弥生

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1/27/2026, 12:33:29 PM

【優しさ】

Q.優しくなるには何が必要?

A.相手の気持ちを推し量る想像力。

Q.想像力を身につけるには何が必要?

A.楽しい経験と苦い経験。

Q.経験を得るには何が必要?

A.生きる覚悟。

Q.覚悟を決めるにはどうしたらいい?

A.決めた自分にただ誠実であればいい。

Q.誠実であるためにはどうしたらいい?

A.…しりとりをしようと言ったんだけどなんで禅問答になってるの?

Q.なんでしりとりが禅問答になっちゃったの?

A.…お互い暇を持て余しているから。

Q.つきあってくれるなんて優しいね?

A.余裕があると人は優しくなるのさ。

1/26/2026, 12:37:02 PM

【確率】

地面がゆれた。
砂ぼこりが舞う中で、よろけるように走った。
お母さんがぼくの手をひっぱり、逃げ道を必死に探していた。

お腹がすいた。

とても苦い草をなんとか口に押し込んでからだいぶ経つ。

のどが渇いた。

雨が久しく降っていなかったので溜まり水を飲んだけど、
じきにまたお腹が痛くなってくるに違いない。

息を切らしながら──目の前に倒れ込んだ。
すぐに温かいお母さんの手が伸びてきてぼくを包む。


ぼくが生まれる前からこの国は戦争をしていた。
周りの国が首を突っ込み、ますます悪化していった。

食べるものも飲むものも事欠く中では、
住むところも着るものもどうでもよくなっていた。

お母さんが泣いてぼくをさすってくれた。
赤いぶつぶつがいっぱい腕に出ている。
体中が熱い!
まだ小さかったぼくには大人ほどの体力が無かったのだ。

深く、深く息をしてから静かに目を閉じる。
そして生まれて初めて──爆撃音の無い静かな世界を知った。


…どうしたことだろう。


しばらくしてぼくは目を開けた。
空を昇ったぼくは、下に小さな骸と泣き叫ぶお母さんを見た。

それから、戦争をしていない豊かな国の人々の声が聞こえた。
「なんで他の国にお金なんか寄付するの?」
「自国民を助けるのが先だろう?」


空にはたくさんの人がいた。
ふわふわの雲の上でだれもがふわふわと歩いていた。
ここは天国かと尋ねると、違う、とその人は応えた。
ここは天国に行く前の世界で、この先どうするのか決めるところだと言われた。

「君はずいぶんな目に遭ったみたいだね?次は天国に行きたいかい?」
そう聞かれたので、
「ぼくはまた人間に生まれたい」
と言ったらその人は目を丸くした。
「どうして?」
「だって、お母さんにまた会いたいから」

その人は小さく笑って言った。
「人間に生まれるのは…難しいんだよ」
「そうなの?どのくらい?」
ぼくは尋ねた。
「”盲亀浮木(もうきふぼく)の譬え”というのがある。
 100年に一度海面に上がる盲目の亀が、たまたま流れてきた穴の空いた浮木に頭を通す
 …そのくらい難しいんだ」
「ふうん。じゃぁうんとうんと待てば、いつかは人間になれるんでしょ?」
「そうだね、確率はゼロではないね」
「じゃぁ、人間になれるまで待ってる」

その人は上を見て、次にぼくを見てから再び笑って言った。

「君がまた人間に生まれたい、と言う確率もまさに盲亀浮木のごとくだったんだけどね」
そして僕の肩に手をかけて続けた。
「では天国に行きなさい。次に生まれるその時まで、楽しく遊んでいらっしゃい」

柔らかな光がぼくを包み、一緒に更に上へと昇っていった。

最後にその人の声が聞こえた。

「人間に生まれるのは、ほんと難しい──”有り難い”ことなんだよ」

1/25/2026, 12:34:19 PM

【安心と不安】

気が付けば息苦しく暗い道に居た。

長く長く、終わりが無いように見えるトンネル。

この道を自分は進まねばならない。

何故って、後ろを振り返ればトンネルが閉じられていくのが見えるからだ!

呑まれてしまえば何もかも終わるのだろう。
だからひたすら進む。
前へ、前へ…!

心臓がドキドキする。
気を緩めば呑まれて終わってしまうかもしれない恐ろしさと、
この先に何か開けた場所があるかも知れない希望が入り混じり
僕の胸を締め付ける。

前へ、前へ…!

不安から逃れるように、
不安に吞み込まれないように。

前へ、前へ…!


次の瞬間だった。


あまりにも眩しすぎる光に目を閉じた僕は、
思い切り息を吸い、そして吐いた。

何が起こったのだろうか。

その時は理解できなかったが、耳からはこんな言葉が聞こえた。

「無事に生まれましたよ、元気な男の子です!
 おめでとうございます!」

くすぐったい温かさをもったその言葉に僕は安心した。

1/24/2026, 12:09:07 PM

【逆光】

外は明るい。
夏の強い日差しを真っ直ぐに受けた背中が熱い。
眩しさに顔をそむけた私の顔には濃い影が落ちていた。

くらくらするほどの蝉の声、遠くで走る電車の音、
空には一筋の飛行機雲。
川辺には自生する向日葵や夏の草花。

にぎやかな世界。

でも私の顔には濃い影が落ちていた。

それは、
映し出される明るい世界とは真逆の私の心のようだった。

多くの人の人気を博す人たちの中で、
凡庸な私はどこまでも影だった。
才能を輝かせる友たちの中で、
凡庸な私はどこまでも影だった。

大きな太陽は光と影をくっきりと分ける。

熱い背中と暗い顔。

でもどちらも自分なのだ。

逆光の所為で顔が暗かったとしたら──

そう、反対を向いたらどうだろうか。
太陽の方へ向いたらどうなるだろうか。

顔は明るくなるだろうか。
心は温かくなるだろうか。

その一歩を決めるのは

自分しかいない。