脳裏の奥に眠る悔恨。
もはや幻のように、あの時代は遠ざかる。
言葉も行動も未熟な、あの頃の自分。
誰かを悲しませたり、自分を信じられなかったり。
だけど、きっとうまくいくと思ってた。
何もかもうまくいくと。
六畳一間のアパートで、お互いに罵り合った。
心にも無い罵詈雑言が、次々と口をついて出る。
こんなにも自分の中に、憎悪の固まりが作られていたとは。
あなたに渡すつもりじゃなかった。
あなたに見せるつもりもなかった。
こんな世の中への怒り、嘆き、悲しみ、そして憎悪を。
終わりゆく時代は、二人の関係を冷やし続けたまま、あの部屋の記憶を曇らせてゆく。
私の人生に必要のない時間だったのだろうか、あなたと過ごした日々は。
出会わなければ、交わらなければ。
二人の男女の悲劇など、この世界に満ちあふれているのに。
だが、脳裏の片隅に残る、あなたの笑顔。
幸せな時間をもたらしてくれた、あなたの笑顔。
これだけは、いつまでも心を離れずに、あなたとの綺麗な思い出として残り続けるだろう。
時が経てば、それだけが事実。それだけが真実。
美化された過去のあなたに、今、惜しみない賛辞を送る。
そして、新しいステージへと。
人は、前に進むことが出来る。
部屋は広くなり、罵り合うことは無くなっても、世の中への怒り、嘆き、悲しみ、そして憎悪は消えやしない。
だけど、きっとうまくいくと思ってる。
何もかもうまくいくと。
そうして人は、すべてを乗り越えて成長してゆくのだから。
11/9/2024, 12:58:22 PM