Ryu

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10/1/2024, 12:04:34 PM

今日も一日が終わる。
黄昏れ時、仕事帰りの電車に乗って、一日の疲れを感じるとともに、終わりゆく今日という日を想う。

どんな日だったかな。
いくつかの失敗もした。
誰かに喜んでもらえる行動も取れた。
でも、あの言葉は無意識で、彼を困らせたんじゃないだろうか。
今になってそんなことを思う。
何も覆せやしないのに。

電車の窓の外のたそがれは、
「それでも、今日一日頑張ったんだよ」
と、伝えてくれる。
こんなにきれいで、こんなに優しくて。
スマホを見る目を上げて、遠くのビルの背景を染める夕焼けを眺めた。
たくさんの人達の営みが作り上げた世界を、暖かいオレンジ色が照らしている。
この世界に生きていて良かった。そう思える時間だ。

気持ちもたそがれて、でも悪い気分じゃない。
明日への希望さえも感じながら、今日の疲れを癒すべく、家に帰ってゆっくり休もう。
黄昏れ時。誰そ彼時。
彼だけじゃなく、自分が誰であったかも忘れて、ぐっすり眠りたい。
そして、明日はまた新しい自分で。

9/30/2024, 12:02:04 PM

きっと明日も、何かを書き残す。
スマホなんて便利なものが出来てから、毎日何かを書き残してる。
何の意味もない、思いの垂れ流しだったりもするけど、それはそれで、自分を正直に表現したものとも言えるし、発散にもなってストレスが解消される…こともある。

人は日々、いろんな思いを心に生み出して、きっとどこかでそれを吐き出す必要があるんだと思う。
言葉にして誰かに話すのもいいけど、相手と場所が必要な訳で、相手を間違えたり、場所を確保出来なかったりすれば、それはさらにストレスを溜める事態にもなりかねない。

それならば、書こう。ただ、書き残そう。
別に、誰かに話して明確なアンサーをもらいたい訳じゃない。
答えなんてないような戯言ばかりだし。
一方通行だっていいんだ。ただ、伝えたいんだ。
地球の片隅に、こんなどーでもいいことをぼんやり考えている男がいるということを。

だから、きっと明日も、私は何かを書き残す。
このアプリに。
採点されることも、酷評されることもない。
書きたいことを書いたら「OK」をクリックして、あとは野となれ山となれ、だ。
もしも誰かの目に留まれば、❤のご褒美だってある。
好き勝手書いただけなのに、世の中には奇特な人がいるもんだ。

いつか、もしかすると思いのほか早く、この習慣に飽きる、もしくは音を上げる日が来るかもしれない。
そんな日が来たとしても、誰かに咎められることもなく、生活に困窮することもなく、きっとひっそりとここから消えていくのみ。
今日も明日も、私達は自由なんだ。
スマホとアプリ、これがあるだけで、どんな思いだって吐き出して誰かに伝えることができる。

でもだからこそ、他人を傷付けるようなことがないように、自分が発信する内容には十分気を付けなきゃいけないんだな。
奇特って表現は…褒め言葉だよな?

9/29/2024, 3:54:16 PM

目を覚ますと、見覚えのない部屋。
何もない床の上に横たわっていた。
確か…パチンコの帰り道、負けてイライラしながら、地下鉄の階段を降りていたところまでは覚えてる。
電車には乗っただろうか。
そこの記憶はない。

静寂に包まれた部屋。
誰もいない。
壁は白く、窓も…扉もない。
そんな馬鹿な。
どこから入ってきたというのか。

天井の片隅に、小さなスピーカーがあるのに気付いた。
突然、静寂を切り裂くように、聞き覚えのない男の声が響き渡る。

「どーですか。少しは反省しましたか?」
「反省…?何の話だ?」
「困るんですよね。好き勝手やられちゃ」
「だから何の話だよ。お前は誰なんだ」
「私ですか?私は、あなたの…」
ザザザ…ガガガ…ノイズが混じり、聞き取れない。
「おい、どーでもいいからここから出せ!」
「…ご自由に、どうぞ」

見ると、部屋の片隅に、いつの間にか扉が出現していた。
立ち上がり、扉に向かって走り出す。
とにかく、ここを出ることしか頭になかった。

扉を開け外に走り出ると、そこは線路の上。
すぐ目の前に電車が迫っていた。
振り返って目にしたその扉には、
「リトライ待機部屋」
と書かれたプレートが。
そうか…あいつは俺の…プレイヤー…
そこまで考えたところで、眩い光とともに、かつてない衝撃が体に降り注いだ。

9/28/2024, 12:02:20 PM

別れ際に、大きく手を振った。
遠く離れてゆくあなたに、いつまでも見えるように。
バスの後部座席で振り返るあなたの淋しそうな顔。
きっとまた会えるから、涙は見せないで。
きっとまた会えるから、サヨナラは言わないで。

今頃どうしているかな。
向こうで、友達は出来たかな。
美味しいご飯を食べてるかな。
また今度あなたに会う時は、きっと少し大人になっているはず。
それでも、私の知っているあなたでいて欲しい。

「ただいま!」
あなたの元気な声。
幼稚園バスを降りて、私のもとへ走ってくる。
今日一日、楽しかったみたいだ。
明日の別れ際には、淋しい顔は見せないで行けるかな。

9/27/2024, 1:28:15 PM

突然の夕立に、人気の消えた商店街の軒先で雨宿り。
通り雨だ。すぐ止むだろう。
先客がいた。うずくまる三毛猫。
恨めしそうに雨空を見上げている。

「お前も雨宿りか」
「にゃあ」
間違いなく、猫だ。
「次の取引先の客を待たせてんのに、こんなところで足止めだよ。びしょ濡れじゃマズイし、店もやってないから傘も買えない。まあ、俺が天気予報を確認して傘を持ってくりゃ良かった話だけど」
猫は黙ったまま、俺をじろりと睨む。
不敵な面構えだ。可愛くはない。
でも、愛嬌だけは…いや、ないか。

「お前も誰かに飼われてりゃ、こんなとこで雨宿りしなくてもよかったのにな。お互い、不憫な境遇だよな」
「にゃー」
「取引先のおっさんが嫌なヤツでさ、完全に人の足元を見てる。毎回ネチネチとこっちの腹探られてさ、まったく商談はまとまらない。今日も遅刻だし、また嫌味言われるよ、きっと」
「にゃーにゃ」
「お前みたいに自由気ままもいいけど、明日の飯にも困るようじゃたまらんしな。人間は働かないと」
「にゃーにゃにゃーにゃにゃ」
「お前…さっきから返事してないか?…気のせいだよな」
「にゃ」
雨が上がりそうだ。やっぱり通り雨だったらしい。

「さて、客先のオヤジがキレる前に顔を出すか。じゃあな、お前も達者でな」
「ほっとけ」
「えっ?」
「にゃあ」
「おいおい、お前…」

猫はのそのそと起き上がり、こちらに尻尾を向けて去ってゆく。
その両足の間から、タマタマがチラチラと見えていた。
「え?三毛猫の…オス?」
「お前も頑張れよ」
「え?…えぇ?ちょっと待って…」
「ま、俺は安泰だけどな」
「いや、待てって。どこ行くんだよ」

猫は走り出し、商店街の裏の、今まで見たこともないような豪邸に吸い込まれていった。

「三毛猫のオスってかなり希少な…てゆーか、あいつ、喋ったぞ。三毛猫のオスって喋るんだっけ?だから希少なのか?」
頭が混乱してくる。
「ま、まあ、いいや。仕事しよ」
雨は上がり、雲の切れ間から差し込んだ陽光が水溜りに煌めいている。
ネクタイを締め直して、軒先を出る俺の耳に、
「俺に会えたから、お前にも運が回ってくるよ」
なんて都合のイイ声が聞こえたような…気がした。

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