Ryu

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8/20/2024, 12:27:02 PM

思えばあなたは、さよならを言う前に必ず、「次はいつ会える?」と聞いてきた。
時に即答し、時にはぐらかし、私から聞くことは無かった。
あなたが聞いてくれるから、途絶えずに私達は、次に会う約束を交わすことが出来た。

あなたが病に倒れ、病室でしか会えないようになって、あなたからこの質問をされることはなくなった。
デートではなくお見舞いになったから。
あなたが、少なからず負い目を感じているから、だろう。
病室のあなたは、日を追うごとに衰弱していくように見えた。

ある日、お見舞いに訪れた私の目の前で、彼が涙を見せた。
堪えきれずに溢れた涙だった。
私はすべてを悟り、彼に初めて問いかける。
「次はいつ会える?」
彼は俯いて、「もう会えないと思う」と答えた。

「…どうして?」
「分かるだろ。もう、お見舞いは終わりにしていいよ」
「…さよならなの?」
「うん。もう、次は無いと思う」
「じゃあ、さよならを言う前に約束して」

生まれ変わったら、私を探して。
どんな姿に生まれ変わっても、私を探して声をかけて。
私はあなただと気付くから。
私もあなたを探して生きるから。

「…分かった。もし僕を見つけたら、その人と一緒になって。たとえ見た目や性格が違っても、それはきっと僕だから」

数日後、彼の訃報を聞いた。
泣き崩れると思っていたが、心はすでに、生まれ変わったあなたを探すことで占められていたようだ。
思いのほか、冷静に受け止めることが出来た。

そして、三年後、あなたとは見た目も性格も違う、ある男性と知り合う。
その頃には、生まれ変わりなんてないのかも、と思い始めていたが、彼は私と会ってさよならを言う前に、必ず聞いてくる。

「次はいつ会える?」

私は答える。

「会えるなら、毎日でも」

8/19/2024, 12:53:09 PM

いきなりの土砂降り。
ゲリラ豪雨ってやつだ。
避難も間に合わず、びしょ濡れになる。
最近こんなのが多いな。
空模様が急激に変わる。

誰かのハート。
心模様も急激に変わる。
あんなに好きだったアイドルが、誰かと熱愛報道された途端に、純愛が憎悪に変わったり。
長いものに巻かれろとばかり、イジメられる対象とは縁を切って、強きを頼って尻尾を振ったり。

人間の心模様は多彩で、メンドくさいほど複雑だ。
晴れのち曇り、ところにより雨や雪や雹、雷が鳴るくらいなら対応出来るけど、まったく自分が持ち合わせていない感情に出くわした時、人間の奥深さを思い知る。
その感情は行動を伴うから、理解不能なトラブルや事件を引き起こす。
でもそれはきっと、姿形を変え、誰もが心に抱えている。

もっと単純で良かったんだけどな。
青空みたいに心が晴れて、時に翳って、雨や雪のように悲しくなったりリラックスしたり、雹や雷のように怒りに任せて攻撃的になることだってある。
それくらいで良かった。分かりやすくて。
自分の心と相談して宥めるのも簡単そうだし。

まあ、インサイド・ヘッドも続編では4つも感情が増えたっていうし、この様々な感情を持ち合わせてるからこそ、数々の作品が生まれ、それに感銘を受けることが出来るんだろう。
あ、インサイド・ヘッド2はまだ観てないけど。
早く観て、感情を爆発させて、号泣したい。

8/18/2024, 12:52:30 PM

噂では、その廃墟ビルの二階の廊下に、姿見ほどの大きさの鏡があって、深夜その前に立つと、背後に女性の霊が現れるという。
駆け出しの心霊YouTuberの俺は、この話に飛びついた。
早速、現場に向かう。

深夜二時。静まり返った廃墟ビル。
二階の廊下を探索すると、鏡はすぐに見つかった。
「これか…」
雰囲気を出すために、目を閉じてカメラを回しながら鏡の前に立ち、せーので目を開けることにした。
撮れ高が欲しいの半分、見てしまったらどうしようが半分。

覚悟を決めて、せーの、で目を開ける。
暗闇に目が慣れてくると、自分の姿がぼんやりと見えてきて、その右肩の上辺りに、明らかに女性の顔があることに気付く。
こちらを見て…微笑んでいる。
カメラにしっかりと収めたのを確認して、ダッシュで逃げた。

後日、動画をアップするとかなり反響があったが、この女性の顔を知っている気がする、というコメントがいくつかあり、もう一度、明るい時間に確認してきて欲しい、との要望に応えて、真昼の廃墟ビルに侵入して、あの鏡の場所へと向かった。

…あれ?
鏡があった場所の、廊下を挟んで反対側の壁に、大きなポスターが貼ってある。
そこには、ビールを片手に持ったビキニ姿の女性が、満面の笑みでポーズを取っていた。
街でもたまに見かけるポスターで、この女性にも見覚えがある。
…そーゆーことか。
落胆して、鏡の方を振り返る。

…鏡が、無かった。
薄汚れた壁があるばかり。
撤去された?この短期間に?なんでわざわざ鏡だけ?
クエスチョンマークだらけで、SNSに現状を伝える。
すると、以前このビルに凸したことがあるという人からコメントが。

「だって、噂の鏡があるのは三階の廊下だよ」

8/17/2024, 12:43:01 PM

昔の彼女の写真とか、実は捨ててない。
後生大事に隠している訳でもないが、きっと実家の押し入れに眠ってる。
付き合い始めた頃、今の奥さんに訊いたことがある。
「捨ててほしい?」と。
彼女の答えは、「別にどっちでもいい」だった。

もし、自分の中に未練があったなら、捨てていたと思う。
それは、自分をも苦しめることになるから。
だが、自問自答の末、自分の大切な思い出として、残したいと思った。
自分が生きてきた道のりで、共に過ごした人の思い出として。

これをある時、姉貴に話したら、こっぴどく叱られた。
今の彼女が可哀想だと。
了承済みだと言っても、まったく聞く耳を持たなかった。
そんなの、嫌だって言いづらいに決まってる。
人の気持ちがまるで分かってないとまで言われた。
なるほど、俺の気持ちは分かってもらえないんだな。

結局、俺の人生なんだよな。
それを否定する人は、離れていっても仕方がない。
他人の気持ちを慮って、自分の人生の削り取らなければならない理由はあるだろうか。
俺の人生だ。
誰かのために生きていたって、俺の人生なんだ。

こんな思いはあの頃から変わらず、いつまでも捨てられないものとして、心に棲みついている。

8/16/2024, 1:47:00 PM

愚痴を言います。

自分の自慢ばっかして、さらに他人のことを貶めようとする人。

 俺の会社はこうだけど、お前んとこはこうだよな。
 それでよく平気で働けるなーとか思っちゃうよ。
 俺ならすぐやめて、ウチみたいな会社探すけどな。
 だって、耐えられないし。

その人は、今までに何度も転職して、中にはリストラにあって数ヶ月でやめた会社もあった。
今の会社は、やっと少し腰を据えて働ける場所となっているようだが、そんな根無し草のような人に、三十年勤め上げている自分の会社を悪く言われるのは、正直腹が立つ。
腹が立つが、義兄の立場のその人に、露骨に言い返すのは、親戚関係に角が立つ。
そう、私は常識人。

他にも、乗っている車や、好きな俳優まで貶される。
そのくせ、自分が良しと認めているものに対するアピールがウザい。
ほとんどそればっかり言っている。
皆が集まる食卓の席でも、空気も読めずにその話題をぶっ込んでくる。
またその話?と思われてもお構いなしだ。

ここまで言うと、その人はかなり自分に自信を持った人に思えるかもしれないけど、私が思うその人の本質は逆だ。
自分に自信が無いから、人を抑えて自分を上げようとする。
自分一人の身勝手なぶっ込みで、自分のプライドを必死で守ろうとしている。
そう、情けないだけの、誇らしさの欠片もない人なんだろなと。

はい。少し溜飲を下げました。この辺にしとこう。
すべて私の偏見で、世間一般には負け犬の遠吠えに聞こえるのかもしれない。
…いや、何も負けちゃいないが。
でもまあ、本人に真っ向から意見出来ない時点で負け犬なのかな。
ここでこうして愚痴を言っている時点で。

世の中、自分が正しいと思い込んでる人間ほど厄介だ。
それは今の私であり、私を貶める彼の人であり、これを読んでいるすべての人でもあったり。
自分に誇らしさを持って、意気揚々と過ごしているすべての人に当てはまる。
さて、どーするか。

他人の誇りを尊重できる自分に、誇りを持とう。
誰もが正しさを持っていて、その形には違いがあることを認めよう。
そしてその正しさを、他人の物差しで測ることも測らせることもやめにしよう。

この世界には、目盛りの違う物差しが約82億個あるんだから。

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