Ryu

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2/9/2024, 12:00:07 PM

ある日の朝、仕事に行こうとドアを開けると、玄関ドアの前に花束が置かれていた。
昨夜は無かったはずだ。
心当たりがなくて、それでもかなり気になって、後日、マンションの監視カメラ映像を見せてもらう。

見覚えのない、でもかなり綺麗な女性。
深夜0時頃、そっと玄関ドアの前に花束を置く。
そしてしばらくそこに佇んだ後、帰っていった。
どこに帰っていったのかは分からない。

職場で同僚に話すと、
「街中で見かけて惚れられたんじゃないの?奥手過ぎて声もかけられなくて、ラブレター代わりにひっそり花束を置いたとか」
…それはかなり不気味だ。いくら美人でも。
とはいえ、どこかで何かを期待している自分がいることも確かだった。

ある夜、部屋で過ごしていると、玄関付近で物音が。
あの女性か?と思ってドアを開けると、見知らぬ男が立っていて、「人の女に手を出しやがって」とどこかで聞いたようなセリフとともに、刺された。
その後のことは、分からない。

「…つまり、本当に惚れた男を守るために、今付き合ってる男には、別のまるで関係ない男を好きになったと嘘をついた、と。それで今の彼氏が逆上して、そいつに何かしでかせば、彼氏は逮捕されて、晴れて惚れた男と付き合えると。かなり計画的だな」

「刺された男は、単に街中で見かけただけの相手を選んだそうですよ。まあそりゃ、何かされても気にならない相手を選びますよね」

「赤の他人をそんなことに巻き込むとは、血も涙もない女だな」

「確かにそうなんですが…彼女は彼女なりに、被害者に弔いを行っていたようですね」

「…弔い?」

「ええ、刺される数日前に、被害者宅の玄関前に百合の花束を…」

2/8/2024, 12:25:45 PM

笑顔は苦手。
写真写りもどちらかと言うと無愛想。
満面の笑みで写ってる写真なんか数枚しかない。

アイドルって凄いなと思う。
馬鹿みたいに笑っていられる…いや、バカにしてる訳じゃなくて、ホントに尊敬。
容姿に自信があるからなのか、おおらかな性格の成せる業か。
要するに、ナルシストか能天気ってことか…いや、バカにしてる訳じゃなくて。

最近CMで、どこぞのスマホのカメラ機能で、撮った写真の表情をすげ替えられるなんちゃらマジックってのがあると知った。
これ、どーなんだろう?
すげ替えちゃっていいのか?
その時のリアルじゃなくなるけど…でもちょっと欲しい。

そうは言っても、スマイルは素晴らしい。
決して0円で扱うようなものじゃない。
有料で買うつもりもないが、可愛かったら何か買ってあげたくはなるかな。
フライドポテトくらいなら…。

スマイルは人間だけ?
猫の笑顔は見た記憶がないけど、たまに犬って笑うよね。
笑ってる自覚があるかどうかは別として、表情が笑ってる時が。
猿も大口開けて笑うか。
あとは?
ワライカワセミは笑ってる?
声だけ?
くちばしでスマイルは難しいか。

ただ、頭に浮かんだことを書き連ねてみただけ。
これを読んで、誰かが笑顔になってくれれば言うことはない。
笑顔は苦手だけど、皆がスマイルでいられる世界は素晴らしいと思う。

スマイル、114兆3,812億円。
日本の国家予算並み。

2/7/2024, 11:30:51 AM

人を殺めたら捕まるのに、
戦争で敵を殲滅したら英雄になる。
人間って矛盾だらけだなって思う。

国のトップがその決断を下すってことは、
国民も含めて殺戮国家に成り下がる選択だ。
敵国の兵士にだって家族はいるだろう。
子供達に愛されている父親かもしれない。

それを撃ち倒したと喜んでいる、誰かの父親。
それが、その父親の使命。
使命を果たして、名誉勲章ものか?
何の名誉だ?人殺しの名誉か?
あなたの娘は、それを知ってどう思うのだろう。

戦争を続ける限り、人間は愚かなままなんだと思う。
どうしても譲れない何かがお互いにあるとしても、
それを奪い合って殺し合うのはケダモノと変わらない。
街中でやったらすぐに警察に取り押さえられるのに、
どこぞの官邸でふんぞり返って戦局を眺めている人間がいるのもまた事実。

生まれてきた自分の子供に、人を殺すことの善悪をどう伝えるつもりなのだろう。
友達を傷付けることさえ咎める大人達が、他の国で罪のない人達を殺し続けていることを、誰がどう正当化出来るというのか。

言いたいことはひとつ、戦争は即刻やめるべきだ。

…なのに、自分は派手なアクション映画が大好きで、バイクや車のスタントはもちろんのこと、戦闘機や戦車、爆破や銃撃戦のシーンを好んで見てるというこの矛盾。
「エクスペンダブルズ」や「トップガン」、カッコ良かったなー。特にあの戦闘シーンが…。

まったく、人間って矛盾だらけだなって思う。

2/6/2024, 12:05:34 PM

地球が割れる。
地響きを上げて。
ひとつの球体が半球ふたつとなり、
宇宙空間で離れてゆく。
その上で営みを続けていた人類の命運は絶望的だ。
何が起こっているのかも理解出来ないまま、
亜空に放り出され、生死を超えた世界に漂う。

「あれ…?進んでる」
老人は、3分ほど進んだ時計の針を戻した。
見下ろすと、いつもと変わらぬ日常。
人々が、地上にて営みを続けている。
老人は、先ほど眼の前に広がった光景を思い出して、
独りごちた。

「1分が1年の時計で3分後か。人間どもには可哀想なことだが、そろそろこの星のお守りも飽きたし、時限爆破装置のタイマーもセットしたし、顔でも洗って終末を見届けるとするか。3年も余命を与えれば御の字だろう。それと、時計を新調しておくか」

老人は神ではない。
偶然に神の時計を手に入れてしまった存在。
世界の終わりをタイマーにセットしたが、
手放すのも惜しくなって、
何度か時計の針を戻す行為を繰り返してる。
もともと時間の概念など無い世界だから、
時計が進んでいる、なんて状況もない訳だ。

弄ばれているだけ。
人類の存続は、すべてこの老人の手に委ねられている。
今回は、いよいよ心を決めたようで、
時計の針を戻す行為もやめたようだ。

**********************************

さて、そろそろ私の出番かの。
いつまでもあいつの好きにはさせておけん。
神の名のもとに、あいつから時計を奪って、
5時間ばかし時計の針を戻しておこうかの。

あれ…?
いつの間にか時計がデジタルになっておる。
針のないこの時計で時間を戻す操作は…知らんがな…。

2/5/2024, 1:27:13 PM

タマモには右手が無い。
生まれた時から無い。
誰かと握手をする時は、いつだって左手を差し出した。
相手より先に。
左手での握手は何だかうまく力が入らなくて、
いつもお互い気まずい笑顔になった。

ある日出会ったミエロは、左手が無かった。
事故で失ったと言う。
タマモと握手が出来なくて、ミエロは片手でハグをしてきた。
傾いた感じのハグだったけど、何だか幸せな気持ちになれた。

ラックスは言葉を知らない。
一度も学校に行ったことが無かった。
だから友達がいなくて、だから競い合うことを知らなかった。
無言のままで微笑んでいる、
それだけで、いつもタマモは安心だった。

この地球上で、
何かが欠けている彼らは、
幸せの形もちょっとイビツだったけど、
足りないところを互いに補い合って、
誰よりも大切な存在になれたんだ。
誰かを頼る弱さを持たない人達よりもずっとずっと、
強い存在になれたんだ。

ある日の朝、ベッドで目覚めたタマモは、
自分の右手が存在していることに気付く。
そして、ミエロのことも、ラックスのことも、
すべてが夢だったことに。
交通事故で入院していた、
病院のベッドで見た夢だったことに。

「あんなに大きな事故だったのに、
 これだけのケガで済んでホントに良かった」
誰もが言う。
でも、タマモはとてつもなく大きな喪失感を感じていた。
事故はタマモの両親や兄弟を奪い、
彼をこの世界で、ひとりぼっちに変えていたから。

互いの足りないところを補い合って、
支え合うのが家族なんだって気付く。
ミエロもラックスもいないこの世界では、
気まずい笑顔の握手しか出来ない。

そう思っていた。彼女に出会うまでは。

リハビリ施設で出会ったマリスは、両目が見えなかった。
子供の頃、タマモと同じような事故に遇い、
視力を失ったと言う。
とても辛い経験だったけれど、
世の中の汚れや不埒な現実を見ずに生きてきた彼女の心は、
とても綺麗だった。

タマモは彼女に恋をして、溢れる気持ちを伝える。
右手を差し出し握手をして、告白をして恋人になって、
プロポーズをして夫婦になった。

そして、子供が生まれて、
また、家族になる。

タマモは、二人の子供達に、
ミエロとラックスという名前を付けた。

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