Ryu

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4/9/2024, 5:27:14 AM

もう、あれが何年前のことだったのかも覚えていない。
ある朝、通勤の電車、結構満員で、車両の端っこで目の前には人の壁。
何となく、ホントに何となく、
「あーこの状態だと、降りたくてもすぐには降りられないな」と思った瞬間に、それはやって来た。

心臓がバクバクして、冷や汗が吹き出し、追い詰められたような気分になる。
「俺をここから出してくれ!」
洞窟の中で迷子になり、暗く右も左も分からず、永遠にここから出られないんじゃないか、みたいな錯覚。
出口のドアはすぐそこにあるのに。

次の駅に着いてひとまず安心するが、またドアが閉まり電車は動き出す。
さらに人が乗り込み、乗客は増える。
壁は一層強固になった。
岩が崩れて洞窟は行き止まりだ。
頭の中ではそんなことはないと分かっているのに、このままここで死ぬんじゃないかという恐怖に襲われる。

結局、目的の駅のいくつか手前で、人混みを無理にかき分けて途中下車した。
ホームのベンチに座ってしばらくすると、心臓はドキドキしているが、やばい状況は治まってゆく。
ものの数分。
次の電車には何とか乗車して、その日は普通に仕事した。

そこからは葛藤の日々が続いた。
まずは、自分が情けない、という感情との闘い。
なんでこんな、当たり前のことが出来なくなったのか、と。
映画やライブなどの人の集まる場所、飲み会やタクシーなどのすぐには抜け出せない場所が苦手になった。
もちろん、満員電車が一番の恐怖だった。

それでも仕事には向かう。
何度も途中下車したり、車両の片隅で汗だくで堪えたりして、何とか職場に辿り着く毎日。
電車の時間や車両を変えたり、リラックス出来る音楽を聴いたり、気が紛れるスマホゲームをしたり。
でも、そうやって気にし続けている自分がいる限り、コイツとはオサラバ出来ないんだってことも…分かってる。

これからもずっと、付き合っていくんだろうな。
まあ、それでもいいかと思うようにした。
そうするしかなくて、そう思うことが必要だと思うから。
個人差はあるだろうけど、これは医者には治せないと思ってる。
すべて、自分が心に描いたことが原因となっているから。
自分ですらままならない心の動きを、他人がどうこう出来るとは思えない。

こんな状況の中で、心というもののパワーを思い知らされた。
いや、正確には頭で考えたことだが、冷静に脳が活動したのなら、こんな風に自分が苦境に陥るようなことになるとはイメージしにくい。
病は気から。まさにコレ。
そして、このパニック障害のおかげで、たくさんの本を読み、ポジティブに生きるための術をたくさん手に入れたように思う。
悪いことばかりじゃない。

少し生きづらくはなったけど、まだまだやれるよ。
生きてる限り、その生き方は幾通りだってある。
そこから自分がどれを選ぶか、それすらも楽しんで、こんなもんに負けない自分を誇りに思うよ。

4/8/2024, 8:37:04 AM

沈む夕日は下りる緞帳のように一日の終わりを告げる。
自分は今日も、理想の自分を演じきれなかった。
数多の共演者も、今頃は自分の中で反省会を開いているのかもしれない。
誰もが素人丸出しの大根役者。
それでもまた、明日のステージに立つ。
必ず幕が上がるから。

4/7/2024, 2:10:36 AM

あの頃、君の目を見つめると、
熱い想いが心に湧き上がった。
すぐにでも、君に触れたい衝動。
誰にも止められない、二人だけの情熱が燃え盛り、
そして君に問いかける。
「なにガン飛ばしてんだ、コラ」

バイブルはビーバップ。
今考えれば、目があっただけで喧嘩が勃発するという理不尽な状況。
きっと理由なんて何でも良かった。
自分が強いと思われたい一心での愚行でしかなかった。

強さってのはそーじゃないと教えてくれたのはジャッキー・チェン。
強靭な肉体で、あの人たらしの笑顔。
目を見張るアクション、スタント、アクロバット。
すべて、観客を楽しませるために命がけで演じていた。
好戦的なキャラではなく、巻き込まれ系のヒーロー。
間違ってもガンは飛ばさない。

奇しくも今日4/7は、彼の70歳の誕生日。
昨夜はHuluで彼の懐かしいカンフー映画を観た。
若かった。強かった。大好きだった。
時の流れって切ないね。
もう、彼のあんなアクションは見れないんだろうな。

話をビーバップに、いや、人の目を見つめることに戻すと、人と話す時は目を見て話せとか言うけど、あれもどーかと思うんよ。
目を見て話すのは、真剣に何かを訴えたい時だけでいいんじゃないかな。
他愛ない世間話をしてる時に、じっとこっちの目を見つめてくる奴は何か怖い。

目は口ほどにものを言うってゆーし、あんまり眼力強すぎると、もうそれだけでガン飛ばされてるようなもんだよね。
熱い想いが湧き上がって、話をビーバップに戻しちゃうから、目線はさり気なく虚空を漂うくらいがイイと思います。
面接等は除く。

たぶん、こーゆーことじゃないんだろうな、君の目を見つめる、ってのは。
分かってるけど、昼メロじゃあるまいし、ただただ見つめ合うなんて行為はそーそーしない。
時折家猫と見つめ合って逃げられる、それくらい。
ガンを飛ばしてるとでも思われるのだろうか。

強引だが、最後に、
ジャッキー、誕生日おめでとう!

4/5/2024, 1:57:43 PM

ハローハロー、応答願います。
宇宙人の皆さん、私は地球人です。
お友達になりませんか。

宇宙戦争とかインディペンデンス・デイとかマーズ・アタック!みたいなのは嫌です。
スターウォーズは好きだけど。
きっとこの星の文明じゃ、皆さんの星には太刀打ち出来ないんでしょう。
分かってます。まだ月にまでしか行けてないんだから。

だけどね、この星には、素晴らしい映画やドラマ、アニメに音楽、そして小説やマンガまで、各種取り揃えております。
あなた達の星のそれらのものと、交換して文化交流しませんか。
負ける気はしませんよ。
何も生み出してはいない私が言うのも何ですけど。

マンションの屋上。
満天の星空の下で、スマホを高く掲げて。

この機械の中に、この星のすべての文化が詰まっています。映画も音楽も小説も。
月にまでしか行けないけど、想像力なら太陽系を軽々と越えていきます。
想像出来るものはいつか、きっと現実となるでしょう。
この、機械のように。

ところで、明日は高校の入学式です。
新しい友達が出来るかどうか、不安です。
あなた達の星に、吃音症というのはありますか?
それとも、テレパシーで会話が出来たりして。
きっと、私の些細な悩みなんか、吹き飛ばしてくれる能力があるんでしょうね。
言葉が通じなくても、心と心で会話したりして。

東の空から太陽が昇るまで、私は私の友達を探す。
宝石を散りばめたような夜空の向こうに、誰かが待っていてくれると信じて。

ハローハロー、応答願います。
宇宙人の皆さん、私も宇宙人です。
お友達になりませんか。

4/5/2024, 2:50:40 AM

仕事初日は失敗ばかりで、自己紹介すら緊張してまともに出来なかった。
他の同僚達は要領がいいのか、うまいこと職場に溶け込んでいってる気がする。
初日からこんなに取り残された気持ちになるとは予想してなかった。
もう少し、うまくやれると思ってた。

帰宅して夜、コンビニ弁当を食ってたら不意に虚しくなった。
耐えきれず、地元の友達にLINEする。
調子はどうだ?と。
楽しげな絵文字を使ったら、何だか余計に虚しくなってきたが、すぐに友達からの着信があった。
文字面を打つのが嫌いな奴だった。

どうもこうも、うまくいかねーことばっかだよ。
学生気分じゃバカにされっから、必死で背伸びしてっけどな。
そっちはどーなんだ?
お前のこったから、職場で気後れして孤立してんじゃねーのか?
出しゃばらないのがお前のイイトコだもんな。

懐かしい声がする。
弁当の残りはそのままに、缶ビールを開けた。

そーいや、この間、お前の親父さんに会ったよ。
たまには電話してやってくれって…あいつは人に頼るのが下手だからって。
そんなお前から連絡してくんだから、初日は散々だったんじゃねーのか?
でもさ、そんでいーんだよ。
始まりは人それぞれなんだからさ。

散々だったのはお前もだろ、と突っ込んでやろーと思ったが、ここは、励まされる立場でいることにした。

覚えてるか?
俺達が小学生だった頃。
何やってもうまくいかなくて、クラスで孤立して、学校で孤立して、上級生に睨まれて。
俺なんか、母親にも見捨てられてさ。
お前は島を離れて引っ越して行くってゆーし、いろいろとツラかったけど、お互いちゃんと前に進んでたよな。
そんでここまで来たんだ。

この、ダンボール箱の中のどこかに、あの日の遊戯王カードがあるはずだ。
島を出る時にお前がくれた、俺の宝物。

そーいや、お前に送りたいもんがあったんだ。
LINEで送れんのかな。
ちょっと待ってろ。

しばらく時間をかけて、使い慣れないLINEでお前が送ってきたのは、あのお別れの日に神社の境内に隠した、二人で肩を組んで撮った笑顔の写真。
俺達が大人になっても、こんな時代があったことを忘れないように、と。

いやー、今日の仕事がツラくてさ、思わず帰りにあの神社に寄って、この写真をスマホで撮ってきた。
これ見ると、こんなバカでも大人になれたんだな、って安心するんだよ。
もちろん、お前の方な。

そっか…。

おいおい、ツッコめよ。調子狂うだろうが。

不意打ちの写真に泣くのを堪えるのに必死で、それどころじゃない。
あの日の境内では堪えきれなかった涙を、大人になった今は何とか抑えることが出来ている。
これも成長ってやつか?

お前はさ、あの日、親の都合で海の向こうへ越して行ったけど、それでも今がある。
こうして仕事を始めて、その初日に俺とお前が話してる、今がさ。
何も間違ってないだろ。
だから、それでいーんだよ。
俺もお前も、これでいいんだ。

何がいいんだよ。訳わかんねえ。

やっとツッコんだな。それでいいんだ。

涙腺は崩壊寸前だが、まだもう少し、堪えられる。
せめて、この電話が終わるまでは、持ちこたえて欲しい。
あの夏、二人で上級生に立ち向かった武勇伝を、壊したくない。

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