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9/1/2024, 10:01:43 PM

開けないLINE

ねぇ、LINE教えて。

何?それ…利用価値がわからないんだけど。

利用価値?無料で使えて楽しいじゃない。

困惑しつつも自分のスマホを見せる。
たくさんのグループが作られている。ピロンと着信音が鳴る。あまり気にしていない様子でいる。

見なくていいの?急ぎじゃない?

え?あぁ、いいのよ。これはお店だから。

もしかして、見えているの全部お店?友達は?

表情が硬くなる。
あなたが初めて。自分から言ったのは。

そう。でも、やらないよ。それより、何か飲まない?
話はしたいな。文字は誤解もあるからね。
顔見ながら話したいから。LINEの代わり。連絡先は別に教えるけど、それはいや?

ブンブンと首を振り、スマホをしまうとホッとしたような様子になる。

彼女は知らない。そんなの口実だって。LINE交換などしたら、期待し過ぎて開ける事が出来なくなってしまうから。

8/29/2024, 11:24:58 PM

言葉はいらない、ただ…

忘れないで欲しい。
誰かが覚えていて欲しい。自分がこの世にいた事を。

やれやれ、こんな時浮かぶなんて随分ビビってるな。 

片道切符を持ったたくさんの人が感慨深げにタラップの上で時折立ち止まり、見送りの人達を見て、意を決して扉をくぐる。

俺は操縦席に座り点検を始める。
機長が黙って機長席に座った。

オールクリア スタンバイOK ウェイティング

機長は俺を見た。この人は中継地で降りる。
また戻って機体を動かす為に。俺より見ているだろう、光景が浮かぶ。

搭乗終了次第出発する。航路の確認はいいか?
はい。準備完了してます。

では、頼む。

中継地まではあっという間で何かを考える余裕はなかった。

この先はコールドスリープに入るが俺が一番最後になる。そして一番最初に目覚める。責任重大だ。

機長は降りる前に黙って握手を求めた。握った手はきつくきつく握りしめられた。

機長は振り返らず降りて行く。その背を俺は見る。
行って来ます。お父さん。お元気で。

8/29/2024, 9:10:55 AM

突然の君の訪問


迎えに来たってどういう事ですか?

見知らぬ美女に声が少し裏返しになったが、なんとか耐えた。突然、目の前に現れるとは何事か。新手の詐欺か、きっとそうだ。こんな美女に知り合う機会はほぼない生活なんだから。それにここは地上50階だし、このひと月外出していない。誰とも顔を合わせていない。こえが裏返しになったのもそのせいだ。
無精髭にモサモサの髪でヨロヨロの部屋着を着た俺。

いつまで待っても来ないからです。
イラッとしたらしい。声にトゲを感じる。
早く回収しないと私のノルマが達成しません。
さぁ、早く一緒に来て。

何を?ノルマって関係ないだろう。俺。それになんで一緒に行かないといけないんだ?知らないよ。

顔がきれいな分怒ると迫力があるって本当だな。
赤を通り越して青くなった顔は気の毒に思う。
さて、まずは不法侵入で通報して…ん?あれ、身体が透けているのは気のせいか?

あなたのような自覚のない方が増えているから。
呆れたように言い、俺の手首をガッチリ掴む。

フワリと浮かび上がるとベッドの上に青黒い顔をした俺がいる。なんかヤバそう。

先日の停電でエアコンが切れて、室内温度が調整できなくて、寝ている間に身体から離れたんですよ。意味わかりますか?

そう言って耳を塞ぐ準備をしている。一拍置いて、ジンワリと自覚し、そして叫ぶ俺を仕方無さそうにみている。
行きますよ。まだ地に縛られずに済みそうです。
手首をつかまれ、分厚いガラス窓を抜ける。
地上にはパトカーも見える。

そうか。もう、ここにはいられないんだな。
救いか。随分横柄だがな。分相応か。

8/27/2024, 3:28:48 AM

私の日記帳

毎日、書いていたのがいつからか書かなくなり、やり始めても続かないという事に正直嫌になっている。
多分、感じたままに書けないからだろう。
醜い感情をぶつけるように書いていた日はまだまっすぐだったのか。白紙のページは眩しくて書き進める事ができない。刺激的な事も求めてないし。

反省と愚痴だけか。妄想と空想の世界もな。記録は堅苦しいから感想文?がいいかな?。やっぱり偏った自己分析になりそう。考えすぎだ。

会社では目的があるから週報や月報がだせるんだから、
同じ事ではないか。
はたと思う。何のために生きている?

だから、空白のページしかないのかな。
誰かが見るとかじゃなくて、認めたくないんだ。
空虚な自分を。夢なんか追えない。やりたい事って何?
いい歳してこれか。神界から降りて来た人も俗世で見失うって聞いた時ドキリとした。そんな高貴じゃないが。

8/25/2024, 1:45:24 PM

向かい合わせ

唸っていても解決しないから、正直に言おうか?
ニンマリ笑っているが、向かい合わせに座ってる人の瞳は冷たかった。
誤解なんだけど?私、浮気しているって言われる覚えはないし、なんでそんな目で見るのか理解できない!
そう来たか。ずっと好きって言っていたよな?何故、急に変わる?こちらにも準備がいるんだってわからない?
そう言って手にした箸をパチンとする。
あのさぁ、夏場に鍋、それもチゲ鍋はキツいでしょ?
夏にはさ、冷麦とかそうめん、冷やし中華、冷製パスタとかあるじゃない。鍋のうどんも美味しいよ。でもさ、暑い時に熱いものもわかるけど、冷やし中華食べたいって言っただけじゃない。チゲ鍋は大好きだけど年がら年中食べたい訳じゃないの!
目の前の熱々のチゲ鍋をみる。
でも、せっかく作ってくれたし、冷房効き過ぎて冷えたから食べる。
取皿によそるとフゥと熱を冷ます為に息を吹きかける。
待てよ。いただきます、は一緒に言う約束だろう。
明日は冷やし中華にするよ。
いつものどうしようもない話し。今日も平和。

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