風に身をまかせ
自分をもて、とよく言われる。
正直、そんなことを言われても意味がわからない。
周りになんとなく合わせて、なんとなく身をまかせていれば、上手くやっていける。
ずっとそうやって生きてきたから。
貴方に会った時、私の中に強い風が吹いた。
今にも吹き飛ばされてしまいそうだ。耐えないと、全てを見失ってしまう。
……あぁ、「自分をもつ」ってこういうことか。
辛いし苦しいし、もう自由になりたい。
もし、風に身をまかせたら、私はどうなってしまうだろうか。
もう、私は貴方の虜になってしまった。
この風が恋ってやつか。
愛を叫ぶ
「愛って、どうやったら相手に伝わるんだろうな」
「なんでまたそんな急に……」
また、相棒お得意の唐突な話題だ。
「そんなの、言葉とか行動とか、色々あるでしょ」
「いーや、そうとは限らないぜ?じゃあ、仮に俺がお前に「愛してる」と言ったとして、信じるか?」
「いーや?」
「だろ?つまりそういうことだよ」
「どういうことだよ……」
今回は言っていることがよくわからない。「愛」って、愛し合っている者同士なら伝わっているものなんじゃないのか?
「愛はさ、定義が曖昧だから、伝えるのは至難の技なんだ。例え恋人同士でも、自分自身の気持ち次第で、相手の愛の受け止め方は変わってくる」
「恋人なんていないのによく言うよ……」
「俺にはお前がいる」
夕暮れの中、ふと足を止めた。
相棒の言葉が頭の中を反芻する。
……そうだ。彼は私を認めてくれるじゃないか。
私たちの間で、疑うことなんてない。
「───私にも、ニゼがいるよ」
「はは、ほーらな?伝わった」
前を行く彼は私の方を振り返り、爽やかに笑ってみせる。
「愛なんて、直接言わなくても伝わるもんさ」
「……そうだね」
私も彼に笑い返す。
叫んだって、喉が痛くなるだけだし。
何も必要なかったのか。
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自創作 To My Imaginary より
モンシロチョウ
蝶は儚く見えるから美しい。
「儚い」ものは「美しい」のだ。君にはわかるか?
あの、白い翅を持つ小さな蝶も美しい。
儚い命だ……私たちから見れば、の話だが。
そう。私たちも「儚い命」なのだ。
例えば、木は長生きだ。1000年も生きる。
私たちの10倍生きる。
地球は46億年生きている。
この宇宙はもっと長く。
世界は連続している。
私たちもモンシロチョウとして羽ばたいているのだ。
明日世界が終わるなら
最期に君の隣にいたい。
二人だけの秘密
僕のたった一人の友達は、時々空を眺めていた。
黙って横に並ぶと、横顔は今にも泣き出しそうで。
いつもは明るいのにと、不思議に思っていた。
横に立つと、彼から煙がたっていた時があった。
彼は一丁前に大人になったような面をして、黙って煙を吐く。
雨上がりの空模様みたいな、穏やかな顔だったから、叱ろうにも叱れないし。
羨ましかったこともあって、複雑な気持ちだった。
その後で、「俺たちだけの秘密な」とか言われちゃ、もう後にも引けないし。
僕は黙って微笑んでいた。