刹那
教室の窓から、外を眺めていた。
毎日同じことの繰り返し。
授業だってもう聞き飽きて、あくびを噛み殺す。
教室の窓から、そとを眺めていた。
毎日同じことの繰り返し、繰り返し。
外は相変わらず曇天で、世界は灰色だった。
教室のまどから、そとを眺めていた。
毎日同じことの繰り返し、繰り返し、繰り返し。
そんな刹那、目が合った。
君は、ひどく綺麗な顔をしていた。
僕は多分、それを見なければ、窓から目を逸らせば、もう同じ日を繰り返すこともないのだろう。
それでも。
きょうしつのまどから、そとをながめていた。
毎日同じことの繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り
無色の世界
ある朝。目覚めると世界が無色になっていた。
ベッドから見渡すいつものアトリエ部屋が、それだけで全く変わってしまったように見えたのだ。
……とりあえず、テレビをつけてみる。白黒だ。…昔って、こんな感じがデフォルトだったのかな。
ニュースだって、特に変わった様子がない。
つまり、こんな状態なのは僕だけのようだ。
疲れ?目の病気?そいつは仕事柄致命傷だな、などと思考を巡らせるも、何もかもが億劫に思えてきた。今日はせっかくの休みなのに。
どうせお金も、やることもないし、代わりに日課の散歩でもしようと外に出てみた。
空は味気ないベタ塗りの黒に、白い雲が少しだけ。
……センスがないな。まるで夜みたい。
いつもカラフルで綺麗な花壇も、今の季節にピッタリな桜吹雪も、何を見ても無色。つまらない。ご飯も味が薄い。感覚も全部、ぜんぶ、平坦になっていく。
……色のない世界は、僕には結構つらいみたいだ。
僕は、綺麗な物、綺麗な色が好きだった。街を散歩して、綺麗だと思った、面白いと思ったものを芸術にするのが、何よりもすきだったのに……そう考えると、不意に涙が出てきそうになる。
堪えようとして、ふと、自分の手を見た。
なぜか透けている。
無色ではなく、透明……の方が近い。
水につけると、やっぱり空洞のように視える。
……それがすごく、綺麗で。
どれがどの色かなんて、まるで分からない絵の具で。
ただひたすら、キャンバスを塗りつぶした。
沈む夕日
夕暮れが世界を真っ赤に染める。
空も、標識も、電線もゆらゆら揺れて、視界がやけに禍々しい。
カラスが同じ方向に二、三羽飛んでいた。葬式でもあるのかなあ、とか考えながら、足元の小石を蹴っ飛ばす。
からからと側溝の穴に吸い込まれていくソレをぼうっと見ていたら、突然鈍い痛みが走った。
……電柱に頭をぶつけてしまったらしい。
見られていないか気になって、なんとなく周りを見渡す。人はおろか、車すら走っていない。
……まだ痛い。視界がぐにゃぐにゃした。干からびたミミズがとぐろを巻いている。
ぶつけた所を押さえ、また俯きながら歩きだす。見慣れた世界は段々暗くなっていく。アスファルトには、消えかかった止まれの文字。十字路だ。
……帰り道って、どっちだっけ?
それでいい
引き出しを開けると、あなたに貰った物が出てくる。
画面をスクロールすると、あなたが流れてくる。
アルバムを見ると、あなたの写真で埋め尽くされる。
気がつけばここ数年で、あなたの存在というものは、ぼくに深く、深く、ふかく根を張っていった。
それは、あまりに想定外のことだった。
ぼくとあなたの関係は、相性が良いワケではない。
…かといってビジネスライクかといえばそうでもないし、家族として、友達として、恋愛的に好き…といった、よくある愛をかたどったモノでもないのだ。
お互い、他に大事なものがある。他に想う人がいる。
いざって時はたぶん、ぼくらは……
……でも、あなたが居なくなったその時、ぼくは引き出しの中をどうすればいいんだろう。
アルバムも、写真も、どう片付ければいいのか……
ああ、考えてもしょうがないけれど、ただただそんな事で思考を巡らせ続けちゃったりするんだ。
もしかしたら、これも一つの愛なのかもしれない。
この気持ちをなんていうのか、なんて知らないけど。
今はまだ、それでいい。
二人ぼっち
雨音が響く校舎。
ここには、貴方とわたし。
…たった二人だけ。
「…雨、止まないね」
ただ窓の外を眺める貴方の横顔が、とても綺麗で。