Ryu

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思えばあなたは、さよならを言う前に必ず、「次はいつ会える?」と聞いてきた。
時に即答し、時にはぐらかし、私から聞くことは無かった。
あなたが聞いてくれるから、途絶えずに私達は、次に会う約束を交わすことが出来た。

あなたが病に倒れ、病室でしか会えないようになって、あなたからこの質問をされることはなくなった。
デートではなくお見舞いになったから。
あなたが、少なからず負い目を感じているから、だろう。
病室のあなたは、日を追うごとに衰弱していくように見えた。

ある日、お見舞いに訪れた私の目の前で、彼が涙を見せた。
堪えきれずに溢れた涙だった。
私はすべてを悟り、彼に初めて問いかける。
「次はいつ会える?」
彼は俯いて、「もう会えないと思う」と答えた。

「…どうして?」
「分かるだろ。もう、お見舞いは終わりにしていいよ」
「…さよならなの?」
「うん。もう、次は無いと思う」
「じゃあ、さよならを言う前に約束して」

生まれ変わったら、私を探して。
どんな姿に生まれ変わっても、私を探して声をかけて。
私はあなただと気付くから。
私もあなたを探して生きるから。

「…分かった。もし僕を見つけたら、その人と一緒になって。たとえ見た目や性格が違っても、それはきっと僕だから」

数日後、彼の訃報を聞いた。
泣き崩れると思っていたが、心はすでに、生まれ変わったあなたを探すことで占められていたようだ。
思いのほか、冷静に受け止めることが出来た。

そして、三年後、あなたとは見た目も性格も違う、ある男性と知り合う。
その頃には、生まれ変わりなんてないのかも、と思い始めていたが、彼は私と会ってさよならを言う前に、必ず聞いてくる。

「次はいつ会える?」

私は答える。

「会えるなら、毎日でも」

8/20/2024, 12:27:02 PM