悲しいけれど、お別れの時が来ました。
短い間でしたが、皆さんにはたくさんのモチベーションをいただきました。
それが無かったら、ここまで続けることは出来なかったと思います。
やはり、人は人と、どんな形であれ繫がってこそ、自分を表現出来るもんなんだと気付かされました。
こんな環境を与えてくださったことに心から感謝します。
皆さんもこの場所で、たくさんの自分の可能性を見い出せているんじゃないかと思います。
その可能性を見失わないように、誰もが新しい扉を開けるような、そんな場所であって欲しいと願います。
それでは皆さん、また会いましょう。
お元気で。
思うんだけど、ジェットコースター。
お金を払って、人間を粗末に扱う乗り物に乗って、いったい何が楽しいのか。
振り回されて、風に煽られて、酷い急ブレーキ。
安全バーに食い込む体が痛い。
いや、絶叫マシンは嫌いじゃない。
FUJIYAMAだって乗ってしまう。
だけど、乗る度に、人間の扱いが雑だぞ!と叫びたくなる。
それが楽しいんだけど。
まあ、スリルつてやつだよね。
同じように思うのが、ゲーム。
大学生の頃は、トゥームレイダーというゲームにハマった。
お宝を探して、ララという女性キャラを操作し、様々な危険が待ち受ける世界を探検していくアドベンチャーゲーム。
なかなか難しくて、何度もミスって死んでは、リトライを繰り返す。
気付けば、一晩中朝までそのトライ&エラーを続けていたりした。
楽しくて、辛かった。
お金を払ってゲームを買って、何故そんな苦難を強いられるのか。
あと一歩のところで死んだりなんかしたら、コントローラーを投げつけんばかりに苛立って。
でも、やめられないんだよなー。
ホラーとか怪談とかも然り。
怖いのに、そんな目に遭いたくはないのに、どうしても見てしまう。
すべて、好奇心の為せる業か。
好奇心は猫をも殺すとか、言い得て妙だな。
だけど、すべては疑似体験な訳で、リアルで危険な乗り物に乗ったり、生死を賭ける探検をしたり、悪霊に呪われたりは御免被りたい。
ただ、スリルを味わいたいだけなんだ。
そう、スリル。これで飯三杯はイケる。
翼は飛ぶためにある。
飛べない翼はただの飾りだ。
だけど、その飾りのおかげで自分に自信が持てるのなら、飛べなくたっていいじゃないか。
精一杯大きく広げて、世界を威嚇してやればいい。
飛べるか飛べないかなんて、他人には分からないことだ。
自分には翼があるんだという希望を、心に抱いて羽ばたけばいい。
その翼はいつか誰かの心を優しく包み、暖める。
そのために存在しているのかもしれない。
そう信じて、今夜も羽を休めよう。
ススキと聞いて思い出すのがこの記憶。
幼い頃、父親と行った夜釣り。
田舎の川で、河原にはススキが群生していた。
車を止めて、ススキを掻き分けて、川岸まで。
そこに草を踏みしめて小さなスペースを作り、拠点とした。
そして釣りを開始。
暗闇の中、ランタンと懐中電灯の明かりのみ。
直ぐ目の前で、川の流れが黒いうねりとなって音を立てる。
低く、耳に残る音。
ー怖い、帰りたいー
素直にそう思ったが、プライドが邪魔して父親には言えなかった。
すると、突然父親が、車にタバコを忘れてきたと言う。
取りに行ってくるから待ってろ、と。
冗談じゃない。こんな場所で一人で待てと?無理に決まってる。
だが、ヘビースモーカーの父親は、じゃあお前が取ってきてくれるか?とか鬼畜なことを言う。
仕方なく、そこで待つことにした。
まるで釣れない。
とゆーか、ウキなんかちゃんと見ている余裕がない。
背後のススキ野原が気になる。
父親がなかなか帰ってこない。
いや、さっきから、誰かがススキの中を歩いている音がずっとしているのに、父親は姿を現さない。
「おーい、おーい」
気付けば、父親の声が呼んでいる。
だが、声は、目の前の川の方から聞こえてくる。
恐る恐る、懐中電灯の光を向けると、対岸に人が立っているのが見えた。
黒いシルエットが、両手を大きく振って、何かを叫んでいる。
「逃げろー、後ろから来るぞー」
そう聞こえた。
その時、背後のススキ野原から、一層大きな物音が聞こえてきた。
ガサガサと、かなりのスピードで何かが迫ってくる。
ーヤバイ、逃げなくちゃー
慌てて竿を放り投げ、対岸に向かって走り出そうとしたところで、後ろからがっしりと抱きすくめられた。
それは、父親だった。
突然川に飛び込もうとした私を助けてくれたらしい。
「ススキん中で迷子になってな、ウロウロしてたら、お前が、お父さん!って呼ぶ声が聞こえたんで、声のした方に走ってきたんだ」
目の前の川幅は広く、対岸に懐中電灯の光は届かない。
私は何を見たのだろう。
そして、私は「お父さん!」と呼んでいない。
いったいそれは、誰の声だったのか。
その声が無かったら、私は暗くうねる川に飛び込み、流されてしまっていたかもしれない。
私はその声に、命を救われたと言えるだろう。
その後、すぐに荷物を片付け、撤収することに。
帰りの車の中で、父親が言った。
「タバコを取りに車に戻ったらさ、車の横に、男の子が立っててさ、こんな時間に何やってんだと思って声をかけたら、早く戻ってあげなよ、って言われてさ。なんか嫌な予感がして、急いで戻ったつもりなんだけどな」
それで、迷子になっていたら世話がない。
そんな、暗闇に揺れるススキの思い出。
思えばあの川は、水難事故が多発して、地元でもいろんな意味で恐れられている場所だった。
これを書く前に、ネットで、あの川で過去に起きた事故について調べてみたが、水遊びをしていた何人かの子供が流され、亡くなっている。
私は思う。
あの夜、私と父親は、事故に遭った存在と事故を起こした存在の両方に出会ってしまったのではないかと。
そのおかげで命を奪われそうになり、そのおかげで命を救われることになった。
いずれにしても、物悲しく切なさの残る思い出だ。
その後、夜釣りには一度も行っていない。
脳裏の奥に眠る悔恨。
もはや幻のように、あの時代は遠ざかる。
言葉も行動も未熟な、あの頃の自分。
誰かを悲しませたり、自分を信じられなかったり。
だけど、きっとうまくいくと思ってた。
何もかもうまくいくと。
六畳一間のアパートで、お互いに罵り合った。
心にも無い罵詈雑言が、次々と口をついて出る。
こんなにも自分の中に、憎悪の固まりが作られていたとは。
あなたに渡すつもりじゃなかった。
あなたに見せるつもりもなかった。
こんな世の中への怒り、嘆き、悲しみ、そして憎悪を。
終わりゆく時代は、二人の関係を冷やし続けたまま、あの部屋の記憶を曇らせてゆく。
私の人生に必要のない時間だったのだろうか、あなたと過ごした日々は。
出会わなければ、交わらなければ。
二人の男女の悲劇など、この世界に満ちあふれているのに。
だが、脳裏の片隅に残る、あなたの笑顔。
幸せな時間をもたらしてくれた、あなたの笑顔。
これだけは、いつまでも心を離れずに、あなたとの綺麗な思い出として残り続けるだろう。
時が経てば、それだけが事実。それだけが真実。
美化された過去のあなたに、今、惜しみない賛辞を送る。
そして、新しいステージへと。
人は、前に進むことが出来る。
部屋は広くなり、罵り合うことは無くなっても、世の中への怒り、嘆き、悲しみ、そして憎悪は消えやしない。
だけど、きっとうまくいくと思ってる。
何もかもうまくいくと。
そうして人は、すべてを乗り越えて成長してゆくのだから。