NoName .

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私は透明人間だ。
どこにも居場所がなくて、幽霊のようだから。

家でも透明。アラームで否応なしに起こされて誰も一言も発さずに出される食事を口に押し込むだけ。

学校でも透明。肩が当たってようやく発せられる
あ、ごめん
他の言葉が私に向けられることは無かった。

外でも透明。夜中家を抜け出して公園を歩く。
夜風が心になびいた。
店の店員でさえ私と目を合わせなかった。
店で買った唯一の好物の包装を剥がす。
口に入れる。
あまり味がしなかった。
気持ち悪くて吐き出した。

嗚咽が漏れる。
吐いて泣いて泣いて泣いて。
吐いてもあまり食べていないので胃液だけが戻される。

泣いて、泣いて泣いて泣いて、気づく。
涙も、透明だ。



それに気づきぼーっとしずくを眺める。
...生きてるんだ。
......私って生きてる。



めいっぱいに涙を浮かべているのに視界を邪魔することは無い。目の前にある街灯が輝いているのが見える。







透明はその先にある光すら映し出す。
もしそれが透明でないのなら、その先に光があるかも分からず抱え込む。



きっと私は、光の先に立てば見つけてもらえる。




誰にもない、光を映し出せる唯一無二になれる。






いつか、その光を私のものにできたなら。











透明人間は決意した。







誰にも真似出来ないほど幸せになってやると。





そして精一杯、透明を幸せで満たすと。





例え貴方が自分はからっぽだと感じても、














なにもないがあったとしても。











きっとたくさんの幸福で満たせる。












透明さえ、生きてる証なのだから。



















「...大丈夫。やり遂げてみせるよ。」

1/17/2025, 7:20:48 AM