Ryu

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ある日の朝、仕事に行こうとドアを開けると、玄関ドアの前に花束が置かれていた。
昨夜は無かったはずだ。
心当たりがなくて、それでもかなり気になって、後日、マンションの監視カメラ映像を見せてもらう。

見覚えのない、でもかなり綺麗な女性。
深夜0時頃、そっと玄関ドアの前に花束を置く。
そしてしばらくそこに佇んだ後、帰っていった。
どこに帰っていったのかは分からない。

職場で同僚に話すと、
「街中で見かけて惚れられたんじゃないの?奥手過ぎて声もかけられなくて、ラブレター代わりにひっそり花束を置いたとか」
…それはかなり不気味だ。いくら美人でも。
とはいえ、どこかで何かを期待している自分がいることも確かだった。

ある夜、部屋で過ごしていると、玄関付近で物音が。
あの女性か?と思ってドアを開けると、見知らぬ男が立っていて、「人の女に手を出しやがって」とどこかで聞いたようなセリフとともに、刺された。
その後のことは、分からない。

「…つまり、本当に惚れた男を守るために、今付き合ってる男には、別のまるで関係ない男を好きになったと嘘をついた、と。それで今の彼氏が逆上して、そいつに何かしでかせば、彼氏は逮捕されて、晴れて惚れた男と付き合えると。かなり計画的だな」

「刺された男は、単に街中で見かけただけの相手を選んだそうですよ。まあそりゃ、何かされても気にならない相手を選びますよね」

「赤の他人をそんなことに巻き込むとは、血も涙もない女だな」

「確かにそうなんですが…彼女は彼女なりに、被害者に弔いを行っていたようですね」

「…弔い?」

「ええ、刺される数日前に、被害者宅の玄関前に百合の花束を…」

2/9/2024, 12:00:07 PM