Ryu

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もう、あれが何年前のことだったのかも覚えていない。
ある朝、通勤の電車、結構満員で、車両の端っこで目の前には人の壁。
何となく、ホントに何となく、
「あーこの状態だと、降りたくてもすぐには降りられないな」と思った瞬間に、それはやって来た。

心臓がバクバクして、冷や汗が吹き出し、追い詰められたような気分になる。
「俺をここから出してくれ!」
洞窟の中で迷子になり、暗く右も左も分からず、永遠にここから出られないんじゃないか、みたいな錯覚。
出口のドアはすぐそこにあるのに。

次の駅に着いてひとまず安心するが、またドアが閉まり電車は動き出す。
さらに人が乗り込み、乗客は増える。
壁は一層強固になった。
岩が崩れて洞窟は行き止まりだ。
頭の中ではそんなことはないと分かっているのに、このままここで死ぬんじゃないかという恐怖に襲われる。

結局、目的の駅のいくつか手前で、人混みを無理にかき分けて途中下車した。
ホームのベンチに座ってしばらくすると、心臓はドキドキしているが、やばい状況は治まってゆく。
ものの数分。
次の電車には何とか乗車して、その日は普通に仕事した。

そこからは葛藤の日々が続いた。
まずは、自分が情けない、という感情との闘い。
なんでこんな、当たり前のことが出来なくなったのか、と。
映画やライブなどの人の集まる場所、飲み会やタクシーなどのすぐには抜け出せない場所が苦手になった。
もちろん、満員電車が一番の恐怖だった。

それでも仕事には向かう。
何度も途中下車したり、車両の片隅で汗だくで堪えたりして、何とか職場に辿り着く毎日。
電車の時間や車両を変えたり、リラックス出来る音楽を聴いたり、気が紛れるスマホゲームをしたり。
でも、そうやって気にし続けている自分がいる限り、コイツとはオサラバ出来ないんだってことも…分かってる。

これからもずっと、付き合っていくんだろうな。
まあ、それでもいいかと思うようにした。
そうするしかなくて、そう思うことが必要だと思うから。
個人差はあるだろうけど、これは医者には治せないと思ってる。
すべて、自分が心に描いたことが原因となっているから。
自分ですらままならない心の動きを、他人がどうこう出来るとは思えない。

こんな状況の中で、心というもののパワーを思い知らされた。
いや、正確には頭で考えたことだが、冷静に脳が活動したのなら、こんな風に自分が苦境に陥るようなことになるとはイメージしにくい。
病は気から。まさにコレ。
そして、このパニック障害のおかげで、たくさんの本を読み、ポジティブに生きるための術をたくさん手に入れたように思う。
悪いことばかりじゃない。

少し生きづらくはなったけど、まだまだやれるよ。
生きてる限り、その生き方は幾通りだってある。
そこから自分がどれを選ぶか、それすらも楽しんで、こんなもんに負けない自分を誇りに思うよ。

4/9/2024, 5:27:14 AM