久我城ぬいろ

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愛を叫ぶ

「愛って、どうやったら相手に伝わるんだろうな」
「なんでまたそんな急に……」
また、相棒お得意の唐突な話題だ。
「そんなの、言葉とか行動とか、色々あるでしょ」
「いーや、そうとは限らないぜ?じゃあ、仮に俺がお前に「愛してる」と言ったとして、信じるか?」
「いーや?」
「だろ?つまりそういうことだよ」
「どういうことだよ……」
今回は言っていることがよくわからない。「愛」って、愛し合っている者同士なら伝わっているものなんじゃないのか?
「愛はさ、定義が曖昧だから、伝えるのは至難の技なんだ。例え恋人同士でも、自分自身の気持ち次第で、相手の愛の受け止め方は変わってくる」
「恋人なんていないのによく言うよ……」
「俺にはお前がいる」
夕暮れの中、ふと足を止めた。
相棒の言葉が頭の中を反芻する。
……そうだ。彼は私を認めてくれるじゃないか。
私たちの間で、疑うことなんてない。
「───私にも、ニゼがいるよ」
「はは、ほーらな?伝わった」
前を行く彼は私の方を振り返り、爽やかに笑ってみせる。
「愛なんて、直接言わなくても伝わるもんさ」
「……そうだね」
私も彼に笑い返す。
叫んだって、喉が痛くなるだけだし。
何も必要なかったのか。

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自創作 To My Imaginary より

5/11/2024, 12:53:54 PM