Ryu

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6/29/2024, 12:44:54 AM

夏、ありきたりの風景。
汗にまみれて歩く。
人を死に至らしめるほどの熱波が、ゆっくりと街を覆い尽くす。
人類の英知を以ってしても、地球規模の温暖化を止めることなど出来ないし、緩和させたとて、真綿で首を絞められるようなもんだ。
いずれ、誰もが想像し得ない夏が来る。

なんて恐怖を感じるほど、暑い。
最寄り駅に着いて、職場まで歩く。
汗にまみれて歩く。
職場に着いて、空調の効いたビルの中へ。
一気に汗が引いていき、アイスコーヒーでも飲みながら、仕事にとりかかる。
ただただ、ディスプレイとにらめっこして、俺のさっきまでの人間らしい苦しみはどこへやら。

汗にまみれて歩くのは、夏、ありきたりの風景。
それもいいじゃないか。
俺達の住む世界がそうなっているなら、それは仕方ない。
暑かろうが寒かろうが、人類の英知で乗り切るしかない。
今まで人類がそうしてきたように。
まずは、最新型のハンディファンを買って…。

6/27/2024, 12:06:05 PM

ここではないどこかで、
少年は、敵兵を撃ち殺すべく銃を取る。
もはや、命を奪うことに躊躇はない。

ここではないどこかで、
母親は、我が子を守るべく瓦礫に埋まる。
大きな自然の力に為す術もなく。

ここではないどこかで、
少女は、心ない言葉や暴力に心を壊す。
遠く我が家を見下ろせる場所で、その一歩を踏み出そうとする。

ここではないどこかで、
男達は、肩が触れ合ったことに腹を立て、刃物を向ける。
どちらかが沈黙するまで終わらない争いを、周りの観客はスマホで録画し続ける。

ここではないどこかで、
老婆は、誰にも知られずにひっそりと生涯を閉じる。
家族に囲まれていた時代を思い出に、どこで間違えたのかを悔やみながら。

ここではないどこかで、
見知らぬ男が、捨てられて雨に濡れた子猫を拾う。
家族に疎まれているこの男は、心の拠りどころをずっと探している。

ここではないどこかに、
幸せなどあるとは思えない。
だから私はここにいる。
ここには幸せがあるから。きっとここにしかないから。

6/26/2024, 10:35:10 PM

君と最後に会った日は、雨がザーザーと降っていて、「ああ、こんなに激しい涙雨は初めてだな」なんて、冷静に考えてた。
病室の窓の外、いつもの風景が霞むほどの雨、君はもう目を覚まさない。

最後に会えて良かったよ。
さよならは言えなかったけど、君の旅立ちの日にそばにいられたことが嬉しかった。
あっちの世界は痛みも悲しみもないって聞くから、きっともう、この雨のような涙は流さなくていい。

…いや、この涙雨は僕のものか。
落ち着いているつもりだけど、手の震えが止まらなくて。
痛みも悲しみもある世界で、生き続けていかなくてはならない僕の心模様なのかな。
そうだとしたら、僕は自分が思うより、人間らしい感情を持ち合わせていたんだな。

痛みや悲しみで押し潰されそうだから、窓を開けて雨の音を聞いた。
君との思い出を少しずつ洗い流してゆく。
忘れないけど、忘れたいんだ、今だけは。
僕はまだ、この世界に未練があるから。
君がいたこの世界に。僕がいるこの世界に。

病院を後にして、コンビニで缶コーヒーを買った。
いつものブラックだったけど、いつもより苦かった。
でも、これが生きてるってことなんだろうな。
…なんて、らしくない感慨を心に描く。
びしょ濡れの心と体に今さらビニール傘を買って、土砂降りの雨の中を駅へと向かう。

君と最後に会った日に、僕は少しだけ大人になれた気がした。

6/24/2024, 2:14:29 PM

そっか、1年後にはお題がループするのか。
それはちょっとモチベが下がるかも。
もう半年書き続けてきたけど、少し義務的になってしまっている気がする。
付き合い方を見直そう。無理はやめとこう。
書くことは好きだけど、書かされるのは好きじゃないから。

…とゆー独り言。

6/24/2024, 1:34:07 AM

子供の頃は、地味な存在だった。
のんびり動いて、野菜ばっか食べて。
キャベツが大好物だった。

大人になる手前で、殻に閉じ籠もった。
まったく動かず、息を潜めるような日々。
それでも、いつか羽ばたく日を夢見てた。

その日が来た。
私は殻を破り、外の世界へと羽ばたいた。
外の世界は色とりどりで、素敵な香りに包まれていた。

子供の頃は、虫取りが好きだった。
狙うはカブトムシやクワガタだったけど、たまにヒラヒラ宙を舞うモンシロチョウを追いかけて、虫取り網で捕まえたりもした。

今思えば、カブトムシみたいに飼うつもりもなく、追いかけ回される恐怖を与えただけで、申し訳ないことをしたな。
彼らにだって、この世界に生まれて、子供の頃からの成長の過程があったはずだ。

羽化して外に羽ばたいた時、生きる喜びを感じたりしたのだろうか。
色とりどりの世界で、優雅に宙を舞い、香る花から花へと蜜を求め。
幸せを謳歌しているような、その穏やかな仕草。

まあ、あの頃の自分にそんなこと話しても、右から左への馬耳東風だったろうけど。

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