あじさい
「どうしたの?急に」
「いや、なんでも、ただ青い紫陽花きれいだなーって思って見てるだけ………」
そう、ただ見てるだけ………
別にあなたへの疑いなんかじゃない……
でも、それでも、あなたからはそんな気がする。
「ほら、やっぱり。」
あなたの部屋には、あなたも私も、使ったことのない濃い色のリップ。
どこからでもかすかに匂う甘い香水。
その瞬間決定的になったそれ。私は冷淡に対応した。元々少なかった荷物をまとめ、家で育てていた青い紫陽花と手紙をあの人の家の机において帰った。
「さよなら。」
青い紫陽花の花言葉→「移り気」「浮気」「冷淡」「無情」
やりたいこと
「チュン、チュン」
今日もいつもと変わらない鳥の鳴き声で目が覚める。ペットボトルの水で口をゆすぎ、顔を洗う。
そうして目が覚めたらカーテンを開ける。
目が覚めていても突然の太陽の光には勝てることはなく目を細める。「まぶしっ」そう言いながらも、毎日同じことをしている。いわば日課だ。
朝起きてから服を着るまでのルーティンは毎日一緒。違うところといえば、毎日服が変わる。
高級ブランドの日もあれば、プチプラの日もある。すべては気分だ。気分で決まることはファッションだけでなく、今日1日することも決まる。
今日することが決まると足取り軽く友達の家に突撃をしにいく。これもまた日課だ。
「よっ!今日することが決まった!」
「ふぁぁぁ、なに?」
友達はまだ寝起きらしく大きく欠伸をしていた。
「ずばり!…………寝る!」
「あっそう。じゃあ、おやすみ」
「ちょ、まてまてまて。冗談だよ。」
「えっ、なんだよ……まじかと思ったじゃん。」
「そんなわけないじゃん!」
「はいはい、じゃあ本当は何ですか?」
「よくぞ聞いてくださいました。すばり………決まっていない!」
「なんだよ、てめぇ、しばくぞ。」
「いや、ごめんってたまには2人で考えてようかなって……」
「あー、なるほどね。」
さぁ、今日はどんなやりたいことをしようか。
2人しかいないこの広い世界で……。
fin
世界の終わりに君と
「ねぇ、世界が終わる日なにして過ごしたい?」
「なに、急に」
「よくあるじゃん!あと数時間で世界が終わるなら 何しますかー的な?」
「まぁ、あるけど、」
「あるよね!だから何がしたい?」
「あるけど、それからそこまでとんでいくのは意味 が分からん」
「まぁまぁまぁ、そんなケチなことは言わずに…」
「じゃあ、いつも通り過ごしていたい。」
「えっ!もっと何かないの?!」
「なんかー……贅沢したい!とか学校サボりたい!
とか…ない?」
「ないよ。ただいつも通り過ごしていたい。」
「ちぇっ、つまんないの、」
そう、ただいつも通り、貴女と喋りながら過ごせたら…ただ、それだけを望む。
出来ることなら、この世界が終わる終期まで、貴女と喋っていたい。
貴女といるこの時間が宝物だから…
「ねぇ、なんで突っ立ってんの?」
「はやくしないと置いていくよ!」
「ちょっと待って、すぐ行く!」
やっぱり、貴女は私の太陽だ……
バックを背負って、セーラー服を着ている2人組。
1人は楽しいそうに喋ってて、1人は分かりにくいがきっと嬉しそうに相づちをうっている。
そんな2人は夕陽に背を向けて歩いていった……。
fin
失恋
高校生の僕はいわば陽キャだ。
正確に言えば高校生デビューをした陽キャだ。
始めはどうなるかとことかとひやひやしていたが、高一の秋になった今ではそんなことは少しも思わなくなった。
そんな高校生デビューした僕にも好きな人ができた。僕は自分の良いところをさりげなくアピールしたくて、とにかく人あたりの良い優しい人なった。
おかげで雑務を任されるようになってしまったが仕方がない。僕も好きでこれをやっている訳ではないのだから……。
そうして過ごしているうちに一学期が終わりそうな季節になっていた。
そして、修了式の今日、あの人に告白しようと思う。僕は今まで、人当たりの良い優しい人を始めとし、さまざまな仮面を被ってきた。すべてはあの人と付き合うため。
正直とても苦しいこともあった。それでもがんばれた。それで、彼女の彼氏になれる可能性が上がるのならば………。
「好きです。付き合って下さい。」
王道のセリフを放課後、体育館裏で言った。
「ごめんなさい。今の君とは付き合いたくない。」
あぁ、呆気なく終わってしまった一年間の恋…
「そう、ですよね。高校デビューした僕なんてまだあなたには相応しくないですよ…ね、」
徐々に自分で言ってることが苦しくなって、語尾が濁る。
さっさとこの場から立ち去りたくて、早足に言った。「返事を返してくれただけでも、嬉しいです。」「ありがとうございました。」
「あっ、ちょっとまって。」
「私は仮面を被った君が付き合えないの……。」
「だから、仮面を全部外せた時、まだ好きでいてくれたら、告白しにきてくれないか…な?」
えっ、まさかの言葉に頭が真っ白になるが、すぐに嬉しさの色にそまる。
「はい!絶対行きます。」「待っててください。」
まさか、好いてもらおうと被ったものが逆な結果をうむなんて…やっぱり、自分らしくいたほうがいいよね。
fin
梅雨
「今日から、梅雨のシーズンとなるでしょう」
テレビから聞こえてくるその言葉に僕はテンションが上がった。「やったー!梅雨だ!」
僕は雨が好き。だって、雨の日に外に出ると雨が大合唱してるから。晴れは人がいっぱいいてそれも、それで大合唱だけど、なんだか居心地が悪い。
でも、雨の日には人も少ない。最高だ。
みんなは梅雨が嫌いらしいけど、僕にはなぜ嫌いなのか分からない。
今日もいつもの長靴を履いて、傘を持って、外に出る。「わぁ」いつもより、多い雨に僕は感動する。
あちらこちらから止むことなく音が聞こえてきて、大合唱より大大大合唱のほうが合ってるぐらいだ。
僕は、傘をさして、道路に出る。傘が水をはじいて音が出る。それもまた、楽しい!自分が下にいるから、まさに特等席で、大合唱を聞く。
今度は、長靴で歩く。すると、地面の水が「ピチャピチャ」鳴る。大袈裟に歩くともっと大きな音が鳴る。水溜まりに入ると、1番おおきな音がする。
これで、僕も大大大合唱の仲間入りだ。
普段友達が苦手だから、この友達はとても大切となる。だから僕は雨が好き。
fin