私は透明人間だ。
どこにも居場所がなくて、幽霊のようだから。
家でも透明。アラームで否応なしに起こされて誰も一言も発さずに出される食事を口に押し込むだけ。
学校でも透明。肩が当たってようやく発せられる
あ、ごめん
他の言葉が私に向けられることは無かった。
外でも透明。夜中家を抜け出して公園を歩く。
夜風が心になびいた。
店の店員でさえ私と目を合わせなかった。
店で買った唯一の好物の包装を剥がす。
口に入れる。
あまり味がしなかった。
気持ち悪くて吐き出した。
嗚咽が漏れる。
吐いて泣いて泣いて泣いて。
吐いてもあまり食べていないので胃液だけが戻される。
泣いて、泣いて泣いて泣いて、気づく。
涙も、透明だ。
それに気づきぼーっとしずくを眺める。
...生きてるんだ。
......私って生きてる。
めいっぱいに涙を浮かべているのに視界を邪魔することは無い。目の前にある街灯が輝いているのが見える。
透明はその先にある光すら映し出す。
もしそれが透明でないのなら、その先に光があるかも分からず抱え込む。
きっと私は、光の先に立てば見つけてもらえる。
誰にもない、光を映し出せる唯一無二になれる。
いつか、その光を私のものにできたなら。
透明人間は決意した。
誰にも真似出来ないほど幸せになってやると。
そして精一杯、透明を幸せで満たすと。
例え貴方が自分はからっぽだと感じても、
なにもないがあったとしても。
きっとたくさんの幸福で満たせる。
透明さえ、生きてる証なのだから。
「...大丈夫。やり遂げてみせるよ。」
夢は睡眠が浅い証だという。
別に信じてはいない。
ここ最近は見ていないのでしっかり寝れてるんだなー、というふわっとした感覚でしかない。
子供の頃によく見てたな。
今となっては気絶するように寝ている限界社畜の仲間入りを果たしている。
だから当然、夢なんて見ない。
夢といえば、色んなものになれた。
なんだっけ。
夢を見たとて、何割だったかな。結構な確率で目を覚ますと忘れてしまうそうだ。
あんなに頭から離れなかったのに。
今となっては雰囲気くらいしか思い出せない。
思い描いた将来のゆめだって、瞼の裏で巡る夢だって。
夢なら、
大怪盗になって世界を駆け回ったことだって、黒に取り残されたことだって、ゲームの中に入ったことだってあるんだ。
大人になった今、昔の''ゆめ''を追ったって誰も咎めない。
昔は不可能だったことだってできる。
人生あと1回くらい、全力で何かをしてみてもいいんじゃないか。
それこそ、''ゆめ''を現実にしたっていい。
あの日描いた夢のつづきをもういちど、
はじめようか。
...もしその先に、どんな未来(まつろ)が待っていたとしても。
アイツらが死んでから数日。
あんな所から奇跡的に帰還した自分はひとり誰もいない家を飛び出し、夜空を眺めている。
あの時、もし少しでも勇気を出せば未来はこうではなかったのではないか。
誰かは死なずに済んだのではないか。
...あんかことになんか巻き込まれなければ、みんな。
それは突然だった。
大学の卒業祝いに旅行でバスを貸し切っているとき、山の中、ガードレールだけを頼りに運行されているとき。
急に車体が傾いて、一回転でもしたんじゃないかな。
体がふわっとした感覚に襲われたあと、強い衝撃とともに、横向きになったバスが山を滑り落ちたような感じ。
あくまで予想なのだが。
目を覚ますと、山の中にいた。
なんだか酷い匂いがする。ふっとあたりを見回してみる。木、木、木。森だ。そりゃそうか。
「おーい!お前ら起きろー」誰かの声が聞こえる。
あ、もう起きてる奴がいるのか。と目を反対方向へ向ける。もう既に何人かは起きていて、他の人を起こそうと体を揺らしたり 軽くパニックに陥っていたり、とにかく慌ててた。自分も友達を起こそうと人の多い方へ足を進める。少し歩いて友達がいないか見回すと、いつも話すアイツの姿が見えた。少し気が楽になり、小走りになる。
近づく。
...?
さらに近づいてみる。
...。
その状態の異様さに気づく。
「...生きてるよな?」
心臓がうるさい。気絶したままのコイツはなんて表情をしているんだ。まるで、生き物では無いナニカに襲われた...。...なんて考えるのは馬鹿な話だ。さっさと確かめればよいものを、なにを突っ立っているんだ。
しばらく、手を胸にあててみる。
10秒。
心臓は動かない。
20秒。
心臓は動かない。
30秒。
心臓は動かない。
...
1分。
心臓は...
まさか。
嘘だ。
だって、だってだってだって
あいつは、あいつはさっきまでいきて、はなしてて、
それで、それでッ...!
はっ、はぁっ、はぁ、はッ...
いきを整える。
嘘だといってくれ。
あんなに元気だったじゃないか。
みんなを困らせるくらいはしゃいでたじゃないか。
「 ーい! りあえず集 れー」
声が聞こえる。みんな向かっている、向かおうか。
これからどーする〜?
これ、生きれんの?そーじゃなかったらウケるw
そーいやさっき死人出たらしいよ
俺焚き火やりたいわ
じゃあ焼き鳥食いたい
もー!真面目に考えなよw
一軍の奴らで会話が繰り広げられていく。
早く決めて欲しいと思ったのは俺だけじゃないだろう。
...とまあ、色々意見が出たわけだけど。一旦焚き火を作っておくってことで。男子は枝、使えそうな道具、女子はワタと葉っぱを取ってきて!
...。
まあ、そこそこいい感じの焚き火ができた。
大きいから全員で囲めるくらいの大きさはある。
あたたかいね
そーだねー。
あんま悪くないかもな
深夜。
仕方ないから、今日みんなで葉っぱを敷いて寝ることになった。個人的には超〜〜絶不満だ。
奇妙な感覚に襲われ目を覚ます。心臓がドクドクと五月蝿く、耳に心臓がついているような気までする。
...?
妙な音がする。あっちの方か?
酷い匂いがする。
あちらへ歩いていく。
匂いが強くなる。
ぐちょォ、ぐヂュ べキォ゛。
レロォ、ジュッ...ゴキャ゛...。
不快な音が鳴る。
それもひとつじゃない。
いくつも、いくつも。
なにか光っている。眩しいような光じゃない。
奥に狂気を秘めているような赤。
いくつかの光の中心がこちらを向く。そのうち目が慣れてきたのでぼんやり先が見える。その中によく知っているものがあった。
.........アイツか...?
死んだハズのアイツが、目をギラギラ光らせて生きて
何かを漁っている。
ゾッっとなにかが背筋を伝う感覚がした。
死体が増えている。
その死体がひとつ、ゆらりと目に赤が浮かび、赤の位置が高くなる。起き上がったようだ。
屍人か...
本来なら一ミリたりとも信じないのだが状況が状況だ。
逃げつつ全力で棒を投げ動きを少しでも遅める。
奥になにか見える。
十体。アイツが増やした死体の数。
二体。今起き上がっている死体の数。
ゆらり、ゆらり。
二体から三体、四体...
...暫くは休めなさそうだ。
.........。
あっさり勝った。
...こんなにあっけないのか。
あんなに仲が良かったのに。
友情は食欲1個であっさり消え去ってしまうものなのか。襲いかかってきたアイツにも、遠慮せずに応戦した自分にも腹が立つ。
救急車の音がする。
ああ、...。
...
思い出すんじゃなかった。
また空を眺めて呟く。
夜空が輝く。
居なくなったんだな。みんな、みんな。
輝いた星はいずれ隕石となり堕ちてくる。
堕ちてやがて、地球の一部になる。
アイツもまた、俺の一部となった。
「あたたかいね」
まだ、あの日の焚き火が忘れられない。
駆け落ち···無断で家を去り行く先をくらますこと。
なんて、辞書で引いてみる。僕は今、相談を受けている。「人殺したかもしんない」「たすけて」
そんなメールが届いた。クラスの、自分の席より2つ前なだけで、僕が恋心を抱いた子。
仲がいい友達よりも自分にメールとは、相当パニック状態に陥っているのだろう。
「どうしたの」「ドッキリとか?」
「そんなわけないこらやめてよ」
「どうしたいい?」
「どうしのう」
誤字もあるが読めないほどではない。
昔から、思ってたことがある。
「じゃあ、駆け落ちでもしてみる?」
彼女がいつか僕に恋をしてくれないかと。
「わるくないね」
...
やっほー。
...呑気だなあ。
そーかな?
そーだよ。
じゃあ早速、いこっか?
うん、どこ行く?
電車にでもいこうよ
...
こんなに、こんなに人は呆気なく死ぬものなのか。
電車に自分から飛び込んだ彼女を止められなかった。
「どうしのう」
メールの言葉がフラッシュバックする。
そっか、そういうことか。
真っ赤に染まった服からポシェットを抜き出す。
中にある真っ青な日記らしきものを開く。
綺麗にまとめられた日記だ。最後のページは一文だけ書き連ねられている。
「君と一緒なら、どこまでも。」
それは、僕が遠い昔、彼女に告白した時の言葉だった。
ふっ、と息が漏れる。
やけに冷たい朝を見つめ、伸びきった袖で結露で見えない窓を撫でる。窓越しに濁った空が見える。
今日は曇りかな、なんて思いながら
ぼーっとする頭をなんとかしようと玄関で靴を鳴らす。
外はまだ薄暗い。
いつもの公園にいこうとしたのがまずかった。
もうすぐ公園に着く、というところで奇妙なかたちをした看板を見かけた。「」。それには何も書いていなかった。
冬ということもあって余計に冷える。今日の昼の予報は
晴れなのだが、それが嘘なのではないかと思うほど。あ
れには意味があったのだ、今思えば。
にんげんである以上、知識欲には逆らいがたいもので、
はーっと白い息を吐き、口の前に手をあて温める。
看板をたくさんの方向から眺めてみる。やっぱり、看
板には何か書いてあるどころか傷一つない。不気味
に思ったが、なぜか逃げる気になれない。あのまま、ぼ
おだちしてどれだけたったろう。どれだけにげたくても
きもちが、きもtが。kmtggggいきさえとまりそうd。
をあうおあいえおあいまはそらのひかりがこkちいい。
ついでにいいあうええおえお、かんばんはりせいすら
けしさってしまうよう
て゛
。
冬晴れの予報の日の早朝、空が濁っていたら昼まで外にでないことを強く勧めます。
寒さを訴えてるいたときから語り手本人の潜在意識が警告していたのですから。
是非、冬ということもあって、から。まで縦読みしてみて下さい。
ね。