鳩鳥

Open App
11/15/2023, 12:01:30 PM

あなたが差し伸べてくれた手に顎を載せる
あなたが顎を擽ってくれる度に私の胸はポカポカして
とても心地よくなるの。
あなたが私に構ってくれない時はとてもとても寂しくて
足や身体に頬擦りをする、そうすればあなたは
仕方ないな。
なんて顔をしながら私の頭や頬を撫でてくれるのだ。
優しくて美しい私のご主人様。
あなたは少し頑張り屋さんみたいで、たまに凄く疲れて帰ってくる
その度に私は心配してしまうのだけれど、
偶にしつこすぎてあなたを怒らせてしまう。
ごめんなさい。 けれどあなたが心配なのよ。

けどあなたは怒っても、暫くしたらごめんねと言いながら私を抱き締めてくれる。
あなたの体温はポカポカしててとても心地が良いの。
あなたの匂いはいつも違う匂いがするけれど、それでも私はあなたが大好きなのよ。
他の人の所に行っても許してしまう。
私はあなたの帰る場所なのだから。


あなたが怒って私に着けた傷も
愛してくれている時の痕も全部が全部愛おしいの。
甘い声で心地の良い声で私の事を「子猫」と呼ぶあなた。
あなたが私に子猫を望むのなら、私は一生懸命あなたの子猫になるわ。
それが私の生きる全てなのだから。

すきよ、だいすき。あいしてる。

テレビをつけたまま寝てしまったあなたに囁く。
視界の端に映る行方不明のニュースなんてもう私には必要ない。
外の世界なんて必要ない。

私は子猫 あなたの居るここが私の世界。

にゃーん。 ………なんてね。

9/4/2022, 10:58:12 AM

それが私の心を掴むのは一瞬でした。
それを見た私はときめきを覚え、虜となりました。
何をするにもそれが頭から離れず、日常を惚けて過ごすようになりました。
恋とはまた違う何かが私の心を支配し、私を別の物へと作り替えていきます。
しまいには夢にまで出てくるほど私はそれに取り憑かれてしまったのです。
母や父、友人などには心配され、何処か具合でも悪いのかと病院へと連れて行かれたこともあります。
けれど私は何処も具合が悪くなく、お医者様に何故こうなってるのかを説明する能力もありませんでした。
いえ、説明したところで理解されないと何処かでわかっていたからなのでしょうね。

数ヶ月経ってもその調子の私を見た友人は私を色んな所へ連れて出掛けました。
きっと私を楽しませようとしてくれたのでしょうね。
私はその友人の行為を有難く思いそして、愛おしく思いました。
私をこんなにも心配してくれる人がいたのだと。

だからつい、そう魔が差したのです。
日が沈みかけた夕暮れ。逢魔が時。
友人は私を夜景の見える綺麗な高台へと連れてきてくれました。
友人が私に背を向け 何かを言いかけた時
私は友人の背を力いっぱい押しました
友人の身体は思ったよりも軽く、簡単に高台の柵を乗り越え下へと落ちて行きます。
落ちていく途中友人は、信じられないものを見た驚愕とその先に待っている死への絶望へ顔を歪め、
地へと落ちて行きました。

私の胸はドクドクと波打ち 身体の力が抜け地へと伏してしまいました。
身体は震え視界も歪みます。
やってしまった、なんて事をと後悔しているはずなのに私の口は笑みを浮かべていました。

私が見たそれは人が死ぬ瞬間だったのです
あれはそう、とある日の夕方 あぜ道を歩いていた時 遠くで女性の叫び声が聞こえたのです。
何があったのかと駆け覗き見ると女性が女性に襲われておりました。
痴情のもつれなのでしょうか、男の事でいい争っていました。
私はその光景をどうする事も出来ずただ眺めていました
そして暫くしたその時 女性がもう1人の女性の首を締めたのです
締められている女性の顔は怒りから恐怖に染まり 顔を涙で汚します。
そこで止めるべきだったのでしょうが、私の足は動かずただそれを見ておりました。
その結果女性は死亡し 女性を殺した女は焦ったようにその場を去りました。
私は見つからないように家へと帰りましたがその日からその女性の死に様の事しか考えられなかったのです。

人の死ぬ瞬間はなんて美しいのだろう。
まさに取り憑かれたという表現が正しいと感じました。
数刻経ったあと私は友人が落ちている先に行き、友人が息絶えているのを確認して友人を山に埋めました。
まるで宝物を隠すように大切に隠し
その後、友人が知らない女に殺されたと嘘をつきました
私はあのあぜ道で女性を殺した女に罪を擦り付けました。
警察や両親たちはあっさりとそれを信じ その女を捕まえました。
女はしきりに知らないと叫んでおりましたが、人を1人殺めたことは事実ですので誰も女を信じませんでしたよ。

え?何故この話をあなたにしたかって?
だってあなた美しくなりたいのでしょう?誰よりも目立ちたいのでしょう?
だから、私があなたをきらめかせてあげようと思いまして。
良かったですね、あなたはこれからいっぱい注目されますよ。
あぁ、嬉しいわあなたが1番美しい瞬間を見れるのですもの。
さぁ、是非このナイフで腹を刺して御覧なさい。
鏡は用意してあげますわ。 写真もいります?


人は死ぬ瞬間1番きらめくのですから。


ね?




9/3/2022, 10:08:09 AM

私が彼女に恋をした理由ですか…
そうですね、
私のハンカチを拾ってくれたから。でしょうか
そんな些細な事で、と思うでしょう?
けれど私にはその些細なことでも、その時はとても大きな重要な事でしたの。
彼女のその些細な優しさが私を恋する乙女にしてくれたのですもの。

9/2/2022, 11:01:11 AM

それまでの人生はとてもつまらないものでした。
家庭環境は良好で、交友関係も良好。
何一つ不自由のない人生とはこういう事を言うのでしょうね。
なのに私の心はいつも曇っておりました。
何をするにも晴れることはなく 何に対しても楽しむという事が出来ずにいました。
私のこれは所詮我儘でしかないのでしょう。
けれど、いつか私の心を晴らしてくれるような そんな人を探しておりました。
私が曇った心を持ち続け幾年かたった時の事です
大学時代の友人から紹介したい人がいると言われ、断る理由もなかった私は、試しに会ってみることにしたのです。
約束の場所へ向かうとそこには、大学時代より少し大人びた友人と、美しい人がおりました。
陶器のような肌と言うのでしょうか。
白く艶のある肌に、触れると柔そうな髪、長い睫毛の奥から覗く、黒く澄んだ宝石を思わせる煌めきを持つ瞳。
人を見て息を飲むのは初めてでした。
周りの通行人も彼女に目を奪われております。
その位美しい人だったのです。
友人曰く 私の話をしたらお友達になりたいと彼女から申し出たそうです。
その話をしている途中、彼女は恥じらうように目線をさ迷わせ微笑みます。その姿はなんと愛らしいことか。
はじめて感じる胸の高鳴りに私は二つ返事で彼女と友人になりました。

最初は普通に友人関係を続けておりました。
彼女の興味のある映画、彼女が好きな画家の絵画展、彼女の好きなカフェ。
色んな所に足を運びました。
行く先々で彼女が見せる色んな表情にきっと私は恋をしていたのでしょう。
友人関係が続いていたある日、彼女と街を歩いていると見知らぬ男が彼女に声をかけました。
男は酷く激昂しておりました。
隣にいる私がまるで見えていないかのように彼女に掴みかかります。
私が止めるのも聞かず遂に男は彼女の頬へ拳をふりました。
その時の光景はまるでスローモーションかのようにゆっくりとそしてハッキリと見え。
私はその時の彼女の表情をよく覚えています。
彼女は男に殴られ、笑っていたのです。
今まで見た愛らしい笑みではなく。妖艶であやしいけれど何処か嬉しそうな笑みでした。
男は彼女を殴った事に満足したのが足早に去っていきました。
その場に居るのは私と彼女の2人だけとなりました。
大丈夫か?と聞くと彼女は震えた声で大丈夫と言います。
私はそれが恐怖や悲しみからではなく悦びによるものだと理解しました。理解してしまいました。
そして、この時の私は何を思ったのか彼女の頬を叩きました。
皮膚と皮膚がぶつかる音がその場に響き そして静寂が訪れる。
彼女は目を丸くし数秒瞬きをして此方を見遣りそして。
あろう事か私にも”あの”笑みを向けてきたのです。
その時でしょうか。私の心にあかりが灯りました。
それは太陽のように暖かくもなければ真っ赤に燃える炎のように熱くもありません。
暗い部屋に一つだけ灯る小さな灯火のような物が私の心に灯りました。
この小さな火が心の灯火というのでしょうね。

その日から私と彼女の関係は崩れ果ててしまいました。
崩れ果てるなんて言い方は良くないのでしょうか。
ならば、180℃変わった。という言い方にします。
私は加虐者、彼女は被虐者となり
度々私は彼女に手を上げるようになりました。
手を上げるたびに彼女は今まで見た事ないような美しい笑みを浮かべるのです。
私の純粋だったであろう恋は汚れきってしまいました。
けれど、何処か嬉しく。
これ迄の人生で1番充実していたであろう日々でした。
その関係が幾年続いた日。
彼女に首を絞めて欲しいと懇願されました。
その時はまだ、少しばかりの道徳心があったのでしょうね、私は断りましたが。彼女がずっと懇願するのです。
恋しい彼女の頼みでも、あまりにも懇願されるので。
幾分しつこくなった私は何かが切れ彼女の首を絞めていました。
気付いた時には彼女の意識はなく、そこに居るのは美しい妖艶な笑みを携えた肉の塊でした。
あァ。彼女はもう居ないのだと理解した私は警察に連絡し、今に至る訳です。

……え? 反省をしていないのかって?

嫌ですね、していますよ。殺してしまうつもりはなかったのですから。
あぁ、けど死んだ事に感謝もしております。

彼女の美しいあの笑みを最期に見たのも最後にしたのも私なのですから。
あぁ、今あの笑みを思い出しても後悔より悦びが胸を支配するのです。


「私のこの心の灯火は死ぬ迄ずっと消えないのでしょうね。」

それはきっと素敵な事だと思いません?
思いませんか、残念です…

9/1/2022, 10:15:12 AM

LINE特有の通知音が響いた。
画面を見ると君からで 胸が高鳴り開いてしまう

今なにしてた? とか 暇だよ〜 とかそんな
他愛もないなんてことの無い会話でも、私の胸の鼓動は煩くなる
そんな会話を暫く続けていた時だ急に君から返信が来なくなって
寝たのかな?と思った数分後 また通知が届いた

[好きな人っている?]

息を飲んでしまう。 これは、どう言う意味で送ってきたのだろう。
なんで? どうして? とも送る雰囲気じゃなくて、
数分の既読の後私はこう送った。

[君が好き]

送ってしまった送ってしまった。
文字で打つのは簡単だけど、送るのに凄く凄く緊張してまった。
送ったまま画面を眺めていると私の返事に既読がついた
そのまま返信が来るのを待ってればいいのに私は画面を消してしまう。
あぁ、怖い、怖い、ドキドキする。
先程より大きく高鳴る心臓 高鳴りすぎて胸が痛い。
また、LINEの通知音が響く。
LINEは開かず通知だけ横目で見ると

[僕も君が好き]

と文字が見えた。 あぁ、どうしようなんて返そう。
このまま気付かないふりして寝てしまおうかなんて、その現実から逃げるような事を考えてしまう。
頬が熱い。 明日君にどんな顔をして会えばいいのだろう。
君からの返事を返す言葉も思いつけない。
あぁ、今日はもうLINEは開けないかもしれない。



Next