無色の世界
ある朝。目覚めると世界が無色になっていた。
ベッドから見渡すいつものアトリエ部屋が、それだけで全く変わってしまったように見えたのだ。
……とりあえず、テレビをつけてみる。白黒だ。…昔って、こんな感じがデフォルトだったのかな。
ニュースだって、特に変わった様子がない。
つまり、こんな状態なのは僕だけのようだ。
疲れ?目の病気?そいつは仕事柄致命傷だな、などと思考を巡らせるも、何もかもが億劫に思えてきた。今日はせっかくの休みなのに。
どうせお金も、やることもないし、代わりに日課の散歩でもしようと外に出てみた。
空は味気ないベタ塗りの黒に、白い雲が少しだけ。
……センスがないな。まるで夜みたい。
いつもカラフルで綺麗な花壇も、今の季節にピッタリな桜吹雪も、何を見ても無色。つまらない。ご飯も味が薄い。感覚も全部、ぜんぶ、平坦になっていく。
……色のない世界は、僕には結構つらいみたいだ。
僕は、綺麗な物、綺麗な色が好きだった。街を散歩して、綺麗だと思った、面白いと思ったものを芸術にするのが、何よりもすきだったのに……そう考えると、不意に涙が出てきそうになる。
堪えようとして、ふと、自分の手を見た。
なぜか透けている。
無色ではなく、透明……の方が近い。
水につけると、やっぱり空洞のように視える。
……それがすごく、綺麗で。
どれがどの色かなんて、まるで分からない絵の具で。
ただひたすら、キャンバスを塗りつぶした。
4/18/2026, 5:14:58 PM