすきな。
ーうわぁい!やったぁ!わたしね、おかあさんのごはんぜぇんぶすきなんだけどね、ハンバーグがね、いっちばんだいすき!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
お惣菜が乗ったオレンジに光るターンテーブルの前でふと思い出す
人工的に温められたご飯で夜を終えるのはもう何日目になるだろうか
自炊とは簡単なものじゃないな、と母が証明してくれる
私もいつか、誰かのぬくもりになれるように
「ぬくもりの記憶」
努力って損なんですよ
どれだけペンを握り続けても
どれだけ地面を蹴り続けようと
どれだけ自分とにらめっこしようと
どの世界でも努力は一番になれないんですよ
天才ってなんにでもなれるんですよ
なにもしなくても頭が良くて
なにもしなくても足が速くて
なにもしなくても見た目が整っていて
どの世界でも生まれ持った物が強い人が一番なんですよ
悔しいなぁ、努力って損だなぁって思うでしょう?
ですが、努力家のみなさん、諦めないでくださいね
その灯火を燃やし続けてくださいね
いつか私が1番になって努力の存在証明をするので
「消えない灯り」
なんでもない土曜日の午後。
俺はテレビの前にいる。
某音楽特番で歌っているのはスーパーアイドル、またの名を俺の元カノという。
大型歌番組とだけあってグループの歌うまを集めたシャッフルチームで平成の名曲を歌っている。
ーーーーーーーーーーーーーーー
恐いくらい覚えているの
あなたの匂いやしぐさや全てを
おかしいでしょう?そう言って笑ってよ
別れているのにあなたの事ばかり
ーーーーーーーーーーーーーーー
テレビで歌う君と目が合う。
赤い唇を動かして歌っている。
カラオケで歌っていた君が重なる。
また忘れられなくなる。
「紅の記憶」
「あのさ、散歩いかない?」
23時、僕の部屋でそんな事を言い出す君。
「へぇ?今何時かわかってる?」
「え、わかってるよさすがに!」
「なんで行きたいのよ笑笑」
「え〜、なんかね、甘いの食べたくなったの」
「笑笑、それは緊急だわ、行こ」
「やった〜!」
寒がりなくせに寒い夜に外に出ようとする理由、僕には分かるよ。
寂しがりやでかわいい君の横顔を見つめた時、月にかかっていた雲が晴れた。
月明かりで少し君の顔に影が生まれる。
君がこの世界の陰りを知らずに、生きていけますように。
「君を照らす月」