Ryu

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地球が割れる。
地響きを上げて。
ひとつの球体が半球ふたつとなり、
宇宙空間で離れてゆく。
その上で営みを続けていた人類の命運は絶望的だ。
何が起こっているのかも理解出来ないまま、
亜空に放り出され、生死を超えた世界に漂う。

「あれ…?進んでる」
老人は、3分ほど進んだ時計の針を戻した。
見下ろすと、いつもと変わらぬ日常。
人々が、地上にて営みを続けている。
老人は、先ほど眼の前に広がった光景を思い出して、
独りごちた。

「1分が1年の時計で3分後か。人間どもには可哀想なことだが、そろそろこの星のお守りも飽きたし、時限爆破装置のタイマーもセットしたし、顔でも洗って終末を見届けるとするか。3年も余命を与えれば御の字だろう。それと、時計を新調しておくか」

老人は神ではない。
偶然に神の時計を手に入れてしまった存在。
世界の終わりをタイマーにセットしたが、
手放すのも惜しくなって、
何度か時計の針を戻す行為を繰り返してる。
もともと時間の概念など無い世界だから、
時計が進んでいる、なんて状況もない訳だ。

弄ばれているだけ。
人類の存続は、すべてこの老人の手に委ねられている。
今回は、いよいよ心を決めたようで、
時計の針を戻す行為もやめたようだ。

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さて、そろそろ私の出番かの。
いつまでもあいつの好きにはさせておけん。
神の名のもとに、あいつから時計を奪って、
5時間ばかし時計の針を戻しておこうかの。

あれ…?
いつの間にか時計がデジタルになっておる。
針のないこの時計で時間を戻す操作は…知らんがな…。

2/6/2024, 12:05:34 PM